7月28日には米本土を射程に収めるICBM発射実験を成功させるなど、ますますエスカレートする北朝鮮の挑発。中国に歯止め役を期待したアメリカですが、その思惑は大きく外れた形となってしまいました。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』では著者の高城剛さんが、トランプ大統領や米政府高官らの発言から見て取れる「アメリカの苛立ち」を指摘するとともに、今後より一層の緊張が東アジア全体を覆うとの見方を示しています。

東アジア全体を覆うより一層の緊張

今週は、北朝鮮をコントロールしない中国と苛立つトランプ政権につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

7月28日深夜、北朝鮮は、自国のICBM「火星14号」の第2回発射実験を強行しました。前回と同じく通常より角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」が使われたと見られており、専門家は、通常軌道で発射した場合、最大射程は前回より伸びて1万キロに達する可能性があると分析しています。この射程1万キロは、アメリカ本土に届く距離で、西海岸のサンフランシスコやロサンゼルスが射程内に入ります。

北朝鮮が2回目のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験に成功したと発表したことを受けて、アメリカのトランプ大統領はツイッターに「中国には大変失望している。アメリカの過去の愚かな指導者たちが貿易で中国に大金を稼がせたのに、中国は北朝鮮に対して口先だけでわれわれのために何もしていない」と書き込み、北朝鮮への影響力を行使していない中国への強い不満を表明しました。

さらに「われわれはもはやこの事態が続くのを見過ごすわけにはいかない」と投稿し、今後、北朝鮮同様に中国に対して何らかの措置を取る可能性を示唆しています。

実は、米中両政府が7月中旬、トランプ政権発足後、初めて開催した閣僚級の包括経済対話が行われましたが、トランプ大統領が中国側代表団(中国代表団団長は汪洋副首相)と会見せず、予定していた記者会見も直前になって急きょ中止に追い込まれていました。

会議はワシントンで行われ、トランプもホワイトハウスで執務していたにもかかわらず、中国側代表団と会わないのは極めて異例で、北朝鮮の管理ができない中国に対し、業を煮やしている現れだと考えられます。

このままでは、米中による全面的な経済戦争に発展する可能性があり、ロイターは「両国関係は一気に冷え込む可能性が高いだろう」と伝えています。

さて、北朝鮮が7月28日にICBMを打ち上げたことは、大変深い意味が隠されています。実はいまから64年前、朝鮮戦争が休戦となったのが7月27日なのです。

この日、北朝鮮では朝鮮人民軍の大会が2年ぶりに開かれ、「敵がわが国を相手に無謀な挑発を再び行えば、われわれの武力は侵略者を滅亡の墓に突き落とす」とする金委員長の発言を世界的にアナウンスし、アメリカとの対決姿勢を重ねて強調しました。

一方米国は、北朝鮮のICBM発射実験直後、米韓両軍で合同軍事演習を急きょ実施しましたが、いままで同様空母派遣など軍事力誇示は、すでに北朝鮮に足元を見透かされています。

本メールマガジンでも何度もお話しした本年4月の米中首脳会談の直後、トランプは、「もし中国が北朝鮮問題を解決するなら、貿易問題で米国とはるかに良い取引をすることができると説明した」とツィートしておりますが、実際は、国連安全保障理事会の決議でも原則禁止されている北朝鮮からの鉄鉱石輸入を中国は拡大するなど、制裁に加わる気配がいまもありません。

今週、米国ティラーソン国務長官は「中国とロシアは増大する脅威に特別な責任がある」と名指しで2カ国を批判しています。ポンペイオCIA長官は、北朝鮮が核ミサイルの開発を加速させている問題について、外交による解決ができなかった場合に備え、秘密工作を検討していることも明らかにしましたが、本当の秘密工作なら公言しないはずです。このあたりに、米国の苛立ちが理解できます。

中国を北朝鮮による挑発行為の「歯止め役」に期待した米国の思惑は、大きく外れました。つまり、今後より一層の緊張が東アジア全体を覆います。

次に注意を払うのは、9月9日です。なぜなら1948年のこの日、北朝鮮が建国されたからです。

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出典元:まぐまぐニュース!