たとえそれが客観的事実に基づいた発言であっても、「敵対的」と判断するや相手を次々と名誉毀損で訴えているカルト教団・旧統一教会。メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』を発行するジャーナリストの有田芳生氏も彼らにターゲットとされた一人ですが、その“迎撃”は凄まじいものでした。かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんが発行するメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では今回、統一教会に関する裁判の様子を詳細にレポート。有田氏によって法廷の場で次々と明らかにされた、旧統一教会の「不都合な真実」を紹介しています。

旧統一教会が訴えてきた裁判で、逆に不都合な真実が次々に暴かれていく テレビや弁護士、ジャーナリストらへの損害賠償などを求める裁判が始まる

2022年に入り、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は、教団への批判的な報道をした、テレビ・ラジオや弁護士、ジャーナリストらへの名誉棄損による損害賠償を求める訴訟を起こしました。その裁判が今年に入って、次々に始まりました。

22年9月29日に旧統一教会により「7月20日に『ミヤネ屋』で放送された内容に対して、読売テレビと紀藤正樹弁護士」「9月2日同番組の内容に対して、読売テレビと本村健太郎弁護士」「9月1日『ひるおび』での放送内容に対して、TBSテレビと八代英輝弁護士」いずれも「2,200万円の請求と謝罪広告」を求めた提訴がなされました。

同年10月27日に「9月9日『おはよう一直線』での内容に対してTBSラジオと紀藤正樹弁護士」(1,100万円の請求と謝罪広告)「8月19日に放送した内容について、日本テレビと有田芳生氏」(2,200万円の請求と謝罪広告)を訴えた裁判も起こします。

本村健太郎弁護士と、八代英輝弁護士の裁判は非公開で行われているとのことですので、今回「読売テレビと紀藤正樹弁護士」と「日本テレビと有田芳生氏」の傍聴に行きました。

両方の裁判を書いたら、言いたいことが山ほどあり、膨大な文字数のメルマガになりそうなので、まずは有田さんの裁判の状況を書きたいと思います。

5月16日、旧統一教会スラップ訴訟・有田芳生事件の裁判が開始

8月19日に放送した内容について、旧統一教会が、日本テレビと有田芳生氏を訴えた裁判では、旧統一教会スラップ訴訟・有田芳生事件弁護団は、光前幸一弁護団長を始めとする58名の弁護士の態勢で戦いに臨んでいます。

裁判後「旧統一教会訴訟・有田芳生事件」報告会も行われましたが、有田さんから「訴えられてなんぼのもんじゃという気持ちでやっていく!」という言葉もあり、スラップ訴訟で萎縮させようとするけれど、ますます意気軒高になる有田さんの圧倒的なパワーの前には教団もなす術なしという感じだと思います。

弁護団「この提訴自体が悪質なスラップ訴訟である」と主張

この裁判では、本当は教団として隠しておきたいであろう、過去の真実が公の場で世に出てしまうことになりました。

教団側は有田さんが番組で「霊感商法をやってきた反社会的集団ってのは、警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係を持たないと、そういうことをあのスッキリ言わなければだめだと思うんですけどね」という発言をもとに訴えてきています。

しかし弁護団は「そもそもこの発言は、有力政治家(萩生田光一議員)の件を取り上げた番組のなかで、旧統一教会とは、スッキリと手を切るべきということの主旨」であり「旧統一教会が霊感商法を行ってきたという事実を前提とする有田氏の意見であって、そもそも名誉棄損にはならない」としています。

それどころか「40分番組のなかでのこの発言を切り取っただけで、この提訴自体が悪質なスラップ訴訟である」としています。

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教団の「不都合な真実」が公の場で次々と明らかに

裁判では、有田さんからの意見陳述もありました。一部、抜粋します。

過去に有田さんのもとには「警察庁と警視庁の幹部から統一教会についてのレクチャーの依頼があった」と明かして「霊感商法の実態、1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件(赤報隊を名乗る人物の犯行)への疑惑を話した」ということです。

朝日新聞阪神支局襲撃事件は、赤報隊を名乗った人物が、当時29歳の朝日新聞の小尻記者を銃撃して死亡させるという、言論封殺を狙った許されざるものでした。

当時は、朝日新聞を中心に旧統一教会の信者らが行う、霊感商法批判を展開していた時期でもあり、教団も捜査の対象になっていたとのことでした。

「警察当局は右翼、新右翼とともに『統一教会重点対象一覧表』という捜査資料『勝共(連合)の非公然軍事舞台』『統一協会の軍事舞台』の調査も進めていました」(有田氏)

その疑惑を深める一因に、教団の動きがありました。

「統一教会系の『幸世物産』は1968年2月に韓国の教団系の会社から2,500丁の空気散弾銃『鋭和3B』を輸入販売しました。警視庁は警告を出しましたが、さらに1万5,000丁の輸入申請を行ったため、1971年3月26日の衆議院地方行政委員会でも問題になりました」といいます。

この時の後藤田正晴警察庁長官(当時)は「この空気散弾銃が果たして適正なものかという点に私どもは疑問を抱いた」「それを監視して、この2,500丁以外は入れない」と答弁したということです。

52年前の答弁をみてもわかるように、すでに教団の行動は、社会的に問題視されて、監視される存在だったわけです。

さらに1973年4月5日の衆議院内閣委員会では、「日本に輸入した『鋭和3B』という単発空気銃が10メートル離れたところから、厚さ2センチの板を貫通する威力を持ち、殺傷能力のあることが問題になった」としています。

当時、統一協会信者らにより、全国35か所で銃砲店が経営されていたそうで、警視庁刑事局保安部長は「全国で8か所この銃のための射撃場がある」と答弁し「この問題については、中曽根康弘国務大臣も『警察庁とよく連絡を緊密にとりまして善処いたします』と答弁しました。私が統一教会を単なる宗教団だとは思ってこなかった理由です」と有田氏は話します。

時の指導者の意向しだいで「銃を持つことを正当化」する恐れも

この出来事が過去のことはいえ、大量の銃を扱っていた教団の行動に改めて恐ろしさを覚えます。

なぜなら、教義を信じた者たちは、時の指導者の意向しだいで、神の国実現のために、今後も大量の銃を持つことを正当化させる恐れがあるからです――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2023年5月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)

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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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