3月16日には日本と、18日には韓国との間で共同声明を採択した米国務・国防長官。しかしその内容には看過できない差があるようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、米韓共同声明に「北朝鮮の非核化」という文言が含まれなかった理由を解説。さらに文在寅大統領の従北ぶりを批判的な筆致で記しています。

朝鮮半島の非核化と北朝鮮の非核化

アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が3月15日から18日にかけて日本、韓国を訪問。まず日本では、中国を牽制しつつ、インド太平洋戦略の摺り合わせをやり、北朝鮮の非核化と人権問題、日本の拉致問題などを話し合ってそれらを共同声明に盛り込んだ。

すぐに韓国へ。韓国での外務相+国防相(2+2)会談は4年半ぶりとなった。韓国側は鄭義溶(ジョン・ウィヨン)外交部長官と徐旭(ソ・ウク)国防長官、米国はブリンケン国務長官とオースティン国防長官。4人の長官は3月18日、共同声明を採択したが、声明には両国長官が韓米同盟が韓半島とインド太平洋地域の平和と安保、繁栄の核心軸であることを再確認し、韓米同盟がこれまでになく重要だということで認識を共にしたという内容が盛り込まれている。特に北朝鮮の核・弾道ミサイル問題が両国の優先関心事だとし、北朝鮮に対しては、国連安保理決議を完全に履行することが重要だと強調するにとどまった。

中国・北朝鮮に擦り寄る文政権下の韓国では、共同声明に中国の牽制も北の非核化も盛り込まれなかった。盛り込まれなかったものの、口頭でブリンケン国務長官は、米国は継続して北朝鮮の非核化に焦点を合わせていると明言した。トランプのときは「北朝鮮の非核化」とは言わずに「朝鮮半島の非核化」といっていた。日本の茂木外相は(ブリンケンと同じように)「朝鮮半島の非核化」とはいわず「北朝鮮の完全な非核化」のために国連安全保障理事会決議の完全な実行の重要性を確認したと語っている。この「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」と何がちがうかについて簡潔に書いてみたい。

朝鮮半島の非核化という用語は、1992年1月20日に締結され2月19日に発効した「朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言」から使われた。この宣言は南と北は朝鮮半島を非核化することによって核戦争の危険を除去し朝鮮半島の平和と平和統一に有利な条件と環境を醸成しアジアと世界の平和と安全に貢献するとして下の6項目の合意を行った宣言だ。

南と北は核兵器の実験、製造、生産、搬入、保有、貯蔵、配備、使用をしない 南と北は核エネルギーを平和的目的にだけ利用する 南と北はは核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない 南と北は朝鮮半島の非核化を検証するために相手側が選定して双方が合意する対象に対して、南北核統制共同委員会が規定する手続きと方法で査察を実施する 南と北はこの共同宣言の履行のために共同宣言発効後1か月以内に、南北殻統制共同委員会を構成・運営する この共同宣言は南と北がそれぞれ発効に必要な手続きを経てその文書を交換した日から効力を発生する

これは、南北基本合意書とともに当時の南北の総理が署名したもの。朝鮮半島の南北から、核兵器とそれを製造する一切の施設を除去するということだった。この時点では韓国にも米国の戦術核が配備されていたために、南北の非核化を朝鮮半島の非核化としたことに矛盾はなかった。ところが、この宣言後、韓国に配備されていた米国の戦術核が全て撤去されたために、朝鮮半島の非核化は北朝鮮の非核化を残すのみとなった。そうしたことから朝鮮半島の非核化は、イコール北朝鮮の非核化を意味する用語として使われてきた。

1994年のジュネーブ米朝非核化交渉でも北朝鮮は、南北非核化共同宣言の履行を踏まえたうえで合意し、対価として毎年50万トンの重油の供給や2機の軽水炉建設の支援をうけた。2002年、北朝鮮が秘密裡に濃縮ウラニウムを製造していたことが発覚して一連の支援は中断されるのだが、北も核拡散防止条約から撤退し抵抗した。

その後2003年から始まった6か国協議でも、朝鮮半島の非核化はイコール北朝鮮の非核化の意味として使われていた。それは北朝鮮が6か国協議の対価として、経済支援や対北朝鮮不可侵条約および米朝国交正常化などをもとめていたことからも明確だ。ところが北は「東方の核大国に輝く」と宣言した2016年5月の朝鮮労働党7回大会直後に、この朝鮮半島の非核化の定義を根本的に変更した。2016年7月6日に北は政府声明で、朝鮮半島の非核化を、朝鮮半島周辺の米国の核の傘や駐韓米軍の撤退などを含めたものとして発表したのだ。そこには北が核保有国として、非核化交渉を核軍縮として転換する意図が盛り込まれていた。北朝鮮が新たに規定しなおした「朝鮮半島の非核化」の内容は以下。

韓国にあるアメリカの核兵器を全て公開し、 韓国から全ての核兵器とその基地を撤廃して検証し、 朝鮮半島とその周辺に核兵器を再び展開せず、 北朝鮮に核の脅威を与えたり使用したりしないことを確約し、 在韓米軍の撤退を宣言する。

これらの行動をとれば北朝鮮もそれに見合った行動をとると。こうして北は、6か国協議までに使われてきた「朝鮮半島の非核化=北朝鮮の非核化」という定義とは根本的に異なる「朝鮮半島の非核化=米国との核軍縮」とする用語を使い始めたわけだ。つまり、金正恩が朝鮮半島の非核化をするということは、米国を相手に「お前も核の縮小をせよ、俺も核を縮小するから」という意味となるのだ。北朝鮮の非核化とは本来、北にある核兵器や核製造など一切合切なくすという意味だが、朝鮮半島の非核化というのは、全く違う意味(生ぬるい意味)になるわけだ。

トランプ政権はこの変化を知らなかったのか、文政権による嘘(金正恩は北朝鮮の非核化を決意した)に騙されたのかはわからないが、北朝鮮が使う「朝鮮半島の非核化」の意味を深く吟味もせず、2018年6月の米朝首脳会談に臨み、朝鮮半島の完全な非核化に努力する云々の文言を込めた米朝シンガポール声明に署名したのだ。決裂となったハノイでの第2回米朝首脳会談の実務協議では、朝鮮半島の非核化の意味をめぐって米朝実務者間で激しく議論が戦わされたという。

この経緯についてアンドリュー・キム米国CIAコリアミッションセンター長は、2019年3月20日、ソウルでの講演で「朝鮮半島の非核化」概念が北と米国との間で大きく異なっていた、北朝鮮はグアム、ハワイなど米国の戦略資産をなくさねばならないと主張したと明らかにし、北朝鮮は明確な非核化の定義は拒否し、事実上米国の核の傘除去とインド太平洋指令部の無力化を要求したと述べた。キム前センター長が明かした米朝実務陣のやり取りをみると、トランプ政権は朝鮮半島の非核化を6か国協議の延長線上で北朝鮮の非核化と理解していたが、北朝鮮は核軍縮の概念で米国に迫っていたということだ。

今回、日米共同声明には朝鮮半島の非核化ではなく「北朝鮮の完全な非核化」という明確な表現が入っていたが、3月18日の韓米共同声明には「北朝鮮の非核化」ということばはなかった。キム・ヨジョン党副部長から一喝されたために入れなかったと思われる。キム・ヨジョンが怒れば、シュンとなって尻尾を丸めてしまうのが今の文政権だ。米国のある放送局は、北と外交交渉を続けようとしている韓国政府は、北朝鮮の非核化という用語を拒否するだろうと予測していた。その通りになったわけだ。

昨年の大統領選時にバイデンが、金正恩を、独裁者、暴君と表現している。米はあくまで北朝鮮にCVID(完全かつ検証可能で後戻りできない核の放棄)、つまり完全な非核化を求めている。バイデン政権が動き出した米国(あれだけの不正をして大統領となったことは一旦おくとして)。今後の米、北、韓国、日本そして中国の動きから、目の離せない時代(とき)を迎えている(今回はYouTubeチャンネル朴斗鎮TVを参考にさせていただいた。感謝)。

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