当サイトでもこれまで何度もお伝えしてきた、和歌山県海南市の殺人未遂いじめ放置事案。実質6年間、被害者の訴えを無視し続けてきた海南市教育委員会が重い腰を上げ第三者委員会を設置するに至りましたが、市議会だよりに掲載された「設置までの経緯」なる文章は呆れざるを得ないものでした。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、その画像を掲載するとともに「5つの異常」を指摘。さらに同市第三者委の今後に対する偽らざる心境を綴っています。

いじめ探偵が激怒。公式HPで殺人未遂いじめ被害者を恫喝した海南市

いい加減にしろよバカヤロー。

本音で言えば、そうなるだろう。

和歌山県海南市、報道機関によれば4年間のいじめ放置、実質6年間いじめ重大事態を放置した「海南市重大事態いじめ放置事件」。

本誌『伝説の探偵』がいち早く本件を報じ、その後、あまりに酷い内容に報道機関が驚き、後追い報道が続いた。

ある記者は、海南市の教育委員会の担当者があまりに幼稚な嘘を平気でつくのを目の当たりにして、法律を守るはずの行政がこんなにわかりやすい嘘をつくことに混乱したと話してくれた。

世間が気付き、報道機関が連続して報じ、市民からの声も大きくなり、抑えきれなくなって海南市教育委員会は一転して「第三者委員会を設置する」と言った。

これらに関係する記事は下記のとおりだ。

【関連】教員らの暴走、校長の嘘。いじめ被害者を迫害する小学校「異常対応」の証拠写真
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さて、下記は、海南市の市議会だより「かいなん」(令和5年5月号、NO,73)に表記されたものである。

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「第三者委員会の設置に至るまでの経緯は」という問いの答えがある。

本市小学校児童の保護者から、子どもが1年生の頃にいじめを受けているとの訴えがあり、学校や教育委員会では、当初の訴えをはじめ、2年生以降も保護者からのいじめの訴えがあるたびに公平・中立的な見地をもって、事実確認の調査を行うとともに、保護者には、訴えの事実を確認できなかった旨を説明したが納得いただけなかった。

 

そうした中、今般、このいじめの事案の報道があり、市民の方にもご心配おかけすることになったので、これ以上市民の方を混乱させないため、改めて当該いじめ事案に直接利害関係等を持たず、かつ公平性・中立性が確保された組織で、客観的な立場から事実関係を明確にすることを目的に第三者委員会を設置する。

とある。

第三者委員会を設置するにあたり、本件の放置には「海南市教育委員会」も当事者として関与している状態であり、その当事者が、恰も利害関係のない第三者のように、このコメントを市議会だよりに掲載している異常がまず1つ。

すでに文科省からも和歌山県教育委員会からも、海南市教育委員会の対応は、いじめ防止対策推進法から逸脱しており、誤りであったと指摘、指導されていながらも、口語に要約すれば、「自分(教委)たちはちゃんとやってんのに、親がクレーマーでさ」との口ぶりで公式な広報誌に載せてしまうという誤報という異常が2つ目。(ちゃんとやってないから指導されたんでしょ)

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市教委という独立した行政委員会が他所から指導を受け指摘される状態を作り出したのにも関わらず、つまりに自らの対応に大きな問題があったのに、そこは、どこか地球の裏にでも置いておいて、市民の方が混乱すると恩着せがましく、広報誌に記載して広く知らしめようとする狡猾なさまという異常が3つ目。

さらには、市教委の偏った意見を丸写しで、およそ別組織であろう市議会の広報誌に恥ずかしげもなく載せてしまうという、実は海南市行政が一蓮托生ではないかという異常が4つ目。

まだある。

海南市市議会があるホームページには、「第三者を誹謗中傷する内容や個人情報はお断りします」とわざわざ注意書きしつつも、文面において、いじめ被害者と保護者が地元民では特定できる状態なのを知りつつ、誹謗中傷する内容を公的な広報誌に記載する幼稚かつ卑怯な嫌がらせをし、これは市議会の広報誌だから市議会、海南市自体を巻き込んでの被害者への吊し上げを行うという暴挙が継続して行われているという公的村八分令という異常が5つ目。

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冒頭に戻るが、いい加減にしろよバカヤロー。

本音で言えば、そうなるだろう。

本当に第三者委員会は大丈夫なのか?

ここまでくると、これが先に行われ、それを行った犯人組織が設置する第三者委員会は本当に大丈夫なのか?という疑問が簡単に生じるだろう。

メンバーはすでに公表されているので、下記の5人だ。

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ただ彼らの中には、他所の委員会などで被害者に寄り添った対応をしてくれたと意見が出てきている委員もいる。もはや、この5人の正義にこの事件は委ねられているとも言えよう。

そして下記が海南市の西原教育長が出した諮問に関する文書である。

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ここには諮問理由をこう書いてある。

海南市立小学校の当時1年生の児童の保護者から、子どもがいじめを受けているとの訴えがあり、学校及び教育委員会においても事実関係の調査を行ってまいりましたが、今般、第三者である海南市いじめ問題調査委員会に事実関係を明確にするための調査を行って頂くため、諮問いたします。

学校及び教育委員会においての調査と評価できる事実はなく、これらを総合的に評価して、法律と照らし合わせ、その対応は誤りであると文科省に指摘されている事実がある。これは、天下のNHK報道がその裏付けを慎重にして記事と映像でしっかりと報じている。新聞もその他の報道も同様である。

その上で、よくも恥ずかしげもなく、「ちゃんとやったもん」と書けるもんだ。

私は本業探偵であるから人の裏側の汚い部分を日常として当たり前に見てきているし、世の中が全て正義である事がまかり通ることなどはない、裏があって欲があるということを心底見てきているが、ここまで羞恥心すらないのかというやり方は、見ているこっちが恥ずかしくなってくるほどだ。

不安はある。報道機関の記者さんによれば、第三者委員会の会議中、教育長がこの会議に入り込み最後まで出てこなかったという。

諮問内容からすれば、教育委員会も調査対象になる。その調査対象の長が、第三者委員会に入り込んでしまうというのは、それ自体で一発中立公平性を欠く対応ということになろう。

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本当に大丈夫なのか?

仮に私が委員であれば、会議室に調査対象は一切立ち入ることを禁じる。それが、いじめ防止対策推進法上で委員会の設置者に当たるとしてもだ。

その上で、事務局は別に設け、完全に独立した設置要綱を発布して、これを教育委員会に認めさせる。

過去、関わった山梨県北杜市の第三者委員会は、委員長らは教育委員に机を叩いて恫喝されても、その正義を貫いてくれた。

いじめ防止対策推進法では、第三者委員会の設置者は学校の設置者や首長だと規定されており、公立校であれば教育委員会、私学では学校法人などがこれに当たるが、立法した議員らに聞くと、ここまで教育委員会が法律を守らないとは思わなかったと吐露し、法改正においてはこの規定は見直していく必要があるだろうと言ったことを思い出すところだが、もはやそうなれば、第三者委員会は形骸化され、隠ぺいに加担しないためにも、自由と正義、法の理念に基づき、委員個々人にその正義と善意が委ねられているといえよう。

いじめにおいては、不当な権力に加担し正義を貫かず、再調査によってそれが否定されて事例も多い。一方で、歪な権力に負けず、正義を貫いてた委員会もある。

はたして、海南市のいじめ第三者委員会が、どちらの組織か。

もはや海南市教育委員会とその周辺が、引き戻せない隠ぺいへの道を貫き、救いようがない状態だからこそ、今後の動きに注目したいところだ。

編集後記

聞くところによれば、第三者委員会は次回からは教育長らの会議への出入りは禁止するとメディアの記者さんらに説明したそうです。

ほんとうかな…ちゃんと守るのかな…みんな注目しています。

まあ、こういう話をしたということは、初回の会議に入り浸りさせたのはマズイと思っての事でしょうが、現段階でかなりマイナスです。

物事には原則的な担保というのがあります。法などのルールで根拠を見出だし、そして行動でしっかり担保していくから、信用の基礎を作れるのです。どちらも欠けば、いかに人柄が素晴らしくても、権力があっても、信用の基礎すらありません。

海南市市議会にはたしかにしっかりした考えで、いじめや教育についての知識があろう議員さんもいますが、議題への評価、陳情への評価と市議会だよりの暴走をみれば、一目瞭然、いざとなったら、嘘をついてでも市民などは切り捨てる組織であろうと思います。

そして、続々といじめ重大事態ではないかという別件被害も挙がってきています。それらも含めて本当に問題に向き合うのか、隠ぺいの流れにまた乗って自らの保身に走るのか。

この地の市民でなくても、こうしたことは全国的に起きていますから、注目すべきだろうと思います。

そしてもう1つ。

8月22日、現状目立った動きがないまま高知県南国市、岡林優空くんの命日が再び来てしまいます。私は他の方も含め、月命日には写経をしてお線香を立て何かの供養になればとの思いで過ごします。皆様ももし1分でもお時間あれば、8月22日、優空君が亡くなったことを思い、手を合わせてもらえればと思います。

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image by: 海南市役所 − Home | Facebook

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