反日親中思想を持つとされ、就任後の日米関係の冷え込みも心配されたバイデン大統領ですが、本人や政府要人たちが次々と「尖閣は日米安保の適用範囲」と断言するなど、政権は日本寄りの姿勢を見せています。なぜバイデン大統領は、深いつながりのあるとされる中国ではなく日本を選んだのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、バイデン氏が「合衆国大統領」として日本を選択した理由を解説しています。

なぜ【反日】バイデンは、日本に【やさしい】のか??

アメリカのバイデン新大統領は、「親中」で「反日」だといわれています。「親中」といわれる理由。バイデン次男が、中国から金を受け取っていたから。この件、日本のマスコミも、普通に報道していました。FNNプライムオンライン 2019年5月20日から。

バイデン候補二男と中国の怪しい関係

 

シュワイツアー氏によると、ジョー・バイデン氏が現職の副大統領時代の2013年12月に中国を公式訪問した際、ハンター氏も同行した。その後2週間もたたないうちに、ハンター氏が経営に関わるヘッジファンドのローズモント・セネカ・パートナーズ社に中国銀行から10億ドル(現在の為替換算で約1,100億円)の出資金が振り込まれ、それは後に15億ドル(同約1,650億円)に増額されたという。

バイデンが「親中」である理由は、これでわかりました。では、「反日」である証拠は?

1つ目の証拠。バイデンは、安倍総理(当時)に靖国参拝を止めるよう要求していた。ところが、安倍さんは2013年12月、バイデンを無視して参拝した。それでバイデンが激怒し、大バッシングがはじまったのです。たとえばブルームバーグは2014年2月19日、「日本のナショナリスト的愚行、米国は強い語調で叱責を」という社説を掲載しました。何が書いてあったのか、抜粋してみよう。

悪いことに、日本は米国から支持を受けて当然と思っているようだ。バイデン米副大統領が事前に自制を求めていたにもかかわらず、安倍首相は靖国参拝を断行した。

 

非公開の場でのこの対話の内容はその後、戦略的に漏えいされた。恐らく、安倍首相の尊大な態度を白日の下にさらすためだろう。

バイデンさんのいうことを無視した安倍さんは「尊大な態度」だそうです。

バイデンが「反日である証拠」2つ目は、2016年8月のこちらの発言。ハフポスト2016年8月17日から。

アメリカのバイデン副大統領は8月15日、「我々が(日本を)核武装させないための日本国憲法を書いた」と発言した。アメリカの政府高官が、日本国憲法を「アメリカが起草した」と明言するのは極めて異例だ。

というわけで、バイデンは「親中反日」というのは、「そのとおり」なのでしょう。しかし…。

「尖閣を守る」と宣言するバイデン政権

それで、「バイデンが大統領になると、日本は終わりだ!」と主張する人もたくさんいます。ところが、就任後のバイデンの動きを見ると、「とても日本にやさしい」のです。2つ例を挙げましょう。

現在日本最大の問題といえば、「尖閣を狙う中国」でしょう。去年から今年にかけて、中国が尖閣に侵攻する兆候がでています。たとえば、

2020年4月14日から111日間連続で、中国公船が接続水域を航行した 2020年10月、中国公船二隻が57時間39分にわたって領海侵犯。これは、過去最長 2021年2月、中国海警の武器使用を認める「海警法」が施行される。

時事2月1日。

【北京時事】沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海への侵犯を繰り返す中国海警局の船舶による武器使用について明記した「海警法」が1日、中国で施行された。

これらはすべて、中国が「尖閣侵攻の準備をしている」証拠です。いえ、尖閣諸島もそうですが、「そこの海域を、自国領海にしてしまう試み」ともいえるでしょう。中国は、「尖閣は我が国固有の領土で核心的利益だ」と主張している。だから、彼らにいわせると、尖閣周辺は「中国の領海」なのです。

「海警法」ができた。これからは、尖閣周辺の海で日本の漁船や海上保安庁の船を見つけたら、「ここは中国の領海です!すぐに立ち退きなさい!」と警告。日本の船が指示に従わなければ、「攻撃してもいい」という法律ができている。

習近平が「尖閣を奪おうかどうか?」考える。その時、日本のことはあまり眼中にないでしょう。問題は、「米軍がでてくるかどうか?」です。米軍がでてくれば、中国軍は負ける可能性が高い。

ところで、尖閣有事の際、米軍は出てくるのでしょうか?

サリバン大統領補佐官は1月21日、オースティン国防長官は1月24日、バイデン大統領は1月27日、ブリンケン国務長官は2月10日、それぞれ、「尖閣は、日米安保の適用範囲」と断言しました。

【AFP=時事】(更新)ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は27日、菅義偉(Yoshihide Suga)首相と就任後初めて電話会談し、日本の防衛に対する「揺るぎないコミットメント」を確認した。ホワイトハウス(White House)が発表した。

 

ホワイトハウスの声明によると、両首脳は米国の「日米安全保障条約第5条に基づく日本防衛に対する揺るぎないコミットメント」について協議。バイデン氏は「日本への拡大抑止の提供に対するコミットメント」を確認した。声明では、米国による防衛対象は「尖閣諸島も含む」とされた。

アメリカ政府の最上層部4人(大統領、国務長官、国防長官、大統領補佐官)が矢継ぎ早に、「尖閣は日米安保の適用範囲」と宣言した。つまり、「尖閣有事の際には、米軍が出る」と。このことは大きな抑止力になり、日本にとって大変ありがたいのです。

在日米軍駐留経費【4倍増】を求めたトランプ、バイデンは?

トランプさんは、安倍さんと大の仲良し。ですが、「お金には厳しい人」でした。それで、在日米軍駐留経費を【4倍化】するように求めていました。産経新聞2月17日。

トランプ前政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたジョン・ボルトン氏は昨年6月に出版した回顧録で、2019年に当時のトランプ大統領が、在日米軍駐留経費の日本側負担として年間約80億ドル(約8,470億円)を要求していると日本政府に伝えたと明らかにした。

 

日本が令和3年度予算案に計上した駐留経費負担2,017億円の約4倍に相当する。ボルトン氏がトランプ氏に日本側が難色を示したと伝えたところ、同氏から在日米軍を引き揚げると脅すよう指示されたという。日本政府は著書の内容を否定するが、日米関係に詳しい元米政府高官や専門家の間では事実として受け止められている。

日本政府が「4倍」で同意しなければ、「在日米軍を引き揚げる」と「脅せ!」だそうです。

では、「親中」「反日」のバイデンさんは、何倍要求してきたのでしょうか?答えはこちら。

バイデン米政権が在日米軍駐留経費負担の特別協定について、現行水準で1年延長することで日本と大筋合意したのは、トランプ前政権が日本に対して駐留経費負担の大幅増額を要求し、日米間に波紋を広げた過去との差異を明確にし、「同盟重視」の立場を強く打ち出す狙いがある。
(同上)

「現行水準」で1年延長だそうです。つまり、「今まで通りの額でいいよ」と。日本政府は、どれだけホッとしていることでしょうか。

なぜ「反日」バイデンは、日本にやさしいのか?

これ一文でいうと、「戦略的に日本を必要としているから」です。

バイデンさんはオバマ時代、副大統領でした。そして、オバマ大統領は、「親中だった」といわれています。これは、完全に正しいとはいえません。オバマが親中だったのは、2014年までです。2015年3月に「AIIB事件」が起こった。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など、いわゆる「親米諸国」が、アメリカを裏切り、中国主導の国際金融機関「AIIB」に入ってしまった。これで、リベラルでボンヤリ者のオバマさんも、「中国こそが最大の敵だ」と悟った。

それまで、オバマ最大の敵は、2014年3月にクリミアを併合したロシアだった。アメリカとロシアは、ウクライナ問題、シリア問題、イラン核問題などで対立していました。しかし、中国に狙いを定めたオバマは、ロシアと一時和解し、ウクライナ内戦問題、シリア内戦問題を沈静化させることに成功します。さらに、2015年7月には、イラン核合意を成立させた。そして、2015年、16年と、主に「南シナ海埋め立て問題」で、中国をバッシングしました。そう、オバマとバイデンは、「戦略的に動くことができる人たち」だったのです。

そして、バイデンが大統領になりました。彼は確かに、「親中」「反日」でしょう。しかし、大統領として、「米中覇権戦争」に勝たなければならない。勝つためには、「他の大国」を味方につけなければならない。「他の大国」とは、具体的に、欧州、インド、ロシアそして世界第3位の経済大国日本です。この4か国(欧州は地域だが)は、米中覇権戦争でアメリカが勝つか、中国が勝つかを左右する勢力です。だから、バイデンは、日本にやさしい。

日本には、「アメリカが諸悪の根源」と主張する人もいます。しかし、アメリカは中国と違い、「尖閣は我が国固有の領土で核心的利益」とはいいません。ウイグル人100万人を強制収容し、不妊手術を強要し、民族絶滅政策をしたりしていない。

(※ 全日本人必読資料→「ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の『断種』ジェノサイド」(Newsweek2020年7月8日)

アメリカと中国、どっちがマシかは、小学生でも理解できるでしょう。日本は、しっかりアメリカ側について、自由を守りましょう。日本が進むべき道は明らかです。

image by: Christos S / Shutterstock.com

MAG2 NEWS