韓国の尹錫悦新大統領が就任し、その就任の辞が大きく報道されました。そのなかで出てきた「反知性主義」という単語にひっかかる方もいたのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、奇跡の就任を果たした新大統領の就任の辞の内容を詳しく解説しています。

韓国の新大統領が就任。改めて考える「反知性主義」ということ

5月10日、尹錫悦が第20代の韓国大統領に就任し、その就任の辞をお伝えした。不思議なのは1年前の2021年5月の時点でみても彼が大統領になるなどと誰が思っていただろう。

本人をはじめ誰もそんなことを思った人はいなかった。1年後の2022年5月10日、彼は大統領になった。これが奇跡でなくてなんだろうか。

考えてもみてほしい。今のオレがいる。来年の今日、思ってもみない位置についている己の姿を。なかなかそんな奇跡は起きるもんじゃないから想像してみようとしても、たぶん難しい(筆者を筆頭に)。

10日の韓国はさらに奇跡のようなことがあった。いつもpm2.5で汚れている韓国の空がいつになくpm2.5がほぼゼロ。天気もよく日本語でいえばまさに五月晴れ。しかも就任式を執り行っている汝矣島(ヨイド)上空には「虹の雲」がでていた。

韓国の各地でこの虹の雲が確認されており、SNSで写真が出回っていた。天の祝福があるんだと思う。

今の時代、自分だけがよくて周りがダメということでは生きていくことはできない。個人もそうだし国となればもっとそうだ。韓国がうまくいくことは、即日本がまたうまくいくことである。

5年前民主党は「今後100年はわれわれの時代だ」(つまり左派、民主党の権力構造)とのぼせ上って言っていたことを思い出す。

あの傲慢が今のこの奴らの敗北を招来した。筆者は基本的に進歩だ保守だというものがない。

ただ、その時代に合った政治、思想、体制でやっていくべきものが政治だと思っている。

国民の力を応援するというんじゃなくて、尹錫悦という人間が、このもっとも重要な時代になるであろう2022年から2027年までの5年間を担当することになった。

激動の時代になることだけは間違いのないこの20代大統領を、金と傲慢にまみれた人間的な腐敗政治を脱却して、5月10日の汝矣島の空のように、澄み切った、なんのくもりもない堂々たる政治をやっていってほしい。そう思う。

そんな意味で、彼、尹錫悦を筆者は応援したいのである。

 10日の就任の辞の中で「反知性主義」という単語があり、これ何?という方も多いのではないかと思う。今回はこの反知性主義について言及してみたい。

文脈としては、民主主義の危機を招いた主な原因が「反知性主義」だという流れだった。該当部分の中で重要部を再度掲載してみる。

「見解の異なる人々がお互いの立場を調整し妥協するためには科学と真実が前提にならなければなりません。それが民主主義を支える合理主義と知性主義です。国家間、国家内部の行き過ぎた集団的葛藤によって真実が歪曲され、各自が見たい、聞きたい事実だけを選択したり多数の力で相手の意見を抑圧する反知性主義が民主主義を危機に陥れ民主主義に対する信頼を阻害しています。」

尹大統領のこのような言及について、文在寅政権の行動を「反知性主義」と規定したのではないかという解釈が出ている。

尹大統領は文在寅前大統領に抜擢され検察総長に就任したが、チョ・グク前法務長官一家捜査を指揮し、チョ・グク前長官支持者の激しい攻撃を受けた。

尹大統領の側近は「自由価値の核心は真実尊重」とし「実体的真実発見の過程である捜査が陣営論理で攻撃されることになり、自由主義の失踪に深く心を痛めることになったようだ」と話した。

「国民の力」のある議員は「個人の責任よりは国家責任を強調するポピュリズム行動に対する警戒の意も含まれていると見られる」と話した。

実務陣が作成した就任演説の草稿には、反知性主義(anti-intellectualism)関連内容はなかったという。ある関係者は「就任式の1週間前に当選者の身分だった尹大統領が先がけてこの概念を持ち出した」と話した。

そして、「尹大統領は左右を問わず証拠を無視して事実を歪曲する人々を反知性主義者と規定した。彼らこそ民主主義の敵ということだ」と述べた。

「反知性主義」という単語は1950年代マッカーシズム狂風が吹いていた米国で使われ始めた。

米歴史学者リチャード・ホフスタッター(1916〜1970)はマッカーシズムなどを探求した著作『米国の反知性主義』で「反知性主義者は資料や証拠より肉感や感情を基準に事案を判断する」と述べた。

反知性主義はトランプ当選後、米国で再照明され、右派性向のトランプ支持者を批判する際に使われたりもした。

尹大統領は就任演説で「自由は普遍的価値」として「自由の価値を再発見しなければならない」と話した。

陣営論理で対立と葛藤が日常化した韓国政治を正常化するには、皆が同意できる「自由」価値回復から出発しなければならないという主張だ。

彼は「他の人々と立場を調整し妥協するためには科学と真実が前提にならなければならない」として「それが民主主義を支える合理主義と知性主義」と語る。

疎通や国民統合も陣営に関係なく、科学と真実のような前提に同意する時に可能だということだ。

尹大統領のこのような認識には、一部右派陣営内の極端主義に対する警戒も含まれているという解釈が出ている。

尹大統領は昨年の大統領選予備選挙の過程で、党内のライバルたちを名指して「国民があなたたちに失望したために私を呼び出した」と述べた。

彼は過去の朴槿恵政権(保守政権)の時、国情院のコメント操作事件を捜査し、政権と不和になり左遷されたりもした。

尹大統領側近は「国情院のコメント事件も核心は選挙法違反かどうかという事実と法理の問題だったが、権力はこれを『味方かどうか』の問題として接近した」と話した。

きのうの尹大統領就任演説の全体分量は3,303字で、李明博元大統領就任演説(8,969字)、朴槿恵元大統領就任演説(5,558字)より短かった。短い中にも簡潔に要点を抑えた内容となっている。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年5月12日号)

image by: 尹錫悦 − Home | Facebook

MAG2 NEWS