9月11日に行われた沖縄県県知事選で、圧勝という結果で再選を果たした玉城デニー氏。事前予想では玉城氏の苦戦を伝えるメディアもありましたが、何が当選の決定打となったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、この選挙で自民党の茂木幹事長が犯した見誤りを指摘。さらに自公が推薦した佐喜眞淳氏の敗因を解説するとともに、自民と連立を組む公明党が、来春の統一地方選までに迫られる決断についても考察しています。

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沖縄県知事選は玉城デニーが大差で再選/茂木幹事長の「辺野古基地建設」強硬路線は躓くのか?

9月11日投開票の沖縄県知事選は、20時の投票終了と同時に沖縄2紙の電子版もNHK全国放送も「当確」を打つほどの大差による玉城デニー再選という結果をもたらした。

確定得票数は、「オール沖縄」の玉城33万9,767票に対して、自公が推す佐喜真淳27万4,844票、保守系無所属の下地幹郎5万3,677票で、佐喜真と下地の票を足しても1万票余り玉城に及ばない。ということは下地の参入で保守地盤の一部が食われて佐喜真にマイナスという事前の分析があったが、佐喜真の主要な敗因はそこではないということになる。

また、同時に行われた県議補選では、自民党、参政党、無所属と競ったオール沖縄候補=上原快佐前那覇市議が当選した。これは、故・翁長雄志前知事の息子の翁長雄治前県議が那覇市長選出馬のため辞任したことに伴う補選。翁長が辞職する前は与党24、野党・中立23で、もし上野が負ければ玉城知事が県議会の少数与党を率いることになったのだが、辛うじて多数与党を維持することに成功した。

確定得票数は、上原快佐4万4,302票に対して、社会大衆党の糸数慶子の娘ながら無所属で立った糸数未希3万7,944票、自民が推したエステサロン経営者の下地ななえ3万7,259票、参政党から出た元那覇市議の仲松寛1万1,968票。「辺野古ノー」のオール沖縄系も同イエスの保守系も分裂した形だが、前者計8万,2246に対して後者計4万9,227と、前者がダブルスコアに近い差で勝っている。この結果は、次の“決戦”とされる10月23日投開票の那覇市長選で翁長有利に作用する。

反面、やはり同時に行われた普天間基地の地元である宜野湾市長選では、佐喜真元市長の後継者で辺野古容認派の現職=松川正則が2万9,664票を獲り、「オール沖縄」の新人=仲西春雄に1万票以上の差をつけて再選を果たしている。これは、普天間基地を抱える同市としては当然の結果で、同市の市民にしてみれば辺野古でもどこでも移転先ができて1日も早く普天間が閉鎖されることを望んでいる。

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正面から問われた「辺野古建設」の是非

私が「日刊ゲンダイ」の連載コラム9月1日付(先週号所収のFLASH No.474参照)で指摘しておいたように、今回の知事選が4年前の前回と異なるのは、自民党が辺野古基地建設について口を濁すのを止めて、正面切って「容認」を訴える方針に転換したことにある。

その転換は実は7月の参院選ですでに始まっていて、オール沖縄の現職=伊波洋一に挑んだ自公の古謝玄太は「辺野古容認」を訴えたにもかかわらず、伊波の27万4,235票に対し27万1,347票と、わずか2,888票、率にして0.5%の差にまで肉薄した。これを見て茂木敏充自民党幹事長は「辺野古から逃げなくても、もう一押しで勝てる」と、この知事選に勝負を賭けた。

それに対して玉城は演説の中で、

「辺野古新基地建設は完成できない。普天間の危険性除去は部隊を県外・国外に移し、オスプレイやヘリが上空を飛ばない日常を取り戻す。玉城デニーは絶対にぶれない。再び、県知事としての役割を担わせてほしい」

と、普天間の県外・国外移転と辺野古の建設中止を強く訴えた。その挙句の圧勝であるから、この結果は何にもまして辺野古問題についての県民世論の決着を表したものと言えるだろう。茂木は賭けに敗れたのである。

しかし辺野古問題の先行きは多難

そうは言っても、茂木が大人しく引き下がるかと言えばそんなことはない。第2次安倍政権・菅政権を通じて政府・自民党が貫いてきたこの問題についての基本姿勢は、こと国防に関わって「国民主権」とか「県民世論」とかいうものが通用するはずがなく、政府の専権によって決定され執行されて然るべきであるとする戦前型の「国権主義」であって、岸田=茂木政権も基本的にそれを引き継いでいる。これを転覆するには、沖縄県民とその知事がいくら頑張っても限界があり、中央政界での力関係の変化が必要となる。

そのような中央にも及ぶ政治的条件を欠いたままの知事が辺野古建設反対の世論を託されても、正直なところ出来ることは限られていて、すでに翁長雄志前知事以来、行政的・法律的の範囲内で県がやりうることはほとんどやり尽くしている。県レベルでそれを超えていくものがあるとすれば、行政的・法律的な合理の範囲に収まらない、運動的・情念的な非合理のパワーで、それが本来「オール沖縄」に期待されたものであったのだが、オール沖縄はそのようなものとして育ってはいない。

それでも県知事が、東京を通さずに直接に米国政府と交渉を開き、辺野古中止のみならず在沖の全米軍基地の段階を追った返還を実現するという大田昌秀知事時代の自立的な発想を追い求めることは、少なくとも論理的には不可能ではないが、米バイデン政権が先頭を切って「台湾有事」論を扇動し、その場合に尖閣から先島、沖縄本島までが中国による軍事攻撃に曝されるといった虚妄が罷り通っている現状では、ほとんど不可能で、これを押し開けるには県が先頭を切って「台湾有事論」「中国脅威論」の横行と戦わなければならないが、玉城にその問題意識はない。

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佐喜真は「統一教会」ズブズブ

上記の「日刊ゲンダイ」コラムで述べていたように、佐喜真の「統一教会」とのズブズブの関係が暴露されたことは、彼にとって大きな打撃となった。4年前の県知事選の時には彼の「日本会議」系の右翼勢力との近しい関係はすでに問題にされていたが、「統一教会」との関わりはまだ表面化していなかった。岸田政権による安倍国葬無理押しのお陰で自民党と同教会との深々とした癒着が赤裸々に曝され、その中で佐喜真が台湾での同教会のはしたない儀式にまで参加していたことも明らかになって、釈明の声明を発表しなければならないところにまで追い込まれた。

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敗戦の弁で佐喜真は、統一教会との関連が報道されたことが「若干影響はあったと思う」と認めたが、「若干」どころではない、致命的とは言えないかもしれないが、ダメ押し的な影響があったと思われる。

とりわけこの件は、公明党=創価学会の支援活動を鈍らせ、その中でも活動力の中心をなす女性部の離反を促した。これは、沖縄だけの問題ではなく、安倍・菅・岸田政権を通じて反中国的な軍事的タカ派路線が強化されつつある中で、公明党がどこまで連立に付き合っていけるのかということに関わる先駆的な指標を成している。

佐喜真の惨敗を見て、統一教会との関わりをいい加減に扱っていると政治家として没落しかねないのだと思い知れば、今後は国会議員のみならず地方の首長や議員にまでその恐怖が広がっていき、それが来春の統一地方選をも大きく左右することになる。その過程で公明党は、何をどこまで我慢して連立を続けるのか、自民との心中を避けるための決断を迫られるのではないか。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年9月12日号より一部抜粋・文中敬称略。全文はメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』を購読するとお読みいただけます)

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