1月6日(日本時間の7日未明)、アメリカの首都ワシントンでトランプ支持者たちがバリケードを突破して議会に侵入。混乱の中で銃撃により支持者の女性ら4人が死亡する事態が発生しました。こうした暴動が起こる背景には、「Qアノン」と呼ばれる陰謀論の広がりがあると見られています。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では、著者でジャーナリストの内田誠さんが、読売新聞に掲載された「Qアノン」関連の記事を分析。アメリカ社会の分断の深刻度から、クーデターを希求する人々が生じるのは当然の流れであると、今回の事件を予見した見解を示しています。

陰謀論「Qアノン」について新聞はどう報じてきたか?

1月6日の読売新聞7面にジョージア州の上院議員選挙の決戦投票について書かれている。その中に、陰謀論が浸透した共和党内の状況についての記述があり、当然、「Qアノン」についての言及がある。見出しから。

トランプ信奉 根強く
米上院 ジョージア決選投票
陰謀論が浸透■非白人は離反

ジョージア州上院選の決選投票は、バイデン次期大統領の政権運営を左右するだけでなく、「トランプ大統領の熱烈な支持者の影響力が増した共和党の将来を占うものとなる」というのが《読売》の基本認識。

トランプ支持者たちは、トランプ氏同様「不正投票があった」と主張、「不正投票の疑惑に何の答えもないなんて。党の将来が不安になる」と、共和党全体が動いていないことに不信感を抱いている。また、記者が取材したトランプ支持者たちは、「Q」を米軍幹部だと信じていたり、「国を滅ぼす民主党と戦う計画があるはずだ」と話したりしている。

この記事の中で「Qアノン」については次のように説明されている。「トランプ政権が発足した2017年頃から、「Q」を名乗る謎の投稿者が民主党と児童虐待などを結びつけた陰謀論を拡散し、信奉者が増えた。QアノンはSNSを中心に広まる陰謀論の総称として使われている」

●uttiiの眼

「国を滅ぼす民主党と戦う計画」というのは、軍事クーデターのことだろう。トランプ氏が裁判を通じて何の「成果」も得られなかったのは、具体的なエビデンスを示すことができなかったからだ。それに対して、依然としてトランプ氏の妄言を信奉する人たちが、クーデターを夢想するのはある意味では理の当然かもしれない(※編集部註:実際に日本時間7日トランプ支持者らによる米議会占拠事件が発生)。もう他に手段らしい手段は残っていないからだ。アメリカはそこまで落ちぶれてしまったということかもしれない。

【サーチ&リサーチ】

《読売》のサイト内に見つかった9件のうち、10月2日以降の分は4件。最新のものは今日の記事と重なるので、対象は3件となる。

2020年11月5日付
記事は、ベテラン記者2人による解説の動画を起こしたもの。1人の記者が「昔から陰謀論はありましたが、これまでは荒唐無稽と一蹴されていた。それがSNSで拡散に拡散を重ねて、一気に表舞台に出てきました。大統領選と同時に行われた下院選では、南部ジョージア州で、「自分はQアノンだ」と公言している白人女性が当選しました。中央政界へのQアノン進出というわけです」と解説。もう1人の記者は「自分と価値観が似ている人の投稿だけを見るSNSが陰謀論の温床になっている」と鋭い指摘をしている。

2020年11月30日付
11月の論壇誌についての文化部記者による記事。渡辺靖「米大統領選を揺るがす『Qアノン』の正体」を紹介。渡辺氏は、「自助の精神が強く競争も激しい社会だが、競争の敗者が勝者を攻撃する手段に使えば、自らの能力不足を認めずにすむからだ。ただ現在は、史上初めて陰謀論が中央政界を侵食し始めた」としていると。

2020年12月5日付
上記11月30日付の記事を書いたのと同じ文化部の記者による論壇についての記事。一部重複するが、陰謀論が多方面に広がっていることを憂えている。渡辺靖氏の仕事を紹介しつつ、背景にある「敗者を生む格差と貧困」を指摘。さらに、「中国『千人計画』デマ」についての石戸諭氏の論考にも言及。

●uttiiの眼

論壇の紹介が「陰謀論」についての警鐘になってしまうのは誠に非生産的で、かつ、悲惨なことだと言わざるを得ない。しかし、この傾向は簡単には消えないだろう。何より、「格差と貧困」が家族と社会を蝕み、新型コロナの蔓延や地球温暖化の影響が深刻化するという希望の見えない状況下では、「陰謀論」は、人々が不安に苛まれながら希求する、一種の秩序観に連なる材料でもあるからだ。誰も、人々が信頼するに足るものを作りだし得ていない、提示できていない…この問題を見つめ直していく必要がありそうだ。

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