ミサイル発射を繰り返す北朝鮮。15日には「鉄道機動ミサイル連隊」による発射訓練を実施し、その映像のインパクトに日本のメディアも大きく取り上げ脅威を伝えています。しかし、この訓練の映像に金正恩総書記の姿はなく、指導したのは朴正天党政治局常務委員兼書紀とのこと。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』著者で北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんは、前回の「金正恩が北朝鮮人民軍の統帥権を喪失か?疑惑を裏付けるこれだけの証拠」に続き、建国パレードで激ヤセした金正恩氏を見るナンバー2の表情など、軍の統帥権を失ったことを裏付ける見方を示しています。

北朝鮮のミサイル開発に日本はどう動く?疑惑の金正恩「ある一瞬」

前号で「金正恩総書記は軍の統帥権を喪失か」と説いたが、最近の党と軍の権力闘争と金正恩(キム・ジョンウン)総書記の動静が気になる。9月7日に李炳哲(リ・ビョンチョル)と一緒に元帥から次帥に降格された朴正天(パク・ジョンチョン)が政治局常務委員兼党秘書として復活し、党中央軍事委員会の副委員長だった李炳哲は軍需工業部長に復活していたが、その地位も劉進(ユ・ジン)に譲り権力闘争に敗れたようだ。党組織指導部出身が主要権力を押さえる様相を呈してきた。

北朝鮮は9月9日未明に建国73年記念パレードを実施したが、民間防衛組織の労農赤衛軍などがパレードし、弾道ミサイルなど戦略兵器は登場しなかった。また、金正恩総書記は出席したが、演説は李日煥(リ・イルファン)書記が行った。李日煥書記は「一心団結の威力で難局を打開し、社会主義建設の激変期を開いていく」と訴えた。

壇上には金正恩総書記とともに、最近選出された朴正天政治局常務委員らが並んだが、軍が出ないため、武器も民防衛のもので、さらに驚くべきことに党組織秘書(書記)の趙甬元(チョ・ヨンウォン)が部隊を閲兵した。このことは、趙が金正恩に代わり事実上全権を掌握したのではないかと思わしめることになった。

しかも、壇上に登場した金正恩は「専門家でない普通の人々の目にも別人とわかる粗野な影武者」と言われるほどの人物であった。マスコミは早速、この日登壇した金正恩とこの日以前の金正恩の顔写真を比較して、「偽者だ」「そうではなく本物に間違いない」と、識者のコメントを報じていた。壇上で手を振ってこたえる仕草や、要人連中との挨拶の動作などを見ていると、「まさにいつもの金正恩」か「金正恩そっくり」と判断に迷うところであった。

映像では、この金正恩を見る崔竜海(チェ・リョンヘ)の顔が瞬間的に映し出されていたが、「畏敬もない無表情」の姿であったようなのが気になった。

北朝鮮は9月11日、12日両日に新型の長距離巡行ミサイルの試験発射を「成功裏に行った」」と報じたのに続き、15日には内陸の平安南道陽徳郡付近から日本海に向け短距離弾道ミサイルを発射し、800キロ・メートル先の日本海域の標的を「正確に打撃した」と伝えたが、このミサイル発射実験に金正恩総書記は立ち会わず、朴正天党政治局常務委員兼書記が発射訓練を指導した、という。

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しかも、この時のミサイル発射は「同時多発的な集中能力を高めて対応能力を向上させるため」に「鉄道機動ミサイル連隊」を組織し、通常の車両を用いた移動式発射台ではなく、鉄道を利用した発射台で、今回初めて実戦的な訓練を実施した。

朴書記は鉄道を利用したミサイル発射システムが「全国各地で分散的に任務を遂行することで、同時多発的に脅威となる勢力に甚大な打撃を加えることができる効果的な対応打撃手段となる」と評価。今後、短期間で実践的な訓練を積み、「連隊」から「旅団」への拡大も検討する考えを示しており、ミサイル発射の実験は、今後も続くことを示唆した。

鉄道網を活用したミサイル発射実験は、旅客列車に偽装しやすく、既存の列車を利用すれば移動式発射車両を多数配備するより安上がりという利点がある一方、爆撃で線路が寸断されれば役に立たなくなるという弱点もある。

いずれにせよ、北朝鮮は今年1月の党大会で「弾道威力が世界を圧倒する新型戦術ロケットや中長距離巡行ミサイルをはじめ、先端核戦術兵器を相次ぎ開発し、頼もしい軍事技術的強勢を堅持した」と主張。「国防科学発展および兵器システム開発5か年計画」を示し、9月9日の閲兵式でも「戦争抑止力目標の達成」を強調した。

朴正天党書記は、15日の試射を現地視察して「国の防衛力、戦略抑止力を許可する事業に一層邁進すべきだ」とも述べた。まさに有言実行の核・ミサイル開発を着実に実行している北朝鮮の脅威に日本はなす術を知らないのが現状だ。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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