新型コロナワクチンの争奪戦に敗れた菅首相は、総理の椅子から降りることを余儀なくされるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、東京五輪の選手団に自国ワクチンの提供を申し出た中国と、その動きに待ったをかけた形のアメリカ各々の思惑を解説。さらに、米国からワクチンの供給を受けることになる菅首相の命運と、その後継となるであろう人物の名を挙げています。

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どうしても東京五輪を開催するために。日本にイラ立ち、IOCが五輪開催に向け準備

IOCと日本、そして中国が東京五輪開催に積極的になっている。世界的な対立がそれに同期している。その状況を検討したい。

「本当に五輪やる気か?世界が疑い始めた菅首相のリーダシップ欠如」で菅首相が五輪の準備をしないことで、五輪は開催できないのではないかと述べた。

しかし、IOCのバッハ会長は「絶対に東京五輪を開催する」と宣言したので、その言葉に責任を持って、日本の準備不足をイラ立ちながら、IOCが主導で、日本の準備不足を解消する方向で根回しを始めている。

菅首相のリーダーシップが極端になく、言葉に責任感のないことを実感したバッハ会長は、動き始めたようだ。

東京五輪を開催するのに必要なワクチン不足を解消するために、東京五輪を開催しない場合、世界からボイコットされかねない中国に東京に来る選手へのワクチンの提供を交渉して確保した。

中国も東京五輪開催を熱望しているので、了解したようである。このため、選手が北京か東京で接種できるようになった。

しかし、中国製ワクチンを日本は認可しないので、日本人には接種しないようである。海外選手のために準備することになる。この接種のために、中国から多数の医師などがIOCのVIP待遇で来日することになった。

そして、ワクチンの見返りとして、IOCのバッハ会長は、北京五輪ボイコットを抑えようとしている。

もう1つ、日米豪印の「クワッド」で中国に対抗して、ワクチンを世界に供給しようという構想の裏をかけるので、中国にとっては、非常に好都合になる。

途上国にインド製(アストラゼネカ、J&J)ワクチンを日米豪印で共同で供給しているのに、その本家本元である日本では、中国製ワクチンを使うことになるので、何やっているのわからなくなる。お笑い草である。

このため、そのようなことをさせないと、米国が手を打ってきた。中国のワクチンを東京で使わさせないために、今までは米国は自国優先でワクチンを調達してきたが、5月までに米国民全員分のワクチンを確保して、その後、優先的に日本に供給することになるようだ。

アストラゼネカのワクチンはウイルスベクター・ワクチンであり、ファイザーのメッセンジャー(m)RNAワクチンとは違うことで、血栓ができやすいとEUでは拒否が起きている。

日本では、ファイザー製のワクチンでも副作用が出て、徐々に危険性を指摘する声が出てきている。このため、モデルナのワクチンは認可するが、ウイルスベクター・ワクチンの認可が日本では難しい可能性が出ている。

中国のワクチンは、コロナウイルス不活化ワクチンであり、ウイルスの感染力と増殖力を失わせる一方で、人体の免疫反応を引き起こす活性は残した形で作られたワクチンで、ベクターワクチンより危険性が高い。

この中国のワクチンの治験結果を詳細に見ないと、日本での承認は難しい。

ということで、米国製のモデルナとファイザーのワクチンを中心に日本では接種することになる。しかし、河野担当相も6月末までに、1億回のワクチンの確保ができたというが、2回接種のために5,000万人分であり、日本国民全員への接種ができない。

菅首相は、「東京五輪をコロナに打ち勝った証拠として開催する」と宣言したが、現時点では、その有力な武器であるワクチンの確保ができていない。

米国は5月末には米国民全員分のワクチンが確保できるので、他国への供給が可能になる。6月からは優先的に日本への供給を行えることになりそうだ。そして、5月から徐々に日本への供給を増やすことになる。

米国人でも5月にはワクチン忌避の人が残り、なかなか接種に応じなくなるので、5月にはワクチンが余ってくる。その上、このワクチンは2週間しか持たないので、余剰分を日本に回すことができる。

4月に菅首相を米国に呼び寄せて、バイデン大統領から直々にワクチン供給を言い渡されることになると見る。

その代わりに、米海軍との共同作戦への積極参加を依頼されることになる。中国海軍の増強が進み、米海軍だけの攻撃能力では対応ができなくなっている。そのために、攻撃力として自衛隊を使うことになる。

もう1つ、日本を防衛することから攻撃拠点として日本を使うことにもなる。このため、専守防衛から攻撃防衛に日本の安全保障の考え方を変更する必要になる。

ということで、安全保障とワクチンのバーターになるようだ。

この安全保障の国論変更で菅首相では荷が重いので、9月の自民党総裁選挙に立候補せずに、河野コロナ担当大臣を菅首相が後継として指名するのであろう。10月には衆議院選挙であり、その顔をして、英語で喧嘩できる国際的顔として有利な河野さんなら、自民党は勝てる可能性が出る。

菅さんは、官房長官としては稀に見る有能な人であったが、リーダーとしては無理があったようだ。首相になって名官房長官からダメ首相になってしまった。名首相の資質と名補佐官の資質には大きな違いがある。

安倍さんは、世界のリーダー達と渡り合える名首相であったが、ちょっと自分の周辺の人に甘かった。しかし、それでも日本の地位を引き上げた功績は大きい。横に逸れた。

このため、本当は、5月までコロナ流行を抑える必要があり、変異種もあり、流行すると抑えることが難しくなるために、尾身会長も5月まで、緊急事態宣言を延長するしかないと述べている。しかし、問題がある。

それは、5月まで緊急事態を延長すると旅行業と外食企業の苦難が続き、ワタミもサイゼリアの社長も、このままでは飲食業は存続が難しいと述べている。

私も新橋に用事で出かけて、昼、すし店に入ったが、多くの人が複数人で寿司を食べて、マスクもしないで談話をしている。これでは感染が広がりかねないなと思った。

このため、ランチ外食も自粛してほしいとなると、これは外食産業は、やっていけないことになる。私自身、旅行も出かけていないので旅行業界も危ない。この2つの業界が大変なことになる。

外食産業の市場規模は28兆円、国内旅行の市場規模は10兆円の38兆円の半分以上は東京圏にあるので、半分がなくなる危機になっている。JTBなどは資本金1億円まで縮小して、存続を図るようであるが、ホテル業界なども大変なことになっている。

この両業界を助けるために、緊急事態宣言を延長できない。5月にはワクチンが入ると政府は見て、解除するようだ。コロナで衰退した産業を復活させるには、緊急事態宣言を早期に止めて、正常化させるしかないのだ。GoToトラベルも再開するのであろう。

コロナ再流行と飲食・旅行業界の維持とのバランスが必要になっている。ワクチンが期待できる5月までコロナ再流行が起きないことを願うしかないようだ。

東京五輪を開くのも開かないのも、世界的な対立の影響までかかわり、どちらも多くの問題を抱えているようだ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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