新型コロナウイルス感染症の流行により経営が悪化した中小企業や個人事業主に、給付金が支給される「持続化給付金事業」ですが、続々とその不正受給が発覚し問題となっています。なぜこのような事態が起きてしまうのでしょうか。以前掲載の「元国税が暴露。電通『中抜き』問題と官僚天下り問題との深い関係」でも給付金事業について痛烈な批判を展開した元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、「現行のシステムでは不正受給が生じるのは当たり前」としてその理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年10月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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コロナ給付金は「不正受給されて当然」だった

昨今、持続化給付金の不正受給(つまり詐欺)の事件がよく報じられますね。元国税調査官の目から見れば、不正受給が生じるのは当たり前です。

持続化給付金のシステム自体が非常にいい加減にできており、これで「国の給付事業ができるはずはない」というような状態だったのです。

持続化給付金の問題については、6月16日号(「元国税が暴露。電通『中抜き』問題と官僚天下り問題との深い関係」)でも取り上げました。

持続化給付金は、まず「中抜き問題」が大きくクローズアップされました。持続化給付金というのは、新型コロナにより経営が悪化した中小企業に、悪化状況に応じて現金を給付するという事業です。中小法人で最高200万円、個人事業者で最高100万円が支給されるものです。経営悪化している事業者は多いので給付の総額は膨大になると見込まれ、事務委託費だけで769億円もの予算が組まれていました。

しかしこの持続化給付金の事業が、「サービスデザイン推進協議会」という団体に769億円という巨額な費用で事務委託され、その委託費は20億円抜かれた後さらに電通などに再委託されていのです。それが発覚し問題となったのです。

しかも、「サービスデザイン推進協議会」が受注した国の事業は今回が初めてではありません。2016年の発足から2020年までのわずか5年間で、経済産業省の事業を1,546億円も受注していたのです。

サービスデザイン推進協議会と“政商”パソナ

6月16日号では、このサービスデザイン推進協議会の中心企業は電通とパソナであり、両者とも「天下りを大量に受け入れている企業」だということをご説明しました。それについて、今回もう少し掘り下げたいと思います。

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叩けば埃が出るパソナの「仁風林問題」とは?

サービスデザイン推進協議会の中心企業であるパソナは人材派遣企業の最大手の企業です。このパソナは創業以来、大々的に官僚の天下りを受け入れており、典型的な政官癒着型の企業なのです。

そしてパソナという企業は、今までさんざんスキャンダラスなことが報じられてきた企業でもあります。特に有名なのが、「仁風林問題」です。

パソナは東京・元麻布に仁風林という厚生施設をつくり、そこに政治家、官僚、有名人などを招いてパーティーを開くなどしていたのです。この「仁風林」には、喜び組のような女性の接待係もおり、怪しい事件の舞台ともなったのです。

覚せい剤で逮捕されたミュージシャンのASKAもこの仁風林の常連だったことが知られています。それどころかASKAの逮捕現場にいて一緒に逮捕された栩内香澄美という女性は、パソナの元社員で、仁風林の接待役だったのです。この辺の事情は、週刊誌等でかなり暴かれているのでご存じの方も多いでしょう。

しかもパソナの仁風林には、与党だけじゃなく野党の大物議員も多数招かれていたというから始末に負えません。このようにパソナとは、叩かずとも埃がたつような企業なのです。

パソナのビジネスモデルは「天下り→利権獲得」

これほど怪しい企業であるのに、パソナは国の重要な事業を受注し続けました。パソナが受注したのは、持続化給付金などサービスデザイン推進協議会関係の事業ばかりではありません。

たとえば、第一次安倍内閣の時代に「国家公務員人材バンク」という事業が行われました。これは国家公務員の天下りをなくすという名目で、国家公務員の再就職を政府が一元的に管理するという事業でした。そして求職、あっせんなどの業務は民間企業に委託されることになりました。この業務をほぼ独占的に受注したのが、パソナなのです。

この「国家公務員人材バンク」はまったく成果を挙げられなかったのですぐに廃止になりましたが、その後もパソナは様々な国の事業を受注することになります。

昨今では、パソナは自衛隊の福利厚生事業などを全面的に受注しています。そしてパソナは自衛隊の幹部の天下りを大量に受け入れています。非常にわかりやすい、天下り→利権獲得のビジネスモデルを持つ企業なのです。

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不正受給の大量発生は必然。誰が責任を取るのか?

本メルマガの6月16日号でも述べたように、本来、国の給付事業というのは国税庁などがやるべきであり、それが一番安全で確実だったのです。民間に委託する意味はまったくなかったのです。

民間企業は、全国の事業者の情報も持っておらず、調査権もありません。不正受給をしようと思えばいくらでもできるのです。

そして、案の定、持続化給付金では大量の不正受給が発生しました。しかもその手口は、今まで事業をやってこなかった普通の会社員や大学生が、持続化給付金を申請するだけという驚くほど単純なものでした。

たとえば、山梨の大学生が、事業を行っていないにもかかわらず、事業を行っていることを装い、100万円の給付を受けていたことが報じられました。

また新聞社の沖縄タイムス社の社員がこれも事業を行っているふりをして180万円の給付金を受けていたことが発覚しています。しかも、この沖縄の事件は、税理士や暴力団が絡んだ組織的な不正受給が行われた可能性があると見られています。まだ全貌は明らかになっていませんが、数億円単位での不正受給があったとみられています。

これらの事件は、給付を受けてから発覚したものです。申請の時点で発覚したものではありません。つまり一旦は給付されているということです。

逆に言えば持続化給付金は「普通の会社員や大学生が申請しても簡単に給付されてしまう」というような、ずさんな仕組みを持っていたのです。申請の時点では、まったくチェック機能がなかったに等しいのです。そして、おそらく発覚したのは氷山の一角です。

やった者勝ち?経産省や民間に不正発見能力はない

経済産業省は、これから不正受給について調査していくと述べています。が、そもそも経済産業省は、日本全国の事業者を調査するようなことには慣れていません。おっとり刀で大量の不正受給者をすべて見つけ出すことなどは絶対に不可能です。

もし国税庁がこの業務を行っていれば、こんな杜撰なことには絶対にならなかったはずです。まず申請の時点で、事業を行っていたかどうかは簡単にチェックできます。またもし不正があっても、国税庁には全国に調査網があるため、少しでも不審な点があればその場で調査できるのです。

不正受給者の側も、窓口が国税庁であればそう簡単には「詐欺をしよう」とは思わないはずです。

どう考えても、持続化給付金を民間企業に委ねたのは不自然で不合理です。「自分たちの利権を守るために、国民に多大な損害をもたらす」という、持続化給付金はまさに日本の官僚たちの生き方を象徴する事業だったといえるのです。

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