米軍普天間基地の返還合意が日米両政府間でなされて25年。官僚の無知のためにすぐに可能だった基地閉鎖ができなかったと、前回記事で明らかにした軍事アナリストの小川和久さん。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では、そうした基地問題の真実を伝えるべき大新聞の看板コラムの筆者までも辺野古移設問題の元凶がアメリカであるかのように記述し、無知を露呈していると嘆きます。小川さんは改めて普天間問題への米国の姿勢を説明し、「普天間問題は国内問題」と主張する根拠を示しています。

「素粒子」筆者は『フテンマ戦記』を読め

4月12日の朝日新聞夕刊の「素粒子」を見て、愕然とさせられました。冒頭に見識が疑われるようなことが書かれていたからです。

「沖縄の民意を顧みぬ辺野古移設。民主主義を標榜(ひょうぼう)する米大統領に問う。ライバル国の権威主義と、何が違うのか。」

「素粒子」は「天声人語」と並ぶ朝日新聞の看板コラムで、筆力に抜きんでたベテラン記者が担当することになっています。「天声人語」が教科書や入学試験の問題に採用されるように、「素粒子」も寸鉄人を刺すがごとき鋭さが小気味よく、朝日新聞の思想的な傾向に関わりなく、読む価値があるコラムだと思ってきました。1996年まで担当した轡田隆史さんのコラムは好きでしたね。現在の筆者は、論説委員の坪井ゆづる氏と惠村順一郎氏とのことです。

それがどうでしょう。辺野古に移設を決めた元凶を米国だと決めつけているではありませんか。これは、「ライバル国」として中国、ロシアを批判していることからも、よく言われるような朝日新聞の左翼的な傾向が原因ではありません。政治家、官僚、学者、マスコミをはじめとする日本人が外交・安全保障・危機管理を苦手としていることの現れなのです。

朝日新聞だけでなく、日本国民のほとんどが誤解してきたことですが、普天間問題は基本的に日本の国内問題なのです。返還までは日米交渉の対象でしたが、合意後は日本の国内問題として解決すべき課題となりました。それなのに、日本政府はその点を理解できず、一貫して米国側の顔色をうかがい続けてきたという点が問題なのです。

普天間問題に関する米国側の基本姿勢は、移設によって軍事的能力が低下せず、同時に負担軽減を進めて沖縄県民の対米感情を悪化させないようにする、という2点に尽きました。これは25年前も現在も変わりません。

あとは日本側が、米軍の作戦所要を満たし、沖縄県民の半数以上が受け入れに同意する移設計画を示すことです。しかし、日本政府は軍事の基礎知識すら持たない官僚機構に丸投げし、そこに生じた土木工事などの利権に日本側の政治家や官僚OBが群がり、辺野古案のようなおぞましい計画を生み出してしまったのです。

拙著『フテンマ戦記 基地返還が迷走し続ける本当の理由』(文藝春秋)で明らかにしたように、「米国の圧力」なるものは基本的にありません。普天間の40%のキャパシティしかない辺野古は軍事的に使い物になりませんが、それを連邦議会の政府監査院(GAO)が3回にわたって指摘しても、米国側が日本政府の「唯一の解決策」という方針に同調しているのは、圧力などない証拠ではありませんか。それなのに米国の責任にしてしまうのは、一種の陰謀論でさえあります。

「素粒子」の筆者には、拙著『フテンマ戦記』を一読してもらいたいものです。朝日新聞の幹部には送ってあるのですが、礼を言われることはあっても、いっこうに紙面に反映されないので失望しています。(小川和久)

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