「生命科学の革命」とまで言われる、人間の手により遺伝子を改変するゲノム編集ですが、人類にとって諸刃の剣であることは否めないようです。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、昨年7月に読売新聞がゲノム編集を取り上げた記事を深堀りし詳しく紹介。そこから明らかになったのは、ゲノム編集と軍事技術の切り離して考えることができない深い関係制でした。

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ゲノム編集と軍事利用を新聞はどう報じたか?

「ゲノム編集」に関する記事がありました。人への応用に関わる研究を登録制にしようという動きです。

《読売》のデータベースでは、サイト内、紙面掲載記事の双方に60件ほどの記事。このうち、サイト内の1年以内のものに限るとおよそ40件になりました。

この中から、きょうは重要と思われる1件の記事を取り上げます。

【フォーカス・イン】

まずは今朝の《読売》2面の囲み記事。見出しと【セブンNEWS】第5項目の再掲から。

ゲノム編集研究「登録制に」
WHO諮問委
通報制度推奨

遺伝子を効率よく改編する「ゲノム編集」の人への応用につき、世界保健機関(WHO)の諮問委員会は、国際的なデータベースに研究内容を登録して確認する仕組みの導入を求める報告書を公表。安全性に懸念があるなど不適切な研究を通報するシステム構築も推奨。

以下、記事の概要の補足。ゲノム編集には、遺伝病治療などに期待がある一方、安全性や倫理的な問題がある。特に、中国の研究者がゲノム編集で受精卵を改編して双子を誕生させた問題を受け、WHOの諮問委で対策についての議論が進められてきた。

●uttiiの眼

中国に限らず、“野心家”の研究者は、ゲノム編集を制限する「登録制度」や「通報制度」を邪魔に感じることだろうが、全くのノーブレーキでこの種の研究を進めるのは危険極まりないことだと思う。

ただ、登録制の導入提案につながったのは中国人研究者の「双子」の事例。もしも米中間のデカップリングがこうした研究の世界でも進行してしまうと、提案されたような国際的な制約から免れたところで、“野心的”な研究が進められてしまう危険もあるだろう。同様の危険は米中双方で、あるいは日本を含むその他の先進国にも存在すると思われる。

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【サーチ&リサーチ】

* およそ1年前、昨年7月に「安保60年」と題する一連の特集記事のなかに、「バイオテロ」についての記述があった。

2020年7月22日付
タイトル「[安保60年]第3部 新たな戦闘領域<3>五輪 バイオテロの脅威」の記事中、以下の記述に注目。

「米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA ダーパ)は、軍用技術の開発で戦後、一貫して世界をリードする存在だ。そのDARPAが現在、力を入れているのが、遺伝子を改変する「ゲノム編集技術」の悪用から社会を守る最先端の技術開発だ。『敵のゲノム編集攻撃をブロックする技術や、遺伝子を書き換えられてしまった時に元に戻す技術を研究している』」と。

* 「遺伝子を改変する『ゲノム編集技術』の悪用から社会を守る最先端の技術開発」と言っているが、これを素直に受け取る人は少ないだろう。それより先にDARPA自身が、「ゲノム編集攻撃」の研究開発を行っているはずだからだ。ともあれ、こうしたことの背景には、「ゲノム編集技術の飛躍的な進歩で、人工的にウイルスを作製することが容易になった」ことがある。

「専門家の間では「ゲノム編集を行うウイルスを作製し、特定の人種の遺伝子配列を書き換えるように攻撃することが可能ではないか」という認識が広まっているという。外務省の補助金を受けて未来工学研究所が3月にまとめた報告書は、敵が自国内で、超人的な能力を持った兵士やテロ攻撃を命令通りに行う「サイボーグ兵士」を誕生させ、戦闘に投入する可能性も指摘する。」

* 何やら、陰謀論めいてくるが、大真面目に議論されている理由は、やはり2018年に中国の研究者が遺伝子を改変した双子を誕生させてしまったことがあるようだ。

* そして、「武漢ウイルス研究所が欧米で感染拡大しやすいウイルスを人工的に作製していたのではないか」という話につながっていく。勿論、新型コロナウイルスの起源を巡る話だが、武漢研究所は米国の資金援助で作られた研究所であり、密かに人工のウイルスを作成することが可能なのかどうか、そもそも判然としない。しかし、米国はバイデン政権になっていよいよこの議論に依拠し、中国を激しく非難しているのは周知の通りだ。ここから《読売》の記事は、「日本」に関わるものになっていく。

「米軍にはアジア系人種の医療データが比較的少なく、米国防総省には、日本と医療データを共有したい意向がある」という。

* 「医療データの共有」と言えば聞こえは良いが、これは日本人の遺伝情報のサンプル(血液あるいはDNA)を大量によこせ、と言っているものと解釈した方が良いだろう。その情報はどのように軍事利用されるのか…。

* 2015年、島尻安伊子沖縄・北方相がワシントンを訪れた際、米軍の医療関係者から「日本と組みたい」と言われ、沖縄県の米軍施設跡地に新薬の研究開発拠点などの医療施設を作り、日米で医療データの共有を進める計画を進めることに。

「最先端の治療薬やワクチンの研究は生物兵器の技術と表裏一体で、軍事と民生の双方で技術を活用できる「デュアルユース」の典型だ。例えば、特定の人種に効く薬を作る技術は、特定の人種をターゲットにした毒薬を作る技術にも通ずる。」

* この計画は頓挫する。立ちはだかったのは、日本学術会議だった。

「理由の一つは、国内科学者の代表機関・日本学術会議が軍事目的の科学研究を否定しているためだ。戦時中に旧日本軍の731部隊が細菌戦や人体実験を行った過去がいまだに影響し、医学界は一般的に防衛省との連携に後ろ向きだという事情もある。政府関係者は、『バイオテロに備えた防衛医大の医療研究すら許さないという雰囲気がある』と首をかしげる。防衛省関係者もこう危機感を口にする。

「デュアルユースにつながる研究をタブー視していては、国民を守る能力も育たない」」と。

●uttiiの眼

ゲノム編集は軍事技術に連なっている。

新型コロナウイルスの出現についても、軍事研究を背景に見る見方が出てくるのは、米国を先頭に、中国やロシアでも、ゲノム編集を軍事利用できないか、日々躍起となっているからではないのか。「軍事頭」が見れば、新型コロナウイルスは「兵器」そのものに映るに違いない。

記事を読む限り、米国から見た日本は、中国人と似かよったゲノムを持っているはずの1億人の人間集団であり、中国人をDNAレベルで攻撃する際の標的を発見するためのサンプル提供者…といった位置付けだろうか。

学術会議の軍事研究拒否の姿勢は、学問研究分野で「憲法第9条」のような役割を果たしていることが分かる。防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度に関わる問題に加え、学術会議会員の任命拒否の問題も、根っこは「デュアルユース」の解禁を目指す政権の動きと関係があるのではないか、私はそう思っている。

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