6月25日、トランプ大統領が非公式の場とはいえ「日米安保の破棄」に言及したとの報道を巡り、日本メディアでは様々な議論が交わされました。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、大統領の発言に対する3つの見解を示した上で、日本が「軍事的に自立した国」を目指すべき理由を解説しています。

トランプ、「日米安保【破棄】に言及」について

結構さわぎになっているので、ご存知の方も多いでしょう。トランプさんが「日米安保破棄」に言及していたそうです。

トランプ大統領、日米安保破棄の考え側近に漏らしていた−関係者

6/25(火)11:45配信

 

(ブルームバーグ):トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。

 

トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。

今回は、これについて考えてみましょう。

ホントにいったのですか〜?

まず第1に、ホントにトランプがいったのかわからないということです。今世界は、「米中覇権戦争」の真っ最中。「情報戦」という観点を、一時も忘れないようにしましょう。

中国が勝ちたければ、日本とアメリカの関係を破壊するのが一番いい。そういえばプーチンも最近、「島を返してほしければ、日米同盟を破棄しろ!」などといっています。ロシアは、現状はっきり中国の側についている。だから、ロシアも「日米同盟破棄」を望んでいるのです。

というわけで、日本とアメリカの仲を分断する情報がでてきても、出所が明らかでない場合は、あまり動揺しないことです。「事情に詳しい関係者3人」て誰ですか????ってことですね。

トランプならいうかもしれない

第2に「トランプならいうかもしれない」。なぜ?もう一度。

トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。

これ、トランプが選挙キャンペーン中にいいつづけてきたことです。だから、驚くべきことではありません。では、大統領になった後は、なぜいわなくなったのでしょうか?

誰でも私的な会話と公的な会話は、わける必要がある。安倍総理はかつて、「東京裁判は勝者の断罪!」と発言し、欧米からおおいに警戒されました。しかし、その後いわなくなったので、欧米の警戒感もなくなってきた。

では、安倍総理は現在、「東京裁判は勝者の断罪!」と考えていないのでしょうか?これ、ご本人に聞いてみないとわかりませんが、おそらく考えているのではないでしょうか?しかし、総理大臣なので、「嗚呼、こういうことをいうとバッシングされるのだな」と気がついたのでしょう。

トランプだって同じこと。大統領になる前と後では、発言がかわるのは当然。あるいは、側近たちと話しているときと、公的な場にいるときでは、発言内容が変わるのは普通です。

トランプ、実は「正論」をいっている

第3は、実をいうと彼は「正論」をいっている。

トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。

これ、どう考えても正論ですね。日本が攻撃されたら、アメリカ軍兵士は、命をかけて日本を守る義務がある。しかし、アメリカが攻撃されても、日本はアメリカを守ってはいけないのです。つまり、日本の立場は、

「私が襲われたら、あなた私を命がけで守りなさい。あなたが襲われたら、僕はシカトするけどね。なぜ?それは、僕が『平和主義者』だからだよ!」

これ、アメリカ人から見たら、メチャクチャ「狡猾」です。常識的な頭脳をもっている人なら、誰でも「変な条約だ」と思うでしょう。なぜこんな話になったのでしょうか?

日米安保には、二面性がある。一つは、「ソ連の脅威から日本を守りますよ」。これ、事実ですね。今なら、「中国の脅威から日本を守りますよ」。

もう一つは、「日本が再び強くなってアメリカに逆らわないようにしますよ」。これが、日米安保の「裏目的」です。アメリカ側の事情で、変な条約になった。

しかし、アメリカもパワーが衰えきたので、「日本はなんで安保ただ乗りなんだ!」と変わってきた。そう、アメリカ側の事情が変わってきたのです。

日本が「軍事の自立」をはたすために

RPEの読者さんの中には、「憲法9条さえあれば日本は安全です」なんて考えている人はいないでしょう。「できれば、自分の国は自分で守れるようにしたいな〜」と考えておられる方も多いのでは?

「軍事の自立」という目標はいいのですが、「達成の仕方」も大事です。もし日本が今、「日本は軍事の自立をめざしまあす!」と宣言したらどうなるでしょうか?騒ぐのは、中国、韓国だけではありません。「東京裁判史観」をつくり、日本に「自虐史観」をうえつけた張本人アメリカも大いに警戒します。

そうなると、アメリカは、いわゆる戦勝国であるイギリス、フランスと組み、中国、ロシアと和解して日本を叩きつぶすでしょう。

しかし、トランプ自身が、「日米安保は片務的で不公平だ!」というのなら、双務条約にすればいいのです(安保法で、少し双務的になりましたが)。

つまり、日本が攻められたら、アメリカは日本を守る。アメリカが攻められたら、日本はアメリカを守る。これが普通です。こうなれば、日本は、アメリカのお墨つきを得て、軍備を増強できる。「アメリカのためです」といいながら、抵抗なく、ちゃっかり「軍事の自立」にむかっていくことができる。

今回のブルームバーグの記事、あまり深刻に考える必要はありません。しかし、アメリカの力は衰えてきています。日本は、アメリカの衰退分を補う形で軍事の自立に近づいていきましょう。

その一方で、将来アメリカ、中国に並ぶ超大国になることが確実なインドとの関係を強化していく必要があるでしょう。

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