4月に出された慰安婦の損害賠償請求却下の判決に続いて、韓国でまたも衝撃的な司法判断がなされました。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、6月7日にソウル地裁が下した徴用工の訴え却下に対する国民の反応等をレポート。さらにこの判決に透ける文在寅大統領の「思惑」を紹介しています。

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「却下」判決のあとと北のこと

本当は6月10日の予定だったが前倒し的に6月7日午後2時にソウル中央地裁558号法廷で民事合議34部の金良鎬(キム・ヤンホ)裁判長が、日帝強制徴用被害者及び遺族が日本企業を相手取って起こした損害賠償訴訟を「却下する」と宣告した。

原告らにも、予定より先に判決を言い渡すとは伝えられていなかったようだ。こういうことが韓国では起こりうるのだ。こういう、禍根を残すようなやりかたではやってほしくなかったものを。常識に立脚した立派な判決なのに、またあちこちからつつかれる余地を残してしまっている。青瓦台の掲示板にはこの判決を批判する文章が掲載され、1日ですでに基準の20万人を遥かに越えてしまった。

与党代表のソン・ヨンギル氏は、「まるで京城時代の判決を聞いているようだ」などとコメントしている。余談になるが、ソウルは昔の日本統治時代には「京城(ギョンソン)」といっていたことによる。東京帝大とか京都帝大などと同じようにソウルに京城帝大が設けられていた。ソウル大の前身だ。立派な研究者(教授)が多かったようだ。筆者は言語学などを専攻していた関係で知っているのだが、言語学界ではもっとも有名な本の一つと言ってもいいソシュールの『一般言語学講義』を世界(日本国内ではなく)で一番早くその翻訳本を出したのがここ京城帝大だったということだ。チュ・ミエも今回の判決に対して猛批判のコメントをSNSにあげている。彼女ならやりそうなことだ。

しかしなぜこんなにも突飛な判決が今出されたのだろうか。日本人としては、歓迎の判決なのだが、無条件に喜んでばかりもいられまい。またすぐ覆される可能性があるということでもあるわけだからだ。

それでもまあレームダック状態の文政権下での判決としては、「なるほど、やっぱりな」という見方もできるかもしれない。来年の任期終わりまであと数か月しか残っていない文政権としては、なんとか最後にデッカイことをやりたいことは明らかだ。文政権の唯一の関心事であるのは、北朝鮮。この北を、つまり金正恩をなんとか動かして、対話するなり、電話会談をするなり、したい。北を動かすためには米が動いてくれないとなにもできない。米を動かすためには日本に助けてもらわないとにっちもさっちもならない。

純粋に「日韓問題」を解決しましょうという気持ちというよりは、北をなんとかしたいから、日本にも協力をあおぐ、という観点から文在寅氏は最近は、日本に対してなんとなくかなり迎合的だ。今年1月の慰安婦判決では裁判所が、慰安婦たちの言い分を認めて日本に「賠償せよ」との判決を出したのに、すぐその後にあった文の年頭記者会見の場では「今回の判決にちょっと困惑している」との発言をし、#317号でもお伝えしたように、4月の慰安婦判決では、まさに1月の判決とは真逆の判決が言い渡された。

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文在寅氏の思惑通りの判決といっていいだろう。裁判所と大統領府がずぶずぶだなどとは言いたくはないが、結果を見るとそうとしか思えないのが現在の韓国の状況だ。三権分立はどこにいってしまったのだろうか。

そして今回6月7日の徴用工判決。2018年の大法院判決をまたまた180度ひっくり返した判決が出された。大統領府の顔色を見てこんな判決を出したのではなく、裁判官が自分の仕事に忠実に従った結果の判決なんだ、ということであってほしいところだが。徴用工の銅像なども作り(実はあの像は、徴用工となった韓国人がモデルではなく、炭坑で働く日本人がモデルとなっていることが証明されているのだけれど)、「ひどいことをする日本人」のイメージをこれでもかというくらいに造成していった流れがあったが、今、その原告らの言い分を却下する判決を、ソウルの裁判所は出した。法と常識に則った判決なのだが、上述のように、判決をめぐっての逆風が吹き荒れているのが現状だ。日々に「正義連」などの反日団体らが主導して、今回の判決に対する猛攻撃を繰りかえしている。どうなっていくかは今のところ誰にもわからない。(無料メルマガ『キムチパワー』2021年6月11日号より一部抜粋)

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