「女性過半数」となる市町村も多かった統一地方選。このことに不安を感じているのは、生きづらさを抱えた人たちの支援に取り組む引地達也さんです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、 引地さんがケアの視点から一地方選当選者に言及しています。

ケアの視点からの統一地方選後半、ケアと女性と当事者と

統一地方選挙の後半戦である全国126の市区町村長選、551の市区町村議選が先月行われた。

生活に近い場での政策決定に関わる議員を決める選挙は、ケアの視点で見ればよりきめの細かい対応、困った方々の代弁者としての機能が期待されるだけに、支援の仕事にも影響を与える。

大手メディアはこの統一地方選の後半戦を総括し大きな捉え方で傾向を示すのは難しいようだが、低い投票率の中でも、社会保障費の確保がこの社会で求められる中で、社会保障費に敏感な人たちの動向が結果に結びついているのは確かだろう。

子育てをはじめとするケアを重視する姿勢を示す傾向が多い女性の当選者の多さはその象徴と理解できる。

朝日新聞によると、全国315区市議選のうち、千葉県白井市、兵庫県宝塚市、東京都杉並区の議会が「女性過半数」となったという。

それは政治が多様化するということで喜ばしいが、私としては政治全般への不安も残る。

私が住む東京都江戸川区は定員44人に対し56人が立候補し、朝の駅前には複数候補がかわるがわるに演説やあいさつで出勤を急ぐ人に声をかける。

私が通う就労継続支援B型事業所がある大田区では50人の定員に82人が立候補し、区内のJRや私鉄、地下鉄の駅ごとに候補者が演説したり、あいさつしたりの賑やかさであった。

そして、私は各場所において候補者の声に聞き耳を立てながらも足を止めることなく立ち去る日々だった。

それには理由がある。

前回の都議会議員選挙や国政選挙で、事業所が東京都管轄の大田市場内で障がい者の就労の場として機能させ、それをひとつのモデルケースとして、事業所や当事者の双方にとってよい形を作る意義を候補者に説明して回っていた。

何人かの候補者は「選挙戦が終わりましたらうかがいます」「勉強させてきださい」等と握手を交わしたのだが、当選して事業所や大田市場の現場に来た人は一人もいない。

それが悲しくて、今回は交わらないようにしていたわけだが、前回も「見に行きます」と言いながら来なかった(来ていない)女性議員もいるので、女性だからといって全面的に期待しすぎるのもまた悲しい気持ちになるかもしれない。

とはいえ、朝日新聞が今回の選挙前に行った全国1788地方議会全てへのアンケート調査では、女性過半数の議会はなかった。
杉並区議選は、48議席を69人で争い、女性議員は15人から25人に増加。投票率は前回よりも4・19ポイント高い43・66パーセントだった。

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さらに注目したいのが難病を患うなどの当事者の当選者である。

千葉市議選中央区選挙区では、難病の筋ジストロフィーの当事者である渡辺惟大さん(36)が初当選した。

車いす生活で闘病しながら介護事業所を運営している立場で、支援に関する施策には自分なりの思い入れがあるという。

大手メディアに「当事者の視線で福祉行政を変えたい」と話し、行き届かない支援の制度化を考えたいという。

このように当事者が議員という立場でいることで、議論もよりリアリティに近づき、政策の質が上がっていくだろう。

女性と当事者の声が増えることは、しなやかで豊かな社会づくりにつながるのだと信じたい。

しかしながらさらに深刻なのは投票率や議員のなり手不足である。

投票率は市議選、町村長選、町村議選で、過去最低を記録。

朝日新聞の集計では、市長選の平均投票率は47・7%、過去最低の前回47・5%をわずかに上回った。

市議選は前回比1・3ポイント減の44・3%、町村長選は同4・2ポイント減の60・8%、町村議選は同4・2ポイント減の55・5%、いずれも過去最低を更新した。

かつては約9割の投票率も今や約半分まで落ち込んでしまった。

何か手を打たなければ政治と国民との乖離は広まるばかり

私も市民として何が出来るのか考えよう。

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