9月11日の新型長距離巡航ミサイルの試験発射を皮切りに、一月に4回ものミサイル発射に及んだ北朝鮮。しかし同国によるミサイル開発の「一番の被害者」となりうる韓国の文在寅大統領は一切の非難をすることもなく、傍観を決め込んでいます。この反応を批判的に綴るのは、北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さん。宮塚さんは自身のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で今回、北朝鮮のミサイル開発の実態を詳しく紹介するとともに、文在寅大統領の姿勢を「万事休す」と一刀両断。さらに岸田首相の対応への期待感を記しています。

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北のミサイルをスルーする文在寅。どうする岸田新総理?

9月は農作物の成育にとって重要な季節である。北朝鮮は、昨年のこの時期に相次ぐ台風被害に見舞われ、深刻な食糧不足の事態を招いたが、今年はその台風被害の憂慮もなく、代わりにミサイル連射に邁進した。

9月9日の未明、建国73年の記念日を迎え平壌の金日成広場で「民間・安全武力閲兵式」として、非正規軍部隊を中心にした軍事パレードを実施したが、新型ミサイルなど戦略兵器の登場はなかったことに「今回は新型戦略兵器は登場せず、米国などに向けた軍事的挑発を避けた」とマスコミなどは報じた。

しかし、このような分析をあざ笑うかのように11日、12日に、北朝鮮の国防科学院が「新型長距離巡航ミサイルの発射実験を行った」と朝鮮中央通信が報じた。低空を航空機のように飛行する巡航ミサイルは、水平線の向こう側をカバーできないレーダーでは早期発見が難しいとされている。1,500キロメートル飛行し目標に命中したというから、事実ならば射程内に入る日本にとっては「対岸の火事」と傍観しているわけにはいかない。

さらに15日には、北朝鮮は短距離弾道ミサイル2発を相次いで日本海側に発射した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は、日本海に向けて変則軌道の新型短距離弾道ミサイル2発を発射した3月25日以来である(3月には4発のミサイル発射が行われた)。

15日に発射されたミサイルは形状からして、3月25日に試射したのと同じ短距離弾道ミサイルの改良型とみられる。だが、発射訓練を指揮したのが、核・ミサイル開発を主導してきた李炳哲(リ・ビョンチョル)氏ではなく、朴正天(パク・ジョンチョン)朝鮮労働党書記であり、「鉄道軌道ミサイル連隊」が中部山岳地帯の列車発射台から発射したものであった。

朴氏は砲兵司令官出身で、これは軍の重心がより実践的な段階に移ったことを示したものだろう。北朝鮮は敵への「同時多発的な集中打撃能力」を高める目的で、「鉄道軌道ミサイル連隊を組織した」と明らかにした。朴氏は鉄道を利用したミサイル発射システムが、「全国各地で分散的に任務を遂行することで、同時多発的に脅威となる勢力に甚大な打撃を加えることができる効果的な対応打撃手段になる」と評価。今後短期間で実践的な訓練を積み、「連隊」から「旅団」への拡大も検討する考えを示しているという。

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国連安全保障理事会は15日午後(日本時間16日午前)、北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射を受け、非公開の緊急会合を開いたが、安保理としての声明を出すには至らず、北朝鮮のミサイル開発を抑制する強いメッセージを国際社会が一致して打ち出すことはできなかった。

おりしも韓国では、この15日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験が行われ、3,000トン級潜水艦から発射したSLBMを目標に命中させた日でもあった。朝鮮中央通信によると、北朝鮮の国防科学院の張昌河(チャン・チャンハ)院長は20日、韓国が15日に試射したSLBMについて「水中武器とは程遠い、形も整っていない不十分な武器に見えた」と分析した文章を発表した。北朝鮮が韓国のSLBM発射実験直前に短距離弾道ミサイルの発射訓練を行っており、韓国のSLBM開発への牽制(けんせい)であったとの見方もある。

この2日後の22日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国連総会で、「終戦宣言」に言及したが、北朝鮮のミサイル発射には言及しなかった。韓国が最も北朝鮮からのミサイル攻撃の標的となっているにもかかわらず、この大統領は、北朝鮮の核・ミサイル開発には傍観を決め込んでいる。金与正(キム・ヨジョン)氏は、珍しくこの大統領発言を罵(ののし)るどころか「終戦宣言といった問題を意義のある形で解決する機会を与えてやる」との談話を発表したというが、内心はほくそ笑んでいるだろう。

北朝鮮は28日朝に、慈江道から日本海に向け、新型とみられる短距離ミサイル一発を発射したが、極超音速ミサイルとみられ、従来のミサイル防衛網では迎撃が困難とされている。さらにその2日後の30日に、北朝鮮の朝鮮中央通信が、同国の国防科学院が新たに開発した「対空ミサイルの発射実験を行った」と10月1日に報じた。9月だけで4回のミサイル発射である。

この10月1日は、韓国の「国軍の日」にあたり、文在寅大統領は記念式典で演説し、自国の国防力の増強について強調しながらも、北朝鮮のミサイルに関しては、またもや触れなかった。万事休すである。日本国民は北朝鮮の核・ミサイル攻勢にただ慄(おおの)いているだけにはいかないだろう。岸田文雄新総理はどのように対処するのか期待するのみである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

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