プーチン大統領によるウクライナ侵攻以来、緊張感が高まる西側諸国と反欧米姿勢を鮮明にする国家との対立関係。中国、ロシア、そして北朝鮮という独裁国家と至近距離で対峙する日本は、現状どのようなリスクを抱えているのでしょうか。これまでも様々な視点から日本の国防問題を検証してきた、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、5月下旬に大きく動いた日本を取り巻く国際関係を詳細に解説。その上で今後の中ロ北の動きを予測するとともに、我が国が直面している脅威について考察しています。

プーチンに習近平、金正恩も。厳しさを増す日本の安全保障環境

5月下旬、日本を取り巻く国際関係は大きく動いた。まず、バイデン大統領は5月20日から5日間の日程で日韓を初めて訪問した。20日から3日間の韓国訪問ではユン新大統領と会談し、対北朝鮮や経済安全保障などで米韓が協力を深化させていくことで一致した。ユン大統領は前政権で冷え込んだ米国や日本との関係改善を目指し、対北朝鮮で日米韓の連携を強化する姿勢を示しており、バイデン大統領としてもユン政権の誕生を強く歓迎している。

そして、22日からの日本訪問では岸田総理と会談し、岸田政権の厳しい対露姿勢を高く評価し、海洋覇権を強める中国に対する強い懸念を共有した。日米首脳会談の翌日には、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国で構成されるクアッドの首脳会合も開催され、共同声明ではロシアを名指しで批判することを避けられたが、6兆円規模の途上国へのインフラ支援が発表されるなど中国の一帯一路に対抗する政策が打ち出された。

しかし、バイデン大統領の日韓歴訪、クアッド首脳会合という一連の重大行事に合わせるかのように、それと対立する中国やロシア、北朝鮮はけん制的な動きを見せている。5月24日、中国軍とロシア軍の爆撃機が日本周辺の日本海や東シナ海、西太平洋上空で長距離にわたって共同飛行しているのが確認された。

しかし、中露が結束してけん制する動きはこれが初めてではなく、昨年10月には、ロシア海軍の駆逐艦など5隻と中国海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦5隻が北海道奥尻島の南西およそ110キロの日本海で並びながら航行している姿が目撃され、そのまま津軽海峡を通過し、千葉県の犬吠埼沖、伊豆諸島沖、高知県の足摺岬、鹿児島県の大隅海峡と太平洋を南下していった。

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また、中露両国は同月、極東ウラジオストク沖の日本海で4日間にわたって合同軍事演習を実施した。さらに、ロシアはウクライナ侵攻以降、4月14日に海軍が極東沖の日本海でウクライナ侵攻の時にも使用された巡航ミサイル「カリブル」の発射実験を行い、3月30日には北方領土の国後島で軍事訓練を実施するなど、日本をけん制する動きを見せている。

さらに、北朝鮮はバイデン大統領が帰国した翌日の5月25日、首都ピョンヤン郊外からICBM=大陸間弾道ミサイルと推定される弾道ミサイルと短距離弾道ミサイルなど合わせて3発を発射した。ミサイルは日本のEEZ外側の日本海に落下したが、北朝鮮は5月4日にも今年13回目となるミサイル発射を行っている。バイデン大統領の就任から1年半あまりが経つが、バイデン政権は北朝鮮が何かしら改善的な行動を取らない限り対話には応じない姿勢を堅持しており、今後も米国をけん制することを目的とした挑発的な行動が続く可能性が高い。

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中国・ロシア・北朝鮮という3正面脅威に直面する日本

これまでのところ、中国とロシアの結束したような行動は見られる一方、中国と北朝鮮、ロシアと北朝鮮が結束した軍事的挑発は見られない。24日と25日の合同飛行とミサイル発射はそれぞれ個別の事案であり、中露、北朝鮮がバイデン歴訪、クアッドに合わせてとった行動である。

しかし、米国がIPEF(インド太平洋経済枠組み)やクアッド、オーカス(AUKUS)など対中国を強く意識した多国間連携枠組みを強化すれば、それと対立する国々による多国間連携もいっそう強化される恐れがあろう。クアッド首脳会合直後、中国の王毅外相はクアッドに対抗するかのように南太平洋8カ国を次々に訪問したが、中国には南太平洋やASEANなど中小国を取り囲むことで米主導の陣営に対抗する狙いがある。

ウクライナ侵攻でロシアと欧米の対立が冷戦後最も激しくなる中、今後は中露の結束がこれまで以上に強まるだけでなく、中露が主導する形で対欧米を目的とした中小国取り込み外交がいっそう激しくなるだろう。その一環として、今後は日本や米国をけん制する狙いで、中国ロシア北朝鮮が結束して3カ国合同の軍事訓練などを実施する可能性があろう。日本は正に、中国ロシア北朝鮮という3正面脅威に直面している。

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