今年8月、アフガニスタンでの邦人救出劇において、その後手の対応が大きな批判を浴びました。再び同じ失敗を繰り返さないようにと、12月13日の国会で岸田文雄首相は海外での危機対応として、在外邦人の安全を確保するために自衛隊法改正の検討をすると明言。果たして、この改正はスムーズに進むのでしょうか。今回ご紹介する無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、元空将が防衛体制の早急な見直しについて言及しています。

アフガン救出失敗から見えてくる日本の現実

今年1年の世界を振り返る時、8月15日、アフガニスタンの首都カブールが、イスラム原理主義勢力・タリバンに制圧されたことは衝撃的な出来事として人々の記憶に焼きついています。この時、現地の日本人を救出するための日本政府の対応は後手に回り、大きな批判を浴びました。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。元空将の織田邦男氏に登場いただいた『致知』12月号の連載「意見・判断」の一部を紹介します。

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いまの日本は危機に的確に対応できる体制になっていない。戦争といえば、宣戦布告をして華々しく戦闘が始まるイメージがあるが、世界はいま、平時と有事の区別がつきにくいグレーゾーンの戦いに入っている。

7年前、クリミア半島がロシアに侵略された時は、現地の人が朝起きるとインターネットもテレビも通じなくなっており、政治経済の中枢やメディアなどの施設は、国籍の分からない軍(後でロシア軍と判明)に占拠されていたという。

ロシアが戦いの参考にしているのは、中国の掲げる「超限戦(ちょうげんせん)」だろう。超限戦というのは、軍事力だけでなく、外交、経済、心理、世論なども含めたあらゆる非軍事的手段を駆使して戦いを仕掛けるのである。

その中国は、日本の尖閣諸島にグレーゾーンの戦いを仕掛けてきている。彼らは今年、海警局の船が武力行使を可能にする海警法を改正した。つまり、軍を出さずに日本の領土を奪える体制を着々と整えているのである。

ところが日本では、グレーゾーンの戦いにどう対応するかという議論すら起こらない。国民の皆様にはよく認識しておいてほしいことだが、いまの日本の法律の下では、自衛隊は防衛出動が下令されない限り警察権しか行使できず、軍としての自衛権行使ができない。

いざ事が起こってから、国会で防衛出動の可否を議論しているようではとても国を守れない。平時か、有事か判断し難い状況下で、自衛隊が速やかに対応できるよう、早急に法律を見直す必要がある。

日本は先般、有事法制や安全保障法制を実現し、一部限定的な集団安全保障体制を整えたが、これはようやく冷戦時の戦いに対応できる体制が整ったに過ぎない。 世界の現状に対して、日本は周回遅れの位置にいることを自覚しなければならない。

国民に求められるのは、軍事に対する理解である。いまの日本では大学で軍事を教えることがタブーになっている。私の後輩は現在某国立大学で教鞭をとっているが、着任の際に軍事研究をしないことを約束させられたという。日本には軍事に対するアレルギーがある。しかし、軍事を知らずに国の安全を守ることはできない。

軍は、平和を維持するために利用するものという発想に切り替えてほしい。平和は与えられるものではなく、勝ち取るものである。このことを心に刻み、日本の防衛体制が早急に再構築されることを願って止まない。

(本記事は月刊『致知』2021年12月号連載「意見・判断」から記事の一部を抜粋・編集したものです)

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