日本郵政という看板を信じた人々を食い物した、かんぽ生命保険の不適切営業が報じられていますが、失われた企業や従業員の信頼を取り戻す道はあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、経済情勢や厳しいノルマなど「言訳がましいお粗末な謝罪会見」を行なう日本郵政に抜本的な改革は困難であろうと厳しく批判しています。

「郵便局」への信頼を悪用した「かんぽ生命」の罪は重い

こんにちは!廣田信子です。

かんぽ生命保険で、顧客に不利益となる保険の乗り換え契約が次々と発覚し、顧客軽視の営業実態が浮き彫りになっています。

これまでも、いろいろ言われていたことですが、ようやく、金融庁がこうした事態を重く見て業務改善命令などの処分を検討中ということで、かんぽ生命と日本郵便のトップが10日に記者会見しましたが、内容はお粗末なものでした。

「郵便局」という高齢者や地方在住者には、絶対的な信頼があるブランドを利用した、不誠実、不正な行為に、改めて怒りを覚えました。これは、営業トークの行き過ぎなんかじゃない、あきらかな詐欺行為です。

かんぽ生命は、19年3月までの5年間で、顧客が保険の乗り換えで不利益を被った事例が2万3,900件に上ると発表しています。顧客を無保険にしてしまったケースも続出しました。保険業法は、契約者に虚偽の内容を伝えたり、不利益となる事実を告げずに既存の契約を解約させて新たな契約を勧めることを禁じているのです。

私は、今年、保険の切り替え時期でしたが、書類のやりとりだけでなく、内容をきちんと理解しているか確認のための電話があり(何度も留守電に入っていました)、10分近く時間をとられるので、もうわかっているからいいのに…と思いながらも、これが保険会社のコンプライアンスなのだから…と付き合いました。特に、保険の切り替え前後に生じることについては、しつこいぐらい説明がありました。これが保険業界の常識です。

また、車の保険ははネット保険ですが、この3月の更新で、見積もりのときの等級から、契約時の等級が変わったようで、返金があるので、契約内容の変更手続きをしてくださいと、何度も、あらゆる手段を使って連絡がありました。すでに、1年分保険料を払っているので、保険会社が言わなければ、そんなこと気にもしないことでした。当然ながら、ネット保険もコンプライアンスはしっかりしていると思いました。

それなのに、かんぽ生命保険はなんですか?保険会社としてあり得ないことです。営業の人間がかかわるから親切丁寧どころか、逆に、不誠実、不正な行為が行われるなら、ほんと、営業の人なんていらないです。

かんぽ生命保険では、顧客が、半年以上にわたり新旧契約の保険料を二重に支払っていた事例が約2万2,000件あることも判明しているといいます。新契約の締結から6カ月以内に解約すると乗り換えと見なされ、営業手当が新規に比べて半減するのを避けるため、郵便局員が手当欲しさに解約を先延ばししていたため顧客は、その間、二重に保険料を払っていたのです。

なぜ、顧客が二重払いに気付かなかったのかというと、「気付かれないよう工夫していた」といい、その一つが、乗り換え契約時、顧客に旧保険の解約を遅らせることを告げず、新規契約は1年分の保険料を一括で支払うよう促す手口だと言います。「月払いだと、通帳をみれば二重払いが発覚してしまう」からです。これは、明らかな詐欺行為ですよね。

担当者本人が悪いのはもちろんですが、数字ほしさに、黙認どころか、暗にそれを促していた上司もいたはずです。担当者も、手当て欲しさだけでなく、ノルマをこなすためという要素も大きく、そのために組織全体が、何が正当なことか、不当なことかを判断する能力もなくなっていたとしか思えません。

社長は、知らなかったようないい方でしたが、組織的なものだったはずだと疑っています。ぜひ、金融庁には、踏み込んだ調査をして、しっかり処分をしてもらいたいと思います。

背景には、低金利の長期化で、国債中心の運用が行き詰まり、保険販売による手数料収入の確保を迫られていることがある…と言われます。郵便収益が低迷する中、日本郵便にとっても、かんぽ生命からの販売手数料などが大きな収入源となっており、現場での無理な営業につながった…と報道されていますが、でも、そんなことは、言い訳にもなりません。条件は他の金融機関・保険会社も同じです。

保険料の二重支払いなどの問題発覚後も厳しいノルマが課され続けていて、現場からは「本当に改善するのか」と疑問視する声が相次いでいると言います。保険料の二重払いはずいぶん前から経営陣も把握したはずで、新しい保険の契約から7カ月後に旧保険を解約することが社内で問題視されるようになると、解約時期を1年半後に延ばす手口が横行。より、顧客に不利益をもたらす行為にエスカレートしていたと言います。

現場では、「相続税対策」と虚偽説明するなどして販売する悪質な営業トークがいくつも存在しており、不正販売をしないよう指示があるたびに、新たな抜け道が生み出されてきた。今回も、いたちごっこになるだけではないか…と懸念の声が内部にあるというのです。

日本郵便幹部が、「民営化後、収益一辺倒になって顧客本位の姿勢を忘れてしまった」と言っているようですが、民間企業の厳しさを知らない上から下まで親方日の丸の人たちが、民営化で、突然、収益第一主義になってしまうことの怖さをまざまざと見せつけられました。

長年、地域に親しまれて、信頼されてきた郵便局がそれを悪用したのですから、その罪は本当に大きいのです。地域に寄り添う郵便局という最大の売りを自ら貶めた経営陣の責任の重さは言うまでもありませんが、組織の中で自分を守るために、顧客を欺くことに慣れてしまった局員もみんな同じです。

先日、「あなたにとって働くということの意味は…」で書いた通りです。まったく一から出直しをしない限り、信用は取り戻せないでしょう。もう保険の営業の人なんていらない時代です。組織が変わらないなら、自分だけでも変わることです。幸いにも、時代は人手不足です。思い切って、別の業種、顧客に喜ばれる仕事に転職することもできます。組織が悪いから仕方がないなんて言い訳するような生き方は変えていきたいです。

image by: MMXeon / Shutterstock.com

MAG2 NEWS