北朝鮮において「絶対権力」を持つとされている金正恩総書記ですが、ここに来て新たな証言が注目されています。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが、「北朝鮮の政治体制が変化した」と語る前駐平壌ドイツ大使のインタビュー内容を取り上げるとともに、その証言を裏付けるかのような、拓殖大学主任研究員による「金正恩操り人形説」を紹介。さらに金総書記が自らの不養生によって、いま手にしている権力を剥奪される可能性についても指摘しています。

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金正恩政権は安泰か?それとも崩壊か?

6月22日に金正日政権と金正恩の継承初期の8年間を平壌で勤務した、前駐平壌ドイツ大使のトマス・シェファー氏が、RFA(自由アジア放送)のインタビューに応じ、「北朝鮮の政治体制が変化した」と主張した。

同氏は「北朝鮮の政治権力は、金正恩単一体制ではなく、ごく少数エリートたちの集団指導体制である」という。つまり、北朝鮮を統治する集団は、少数家族で構成された党内の安保部門の責任者たちで、彼らの強硬派が金氏一家を前面に出し軍部エリートと政治的取引で金正恩体制が誕生したという。この権力世襲の過程の後、強硬派と穏健派の間で権力闘争が絶え間なく展開されているというのである。

このようなトマス・シェファー氏の指摘に対し、拓殖大学主任研究員の高永チョル氏は、「金総書記は実権を党と軍部に奪われた“操り人形”ではないか」(世界日報)と指摘し、トマス・シェファー氏の発言内容を裏付けている。

高氏によれば、「今年1月9日、朝鮮労働党第8回大会で改正された党規約が最近、明らかになった。新たな党規約の特徴は、金日成・金正日の個人名が削除された点である。『敬愛する最高指導者』と呼ばれる金正恩総書記の名前は、新しい党規約には一度も登場していなかった。『党員は偉大な金日成同志と金正日同志を永遠なる主体の太陽として高く崇目、敬愛する金正日同志の領導を忠実の情をもって奉じていかなければならない』という『党員の義務』条項も削除された。北朝鮮では、党規約が憲法より上位にあるので、これは大変な出来事だ」

新しい党規約で、祖父と父親と自分の権威が貶められたにもかかわらず、現職の金総書記は受け入れざるを得なかった。不思議である。なぜか。そこで浮上しているのが、先に紹介した「操り人形」説である。

さらに金正恩政権崩壊を示唆するものとして、第8回党大会で改正された党規約の中で、「党中央委員会全員会議」に関する項目で、第1秘書(書記)の職制が新設され、「党中央委員会の第1秘書は、朝鮮労働党秘書(金正恩)の代理人である」と規定した部分である。ここで言う「代理人」とは、金正恩が仕事を遂行できない時、彼に代わって統治する人物のことである。

代理人に驚くのは、1984年生まれで37歳の金正恩が、後継者を考えるべき年齢ではないことである。それにもかかわらず金正恩は「死」を意識しているのだろうか。まさに魑魅魍魎の世界である。

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この機に及んで、今度はまたもや金正恩の健康不安説が飛び交っている。6月8日に米国の北朝鮮専門メディアのNKニュースは、1ヶ月ぶりに動静が伝えられたき金正恩の腕時計の皮ベルトの余りが長くなっていることを指摘し、金正恩の体重急減を報じた。しかし、公開された報道写真を見る限りにおいては、確かにやや痩せたようには見えるが、激やせの類ではないが、世界のメディアは、これをもって「金正恩健康不安説」を流し始めたのである。

金正恩の父親の金正日が脳卒中で倒れた後、それまでのお腹を突き出した肥満体とは異なる激やせした姿で登場したが、当時68歳の金正日は皺(しわ)だらけになった老衰姿で、その後に亡くなった。息子の金正恩も同じ運命をたどるのではないかという観測もあったが、それはなさそうだ。だが、金正恩の健康不安は、北朝鮮にとって最大のウイークポイントと言われているので、操り人形が自らの不養生によって、権力から引きずり落される事態が来ないとも限らない。金正恩の今後の動向に目が離せない。

次号では北朝鮮のコロナ騒動について述べる。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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