新年早々、4度もミサイルを発射した北朝鮮。弾道ミサイルの性能の向上が伝えられ、17日の施政方針演説で岸田首相は「敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と危機感を表明しました。こうした政府やメディアの反応に、「うろたえるな!」と諭すのは、軍事アナリストの小川和久さんです。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』で小川さんは、もし北朝鮮が1発でも日本や韓国にミサイルを打ったらどのような事態が起こるか、米韓の反撃について具体的に言及。そうしたなかで日本が担う役割を整理し、本当に必要な備えがあるはずだと訴えています。

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極超音速ミサイルでうろたえるな!

今年になって北朝鮮が次々と新型ミサイルを発射し、日本国内でも危機感を持って受け止める向きも少なくないようです。

「岸信夫防衛相は12日、北朝鮮が11日に発射したミサイルについて、変則軌道を描きながら最高速度マッハ10で飛んだとの分析を明らかにした。事実上、北朝鮮が極超音速ミサイルを発射したとの認識を示したことになる。防衛省で記者団に語った。極超音速ミサイルは日本のミサイル防衛(MD)で迎撃困難とされ、北朝鮮の脅威が現実に迫っていることを如実に示した。(中略)一方、北朝鮮はミサイルが約1000キロ飛翔し、標的に命中したとの認識を示した。仮に北朝鮮東岸から日本に向けて発射した場合、首都圏をうかがう距離となる。(後略)」(1月12日付産経新聞)

しかし、そもそものところから考えないと北朝鮮の術中にはまり、日本の防衛力整備に混乱をきたす恐れがあります。

その射程距離だと西日本の米軍基地にも届きますし、高度50キロほどの大気圏内を高速かつ変則で機動することで、従来のミサイル防衛では対処に困難が生じることは間違いありません。といっても、極超音速ミサイルが射程1000キロを備え、音速の10倍マッハ10で飛んだとしても、慌てふためく必要はないのです。

それはなぜか。ミサイルや砲兵職種の専門家ならわかっていることですが、通常弾頭の破片と爆風による破壊の効果が限定的な範囲にしか及ばないからです。

確かに不意を衝かれれば、ミサイルを撃ち込まれた場所で死傷者が出るかもしれません。しかし、何発を撃ち込めば、例えば在日米軍基地に壊滅的な損害を生じさせることができるというのでしょうか。仮に100発撃ち込んでも、それが通常弾頭である限り、被害が限定されるのは湾岸戦争や最近のイランによるイラク駐留米軍への弾道ミサイル攻撃でも明らかです。

そして、北朝鮮が1発でもミサイルを日本や韓国に向けて発射したら、まず韓国が備えるキル・チェーンによる反撃が行われ、合計1700発ほどの弾道ミサイルや巡航ミサイルが北朝鮮の重要目標を直撃することになります。そこに横須賀を母港とする米国の空母打撃群と巡航ミサイル原潜によるトマホーク巡航ミサイル、空母の艦載機が加わることになります。これは、北朝鮮版イスカンデル(KN23)や北朝鮮のミサイルが生物・化学兵器の弾頭の場合も同じです。

従って、基本的には北朝鮮がミサイルによって先制攻撃に出ることはありません。

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北朝鮮について、備えておく必要があるとすれば、核兵器を振りかざして恫喝してきた場合です。そのような国家存亡の危機という認識に到ったとき、米国は先制的自衛権を強引に行使する可能性があります。空母打撃群と巡航ミサイル原潜が搭載するトマホーク巡航ミサイルだけでなく、韓国のキル・チェーンも北朝鮮に対する先制攻撃に投入されるでしょう。

韓国と米国が備える打撃力には、抑止効果を求める反撃力としての位置づけとともに、先制的自衛権を担保する側面があるのです。

日本が、いわゆる「敵基地攻撃能力」を備える場合、そうした打撃力の両面を理解したうえで、艦船と陸上に配備される巡航ミサイルと航空自衛隊の戦闘機によるストライク・パッケージによって、対北朝鮮戦略の一角を担うというのが自然ではないかと思います。

同時に、日本に向けられるとすれば、その圧倒的多数は従来型の弾道ミサイルになると考えられますから、イージス・アショア(陸上イージス)の失敗の穴を米海軍のイージス艦を借り受ける形で秋田県と山口県沖に、それも可及的速やかに展開することで埋めるのが、順序正しい防衛力整備ではないかと思います。(小川和久)

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