前回、手厚く素早いアメリカの支援金給付事情を紹介した『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』著者のりばてぃさんが、今回は、給付に関わるソーシャル・セキュリティ・ナンバーとEファイリングの制度について詳しく解説。ほぼすべての納税者が自分自身で確定申告をする制度とそのための仕組みがスピード給付を可能にしていること、二重給付などのミスも当然あることとして捉える姿勢などを伝えています。

経済支援金のその後… (1)やっぱり段違いに早いアメリカの支援金

前回書いたアメリカの経済支援金についての記事がまぐまぐニュースさんに取り上げて頂きまして、思いの外、多くの方に読まれているようなので、その後の市民の反応と、なぜスピード入金が可能だったのかをせっかくなのでお伝えしておこうと思う。

● 手厚さ、スピード感が日本と段違い。アメリカの支援金給付事情

なぜなら、このメルマガの目的の1つに世間で起きていることから今後を考えていこうというのがあるから。日米どちらが優れているかというよりも、よりよい未来を作るには、こうしたきっかけから何が学べるのか?を考えるほうがずっと建設的だと思っているからである。

なお、この経済支援金は納税者の93.6%に何かしらの給付がされるのだが(前回お伝えしたように年収で若干の違いがある)、5月11日のマーケットウォッチの記事によると、すでに1億1,000万世帯への銀行口座への直接入金、加えて2000万枚の小切手が送付完了しているという。あっという間だ。それでもまだ手元に支援金が届いていないという人はいて、今後、そうした方々のフォローがされていく。
● IRS has paid out over $218 billion in stimulus checks

(2)米国税庁もミスはある

ここまで聞くと、「さすがアメリカは早いな、日本と違うな」と感じたり、「アメリカですらこんなに早いのにそれに比べて日本は…」などなど皆さんそれぞれ思うところがあるだろう。

でも、よーく状況を整理すると、アメリカの政府が極端に有能だからというわけではないのだ。その証拠に銀行振り込みと紙の小切手の両方が届いた人もいる。マーケットウォッチの記事によると、銀行口座への直接入金に加えて紙の小切手も届いた人が、どうやって米国税庁(以下、IRS)へ返金したら良いのかとの相談が届きそれに対する回答が掲載されている。直訳したので以下どうぞ。

<相談者>
銀行振込と紙のチェック、両方届いたので返金したいけど、そういう場合、どうすればよいのかIRSのウェブサイトに情報がない。

 

<回答者>
IRSの事務手続きミスは、よくあることで、まったく驚かない。他にもいっぱいミスの話はある(待てども届かない人もいれば、すでに亡くなった親族宛に届いたという人も)。紙のチェックを現金化せず、無効(VOID)と書き、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーなどを書いて、送り返せばいい。一応、IRSのディレクション(Q41)に、そういう説明が書いてある。

● I received two $1,200 stimulus payments. One was direct deposit and the other was a paper check — I cashed the check – MarketWatch

そう、つまり、アメリカで素早く給付金を支払えた理由は、決してIRSなど事務方の能力が優れていたわけではないのだ。

もう少し詳しく説明しよう。もともと、毎年、アメリカでは毎年の確定申告を自分でするアメリカ人が多い。日本では個人事業主以外はすべて会社がやってくれるがアメリカは違う。一般的な会社員はほぼ全員が自分で行う。

しかも最近はじまった制度ではなくずっと昔からで、その際にソーシャル・セキュリティ・ナンバー(日本でいうところのマイナンバーのようなものだが保管管理意識はまったく違う)を使って申請する。

また、単に申請するだけでなく、人によっては追加の税金を支払ったり、逆に払い戻しがでたりもする。なので、銀行口座を連携して登録している人が多い。そして、インターネットが普及し、Eファイリング(オンライン申請)も幅広く使われるようになり、多くが電子管理されていたので、今回のように素早く給付金を支払えたのである。

毎年の納税手続きを支援するウェブサービスは非常に発達しており、私もアメリカで働きはじめた2009年から10年以上使ってる。というか、確定申告をしはじめたのが2009年だっただけで、その時点ですでにEファイリングがあったということはそれよりずっと以前からあっただろう。

しかも、そうしたウェブサービスは、毎年、いろいろ変わる税制に対応し、(例:大きな災害への支援など)納税時に間違うことがないようウェブ上で納税手続きを導いてくれる。

また、こうした納税支援のウェブサービスは、過年度の連邦税(フェデラル・タックス)と州税(ステイト・タックス)の資料をウェブ上で保管してくれていて、過去5年分のPDFをいつでも無料で確認可能だ。それ以前のものも、1つ数十ドル(数千円)で確認できたりもする。

とにかく、そんな感じで納税支援のウェブサービスなどを活用し、アメリでは、毎年、普通に一般社会人は自分の銀行口座から納税額を振り込んだり、すでに過払いしている場合は返金が申請後、これも比較的早く自分の銀行口座に振り込まれるので、今回のように銀行口座でIRSからお金を受け取ることは、ごくごく当たり前のことなのである。

どれだけの人がEファイリングを使っているかというデータもでていて、2019年12月のIRSの発表によると、2018年分の納税をEファイリングした納税者は1億3821万人で、納税者全体の88.72%、約9割に達したとのこと。
● Income Tax Return, eFile Statistics

つまり、アメリカではもともと納税者全体の約9割について住所・氏名などはもちろん、過去の納税額も、現在使っている銀行口座情報も確認できている状態になっていたから、こんなにも早い経済支援金を届けることができたのである。

しかも、2回目の支援金を支払う必要があるだろうという話も出ているくらい。なぜなら、1200ドルでは家賃も払えないという人もいて足りないという指摘が出ているから。そして、現在、こうした個人向けの支援金に加えて、中小企業への支援、エッセンシャルワーカーたちへの支援金など含めて前向きに検討中となっている。

なぜこんなに手厚いのか?おそらくだがこれほどまでに経済的打撃を受けてしまうと(ご存知ように失業者も急増中だ)、犯罪増加にもなりかねないから、そうした抑制目的もあっての対策なのだろう。

逆に、新型コロナ問題以前から収入に変化のない世帯においては、受け取った1200ドルを寄付に回したり、経済支援のために積極的に消費するという人は少なくないだろうから、いずれにしてもかなり良い支援金なのである。

最後にまとめると、仕組み作りは大事ということだろう。有事のときを見据えなくとも、日頃から生活を簡単にするサービスや仕組みは積極的に導入検討するほうが良いのだろう。デジタル化は当然のことながらセキュリティ面が問題になってくるが、だからこそ過去のメルマガにも書いた、セキュリティ関連の仕事は今後、不足ぎみになるし、高給にもなるのである。

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