先日掲載の「下着泥棒からイカサマ師まで。岸田政権の“自爆”入閣オンパレード」でもお伝えしたとおり、一部大臣の資質に疑問符が付く岸田内閣ですが、政権運営の肝心要とも言うべき幹事長人事が「命取り」にもなりかねないようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、岸田陣営の総裁選選対に顧問として入り幹事長の座を射止めた甘利明氏が抱える問題を改めて取り上げるとともに、選挙戦における甘利氏の「暗躍ぶり」を紹介。さらに新幹事長や安倍元首相のさまざまな疑惑を解明し国民の疑念を晴らさない限り、岸田政権は短命に終わると断言しています。

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甘利幹事長が岸田政権の命取りにならない方法はあるか

岸田政権が始動した。閣僚の顔ぶれは、初入閣が20人中13人を占めているものの、官房長官といい、財務大臣といい、いささか地味な感は否めない。やたら目立つのは自民党の甘利明幹事長である。

あえて新内閣の目玉をあげるとするなら、「経済安全保障担当相」を新設したことくらいだろう。

米中間で激化する経済戦争。中国製の端末を通じて情報を盗み取られたり、重要技術が流失するのを防ぐため、半導体やレアアースなどで、「中国抜き」の調達体制をめざすことが今春の日米首脳会談で決まっている。

担当大臣に46歳の小林鷹之氏を起用したのは、甘利人事といえよう。甘利幹事長は自民党におけるこの分野の第一人者。小林氏は党の新国際秩序創造戦略本部で甘利座長をサポートする事務局長をつとめ、経済安保戦略にかかわってきた。

経済財政相になった山際大志郎氏も甘利氏に近い。知財戦略などを扱った甘利氏との共著も出している。

ソニー出身で知財や半導体といった分野に強い甘利氏の知見や主観が、組閣に色濃く反映されているように感じる。あえて言うなら、岸田・甘利政権という印象が強い。

甘利氏は幹事長に就任して以来、派手に動き回っている。たとえば、まだ新内閣が発足していない9月3日、フジテレビの報道番組に生出演し、早々と「経済安全保障担当相」について語っているのだ。岸田首相にしてみたら、“越権行為”ではないのだろうか。

甘利氏は総裁選における貢献で岸田首相の信頼を勝ち取った。菅前首相の総裁選不出馬をきっかけに転がり込んできた千載一遇のチャンスを幹事長就任に結びつけた手腕は見事だった。

人徳は政界No.1の岸田さん。胆力が備わり、闘うリーダーの目になって来ました。翔べ!令和の劉備玄徳!#チーム岸田 #岸田文雄 #自民党総裁選挙2021 pic.twitter.com/MYXYWiRDfP

— 甘利 明 (@Akira_Amari) September 21, 2021

人徳は政界No.1の岸田さん。胆力が備わり、闘うリーダーの目になって来ました。翔べ!令和の劉備玄徳!

これは、9月21日に甘利氏がツイッターに投稿した一文である。三国志の劉備玄徳に岸田氏をなぞらえているところをみると、軍師・諸葛孔明の気分だったのだろう。

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岸田氏と甘利氏が以前から同盟関係にあったわけではない。甘利氏は、かつて麻生政権の誕生にかかわった「NASAの会」で、中川昭一氏(故人)、麻生太郎氏、菅義偉氏と手を組み、のちに安倍晋三氏をグループに迎え入れて、権力の中枢に位置してきた。昨今では安倍、麻生両氏とともに「3A」と称されるほどの実力者である。

にもかかわらず、2016年に経済財政担当大臣を辞任して以来、甘利氏が選対委員長や税制調査会長など、メディアとの接触の少ない党の役職に甘んじてきたのには、ワケがある。

2016年1月、週刊文春がその疑惑を報じた。千葉県の建設会社から道路建設がらみの口利きを依頼された甘利事務所の秘書がURとの間に入って2億2,000万円の補償金を支払わせ、謝礼500万円を受け取った。甘利氏自身も建設業者と直接会い、2回にわたり50万円ずつ計100万円の現金をポケットに入れた。他の秘書が国交省の局長に口利きして接待や金品など甘い汁を吸っていたことも明らかになった。

甘利氏は疑惑が報じられるや、急に病気と称して長い間雲隠れをしていたにもかかわらず、やがてしれっと国会に現れた。経済財政担当相を辞任するさいの会見で、「弁護士による調査を続け、しかるべきタイミングで公表する」と約束しながら、いまだに何の説明もしていない。

この自業自得といえるマスコミ忌避で、表舞台からやや離れた場所にいた甘利氏だが、野心を刺激する政局がひらりと舞い降りてきた。

8月26日に岸田文雄氏が総裁選への出馬を表明。総裁を除く党役員の任期を「1期1年連続3期まで」「自民党を若返らせる」と宣言し、「二階切り」を印象づけた。これがプロローグだ。

この時点ではまだ、甘利氏の野心がうずくということはなかっただろう。菅首相が総裁選に出馬すると思っていたからだ。

ところが、菅氏は意外な行動をとる。総裁選で戦う岸田氏の切り札を無力化するべく、二階幹事長の交代を決め、二階派を怒らせたばかりか、総裁選前の衆院解散を画策したのだ。甘利氏は「玉砕することになる。やめたほうがいい」と菅首相に直言した。

安倍氏や小泉進次郎氏らの説得もあり、菅首相は解散を断念、打つ手を失って9月3日、総裁選への不出馬を表明した。このあと、甘利氏の心を揺るがすことが起きる。

同じ9月3日、メディアの取材に応じた河野太郎ワクチン担当相は次のような発言をした。

「総理が総裁選に出馬されないことになりました。ワクチン接種は世界最高速のレベルに達しましたが、今後必要な改革をやってコロナ対策を進めて行く必要がある。そういうなかで総理不出馬という総裁選挙ですから私自身どうするか先輩、あるいは仲間の議員とじっくり相談をし、決めてまいりたい」

事実上、河野氏が出馬を宣言したのである。世上名高い河野氏が出るとなれば、地味で知名度の低い岸田氏はかなり厳しい。河野出馬の報を受けた甘利氏が、岸田支援を決意するまでさほどの時間は要しなかった。

9月6日夜、BS日テレの『深層NEWS』に出演した甘利氏は、岸田氏に言及し、「誰の言うことにも真摯に耳を傾けるっていう姿勢の政治家としては、党内きっての人だ」「岸田さんにシンパシーを感じている」「事情が許せば応援してあげたい」と語っている。

甘利氏は、同じ麻生派でありながら河野氏の唯我独尊的な言動を忌み嫌う。なにより、福島第一原発の事故後、脱原発を唱えた河野氏が、大手電力会社と関係の深い原発推進派の甘利氏を名指しし、「次の選挙でそういう議員を落とすしかない」と朝日新聞のインタビュー記事で語ったことが尾を引いている。

河野を総理にしてはならない。甘利氏は派閥会長の麻生副総理に河野支援をしないよう、釘を刺していたに違いない。河野氏が総裁選への支援を求め再三にわたり麻生副総理を訪ねても、色よい返事を得られなかったのはそのためだ。

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甘利氏は岸田陣営の選対に顧問として入った。総裁選が告示されて二日後の9月19日、甘利氏は次のようにツイートした。

私が交渉をまとめたTPPはその後の貿易協定のひな型になりました。これをベースにどの国とも締結が可能です。日.EU通商協定で大臣間合意が結ばれた直後にベルギーにいる岸田外相から私の携帯に電話が入りました「たった今、大臣間署名が出来ました、お陰様です」永田町には珍しい程の思いやりの人です。

— 甘利 明 (@Akira_Amari) September 19, 2021

私が交渉をまとめたTPPはその後の貿易協定のひな型になりました。これをベースにどの国とも締結が可能です。日.EU通商協定で大臣間合意が結ばれた直後にベルギーにいる岸田外相から私の携帯に電話が入りました「たった今、大臣間署名が出来ました、お陰様です」永田町には珍しい程の思いやりの人です。

岸田氏の人柄は誰でも知っている。政局を見て、甘利氏が急にすり寄った感は否めない。このころには、岸田氏を総理にして、あわよくば幹事長、という考えがちらついていたのではないか。

高市早苗氏の選対は、安倍氏が全面支援し、掌握している。甘利氏は安倍氏、麻生氏と緊密に連絡をとれる立場だ。岸田氏が甘利氏に頼らざるを得ない構図であることを百も承知のうえ、岸田陣営にもぐりこみ、自在に動きまわったのが甘利氏だ。

岸田、高市両陣営の幹部が9月28日夜、決選投票で岸田氏と高市氏のどちらかが河野氏と対決することになった場合、両陣営が協力することで合意した。むろん、甘利氏の根回しがあったから、まとまった話だ。事実、甘利氏はその前日、安倍氏、麻生氏と個別に会談している。

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表舞台に舞い戻った甘利氏は、これからが、イバラの道だ。幹事長ともなると、逃げるわけにはいかない。野党から疑惑追及が蒸し返され、報道が再過熱するのは必定だ。

ただ甘利氏は、どんな疑惑もウソで乗り切ってきた安倍元首相の方法を学んでいる。ひたすらシラを切っていればなんとかなると高をくくっている。岸田首相はよほど注意しておかないと、“闇将軍”に操られる事態にもなりかねない。

岸田首相の軍師のようでありながら、安倍氏、麻生氏とも通じている。これが甘利氏の強みであり、岸田氏が頼りにするゆえんではあるが、裏を返せば、いつなんどき岸田氏を裏切って安倍氏らのもとに走らないとも限らない、ということだ。どこまで甘利氏を信頼するべきか、いまだ手探り状態でもあるのではないだろうか。

むろん、岸田首相とてさるもの。優しい物腰に似合わぬしたたかさものぞかせている。安倍氏が官房長官に推すのを振り切って萩生田光一文科相を経産相に横滑りさせ、古川禎久氏に石破派を退会させたうえで法務相に抜擢した。このあたりは、安倍傀儡政権とは言わせないぞという意地のようなものが見て取れる。

それでも、アベ・スガ政治から脱却できるかというと、はなはだ心もとない。「新自由主義からの転換」を唱えながら、アベノミクスの継続について曖昧姿勢なのは、何がしかの忖度を働かせているせいではないか。

岸田首相は、甘利幹事長に対し自身の疑惑について説明を尽くすよう促すとともに、安倍元首相のモリ・カケ・サクラ問題についても、新政権としてきちんとした調査を進め、国民の疑念を晴らすべきである。さもなければ、間違いなく政権運営に苦労し、下手をすれば短命政権の道をたどることになろう。

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image by: Twitter(@Akira_Amari)

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