2021年1月6日、前代未聞の米国会議事堂襲撃という暴挙に出たトランプ支持者たちですが、その蛮行を上回るリスクへの懸念が高まっているようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「トランプの再敗北による全米動乱の可能性」を報じた米国誌の記事を取り上げるとともに、トランプの「クーデター計画」を詳細に推測。その上で、「米国流民主主義はもはや死の寸前」とまで言い切っています。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

2024年、怒れるアメリカ人100万人超が武装蜂起する!?/「ニューズウィーク」誌の空恐ろしい予言

先週の「ニューズウィーク」1月25日号のカバー・ストーリーのタイトルは「2024年の全米動乱」で、副題は「次期米大統領選のトランプ再敗北で100万人超の怒れるアメリカ人が武装蜂起するリスク」である。

選挙不信を煽るトランプの挑発

トランプ前大統領は今なお、昨年1月6日の国会議事堂襲撃事件を引き起こした暴徒を「偉大な人々」と呼んで称賛し、さらに踏み込んで、前回の大統領選で「票が盗まれた」と確信する共和党支持者は今後は選挙の投票には参加せずに、別の方法で「もっと輝かしい勝利」を手にすることができるとまで言い募っている。

選挙によらずして権力を奪取する別の方法があるとすれば、最も分かりやすいのは軍事クーデターである。議会制民主主義の本家を気取ってその観念を世界に向けての“輸出品”にまでしてきた米国で、それを全面否定する軍事クーデターが起こりうるとは、俄には信じ難いが、ハミルトン大学の政治学者で世界中の軍事クーデターを研究してきたエリカ・デブルーイン准教授は「この国でそんなことが起きるとは思いたくないが、今やそれが想定の範囲内に入ってきた」と言う。

銃業界では、「銃を買うなら今が買い時。大統領選挙まで待つべきでない。誰が当選するにせよ、混乱と暴力が拡大する可能性が高い」「暴力的な左翼が地域社会と家庭に恐怖をもたらそうとしても、アメリカ的自由の総力を挙げた国民の戦いに撃退される」など内戦を煽るかの過激なコピーが罷り通っている。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

今秋の中間選挙から始まる暴力沙汰

トランプ側でどれほど具体的な“クーデター計画”が練られているのかは分からないが、恐らく2段階があるだろう。

第1に、今年秋の中間選挙に向けて共和党が優勢な州を先頭に何と43の州で、選挙の投票そのものに参加しにくくする制度改悪が議論されている。ジョージア州では少数民族の住民が多い地域を中心に投票所の数を減らされた。アイオア州では期日前投票の期間が短縮された。いずれも、露骨なことに、民主党支持者が投票しにくくなるようにする改変である。

ということは、この段階ではまだトランプ陣営は、選挙そのものをボイコットせずに、このような制度改悪によって何とか議席を確保しようとするつもりなのだろう。それで共和党候補者が勝利すれば、今度は民主党支持者が制度改悪による票の簒奪を非難して大規模デモに立ち上がるかもしれず、そうするとトランプは「民主党系の暴徒を鎮圧せよ」と呼号し、各地で共和党系の武装集団が出動する。民主党候補者が制度改悪を乗り越えて勝利した場合も、結果は同じことで、共和党系は「選挙に不正があった」と騒ぎ立て、武装デモに立ち上がるだろう。

第2に、その中間選挙の結末にもよるけれども、恐らくトランプは、24年の大統領選挙に向かっては、もちろん自ら立候補は表明するものの通常の選挙活動は一切行わず、支持者に対しては投票ボイコットを呼びかけ、最終的には議事堂を武装占拠して自分を大統領に担ぎ上げることを求める“直接民主主義的”手段?に訴えるかもしれない。

つまり、米国流民主主義はもはや死の寸前で、他国に呼びかけて「民主主義サミット」など開いている場合ではないということである。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

米国人が保有する4億丁の銃

こんなことになってしまった最大の原因は、銃の魔力がついに米国社会そのものを侵食して「話し合うよりも撃ち殺したほうが早い」という病的心理が蔓延してしまったことにあるのではないか。

銃はある意味で米国の建国の基礎で、作家のリック・アトキンソンによれば米国が英植民地の中で最初に自由を獲得できた理由の1つは、マスケット銃による重武装とその狙撃技術の高さであり、その経験が「規律のある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、市民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」という米国憲法修正第2条に表現されていて、これは人民の革命権を端的に表現したものとして評価する向きもないではない。しか「規律ある民兵」ではなく「規律を破壊する暴徒」までが銃武装の自由を持っていると解釈するのはもちろん行き過ぎで、そこを曖昧にして銃の拡散を野放しにしてきたことが米国の抱える大きなトラウマである。それが今、完全に裏目に出てきたということである。

米国人が保有する銃は約4億丁に上ると言われるが、政府といえどもその正確な数は把握していない。政府も分からないということ自体、銃が事実上、野放し状態である証拠である。ギャラップ調査によると、共和党支持者の半分が銃を所有しており、この割合は民主党支持者の3倍近い。所有者には男性と白人が圧倒的に多く、地域的には南部の農業地帯の人が多い。この分布は共和党の支持基盤と重なる。

銃の販売数は過去2年で急増しており、ハーバード大学などの調査によると、2020年だけで約1,700万人が4,000万丁の銃を購入している。また銃業界の調査会社によれば、21年にも約2,000万丁が売れた。

これって、誰が考えても、不安を銃暴力によってしか拭えないと皆が思い込んでいく社会の病理、それに対して別の解決策を明示できない政治の失敗ですよね。で、今起きようとしているのは、その社会の暴力的な病理が政治の失敗を乗り越えて行こうとする趨勢である。

米国は「4億丁の銃」を抱え込んで自爆に向かっているのかもしれない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年1月24日号より一部抜粋・文中敬称略。全文はメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』を購読するとお読みいただけます)

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

MAG2 NEWS