各国、各企業で開発競争が繰り広げられている量子コンピュータは、その実用化と同時に現在使用されている暗号化データを無力化する可能性があるようです。来るべきその時に向けて、「中国の脅威」が高まるとする報告書が注目を集めていると伝えるのは、軍事アナリストの小川和久さんが主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の共著者である静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授の西恭之さん。量子コンピュータが実用化される2030年代でも価値がありそうなデータを収集するために、中国による不正アクセスが増える可能性が指摘されているなど、国家や企業はデータとインフラを守るために今から行動する必要があるとの警告について詳しく解説しています。

※本記事は有料メルマガ『NEWSを疑え!』2021年11月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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報告書『量子時代の中国の脅威』の衝撃

米国のコンサルタント会社ブーズ・アレン・ハミルトンはこのほど、量子コンピュータ時代のセキュリティには今から取り組む必要があるとの報告書を公表、注目を集めている。実用化はまだ先とはいえ、量子コンピュータは潜在的に新たなサイバー脅威となっており、企業などの最高情報セキュリティ責任者(CISO)は、データとインフラを守るため今から行動する必要があるという趣旨だ。

報告書の題名は『量子時代の中国の脅威』。量子コンピュータ開発の先頭集団にいる中国が、実用化されれば直ちに解読できるように、米国などの暗号化データの収集を近いうちに始めると予測している。同社の脅威インテリジェンス、サイバーセキュリティ・リスク管理、量子情報科学の専門家の知見を集めてレポートされている。

量子コンピュータは2020年代のうちに、ある種のシステムのモデリング能力で在来型コンピュータを上回り、医薬品や高性能材料の開発を加速するようになるという予測が一般的だ。

報告書『量子時代の中国の脅威』によると、そうした量子シミュレーションに入力するデータが、中国の経済スパイの標的になっていくという。中国の量子コンピュータは、おそらく2030年代まで既存の暗号化データを解読できないと思われるが、「インテリジェンスとしての寿命の長い暗号化データ」を、解読が可能になるまで所持する目的で行う不正アクセスが増えるおそれがあるという。この種のデータには、生体認証情報、秘密の情報源の身元情報、国民識別番号、兵器の設計などが含まれる。

ブーズ・アレン・ハミルトンの戦略サイバー脅威インテリジェンス責任者のネイト・ビーチ=ウェストモーランド氏は、IT政策ニュースサイト「ネクスト・ガヴ」の取材に対し、「10年以内に量子コンピュータの脅威を受ける組織は少ないかもしれないが、ポスト量子暗号(量子コンピュータでも解読できない暗号)など重要な対策も10年以上かかるので、今から戦略を策定して資源を割り当てなければならない」と指摘している。

報告書はCISOに対し、1)敵にとっての自組織の資産の価値を、量子コンピュータがどのように変えるのかという脅威モデリングを行い、2)ポスト量子暗号化の実施戦略を策定し、3)戦略的奇襲を防ぐため、内部の人員に量子コンピュータについて教育し、新たな動向について継続的に教えること、を提言している。

さらに、ビーチ=ウェストモーランド氏は、この対策を官庁や企業で推進し、米国の経済的利益と安全保障上の利益を守るため、米政府の関与を求めている。(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)

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初月無料購読ですぐ読める! 11月配信済みバックナンバー 2021/11/22 『NEWSを疑え!』第1007号(2021年11月22日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・F-35Bの地中海墜落で英米が回収を急ぐ理由
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・台湾有事、米報告書の読み方(小川和久)

2021/11/18 『NEWSを疑え!』第1006号(2021年11月18日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆明治7年、日本は台湾に出兵した
 ◆日本資本主義の父・渋沢栄一
 ◆きっかけは漂流民大量殺害事件
 ◆台湾出兵で明治の日本が得たもの
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・インドは「2070年CO2排出実質ゼロ」を達成する
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・意味不明な松野官房長官の核先制不使用への反対論(西恭之)
◎編集後記
 ・頑張れ、宇宙作戦隊!

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆千葉県警に女性本部長誕生!日本警察のいま
 ◆能力も人柄も素晴らしい田中俊恵警視監
 ◆犯罪の国際化に対応できているか
 ◆テロ・サイバーに大きな課題
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・移民・難民を使うベラルーシのハイブリッド戦
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・台湾侵攻に100万人が必要な理由(西恭之)
◎編集後記
 ・海洋国家の自覚なしに海洋権益は守れない

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米国防総省は中国が核燃料サイクルを軍事転用すると想定
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・政治家の発言でわかる防衛省・自衛隊のレベル(小川和久)

2021/11/04 『NEWSを疑え!』第1002号(2021年11月4日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆アフガン退避失敗!!海外安全問題を考える
 ◆〝決心〟できなかった日本政府
 ◆またも飛ばなかった政府のビジネスジェット
 ◆中国はリビアで4万人以上を逃がした
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・説得力に欠ける米政府のコロナ起源報告書
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・米空母は中国との差を維持できるか(西恭之)
◎編集後記
 ・台湾有事への米海軍の見積もりは疑問

2021/11/01 『NEWSを疑え!』第1001号(2021年11月1日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米空軍AWACS後継機はE-7か?
(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・セッティング・ナショナル・プライオリティーズ(小川和久)

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