ここ数年、不可解な理由で多数の外国人が逮捕・拘束されている中国。先日、その流れにさらに拍車をかけることが予想される法律が制定されたことをご存じでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、6月6日に交付されたばかりの、スパイ行為の密告に最高200万円の報奨金が払われるという新法を紹介。その上で、今後外国人が市民による「でっち上げ密告」の標的になることは容易に想像できるとして、日本人に対しても警戒を呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年6月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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密告奨励をさらに強める中国、日本人に迫る危機

● 中共國安新規「全民皆諜」獎金制度化(中国国家安全部が「全員スパイ」の報奨金を制度化)

中国国家安全省(MSS)は6月6日、国家の安全を脅かす行為を通報する市民を奨励し、最高10万元(約200万円)の報奨金を与える新法を公布しました。

中国の報道によれば、この法律は『公民挙法危害国家安全行為奨励法』というもので、5章24条からなり、国家安全法と反スパイ法を「大衆の路線と一体化」することに重点を置き、スパイ行為を通報した者にはその貢献度によって4つのクラス分けを行い、1万元から10万元以上の報奨金を支払うこととしています。

上記の国家安全法は2015年に施行された法律で、国家を脅かす言動を取り締まり、経済的安定や対外的な安全保障などについて定めたものです。2020年6月に香港に国家安全法が施行され、民主活動家などが多数逮捕されたことはご承知のとおりです。

また、反スパイ法は2014年に施行されたもので、スパイ行為を摘発し処罰するための法律です。

この2つの法律の施行以降、中国に滞在する外国人の逮捕が相次ぐようになっています。2015年以降、日本人も計16人が拘束され、9人が3〜15年の実刑判決を受けています。

● スパイ容疑か 上海で50代の日本人男性拘束 15年以降に中国で16人拘束

今回制定された法律では、これらの法律による取締を強化するために、スパイを疑われる人物や、インターネットで政権や中国共産党を批判した人物などについて、市民からの密告を奨励するものなのです。

じつは北京では2017年から、北京市国家安全局がスパイ通報規則を施行しており、摘発に貢献した通報者に対して、10万〜50万元の報奨金を与えるとしていました。これにより、2017年には年間5,000件の通報があったとされています。

● 北京のスパイ通報件数は1年間で5,000件 通報の報奨金は17万〜850万円

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また、人口350万人の北京市朝陽区では、通行人の監視にあたる市民ボランティアが約19万人(実名登録13万人)おり、月間2万件以上の情報を警察当局に提供しているといいます。彼ら・彼女らは「朝陽群衆」あるいは「朝陽大媽(朝陽おばさん)」と呼ばれています。町中で買い物をしながら、子供を公園で遊ばせながら、不審者がいないかと目を光らせて情報を通報する人たちなのです。

● 著名人を次々に摘発、監視カメラよりも強力な密告組織とは

2021年10月、ショパンコンクールの優勝者で「ピアノ王子」と呼ばれ人気を集めていたユンディ・リ(李雲迪)という著名ピアニストが、売春容疑で朝陽区警察に逮捕されるという事件がありましたが、これも「朝陽群衆」からの密告がきっかけでした。

● 「ピアノ王子」も見逃さなかった北京最大の住民スパイ組織「朝陽群衆」その実態とは

朝陽区警察は、朝陽区の住民が気軽に通報できるように「朝陽群衆HD」というアプリまで配布しています。また、2018年には中国国家安全部もオンライン通報プラットフォームのサイトを開設し、通報や密告を奨励しました。

● 「朝陽群衆HD」アプリがリリース

そして、朝陽群衆や朝陽大媽のような密告集団を中国全土に広げようというのが、今回の奨励制度の法律施行なのです。

とりわけ中国は人間不信社会です。儒教によって伝統的に家族主義が強く、不正も親族ぐるみで行う一方で、同族以外は信じられないために他の一族との権力闘争が絶えず、それが戦乱続きの歴史を形づくってきました。

中国における王朝交代は「易姓革命」と呼ばれますが、これはある姓の王朝が別の姓に変わるということを意味し、どの家族が天下を治めるかをめぐり、血で血を洗う争いを続けてきたというのが中国の歴史なのです。万世一系の日本とはまったく異なります。

毛沢東は中国人の家族主義を、私有財産の温床であるとともに、伝統主義の元凶だとして、家族主義の解体を目指しました。そのために、地主を殺して集団農場である人民公社をつくったのです。しかし、責任が曖昧になり、働いても働かなくても同じだという悪平等が横行、大躍進政策の失敗とともに、生産性が低下してしまったのです。

この大躍進政策の失敗により国家主席を辞任せざるをえなくなった毛沢東が、復権のために仕掛けたのが文化大革命です。学生や大衆を煽動して、政敵を走資派として糾弾して失脚に追い込んだわけです。

また毛沢東は密告を奨励したため、仕事仲間や近隣住民同士のみならず、親族縁者、さらには親子の間でも密告が横行しました。これにより、中国人の相互不信はさらに昂進し、人間不信社会ができあがっていったのです。

そのような土壌があるので、中国人は通報や密告について、躊躇をするところがありません。それどころか報奨をもらえるとなれば、嘘をでっち上げてでも通報・密告するようになります。文革中も、自らの保身のみならず、昇進やライバルを蹴落とすための密告が相次ぎました。

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戦後に中国から国民党政府が進駐してきた台湾でも、密告が奨励されていました。私は小学生でしたが、学校から町に出て、「密告しないと罪人と同罪(知情不報同罪)」という歌を歌いながら練り歩かされたものでした。

スパイを密告すると、有罪者から没収された財産の30パーセントが密告者に、35パーセントが摘発工作員に報奨金として与えられるので、密告業者が暗躍し、保安局員は私腹を肥やしていきました。

つまり、台湾でも朝陽群衆のようなスパイ通報・密告集団が目を光らせていたのです。資産家などは格好の標的でした。

中国の場合、とくにスパイ容疑で狙われやすいのは外国人です。中国人からすれば、外国語で何を話しているかわからないから怪しいということになりますし、また、海外で出版された中国に関する書籍を所持していれば、とくに中国の政権批判につながる書物などを持っていれば、「政権転覆を狙って中国人を煽動しようとした」といった嫌疑をかけることも容易です。

所持するパソコンを調べられて、黄文雄のメルマガを定期購読していたことが判明しただけでも、もしかすると「国家安全法」の罪で処罰されるかもしれません。少なくとも、中国の知り合いや友人と、習近平政権の批判につながる話をしたり、SNSでやりとりすることは、非常に危険だということになります。いつ密告されるかわかりません。

香港で施行された国家安全法は、香港や中国本土以外でも、あるいは外国人であっても、反体制的あるいは体制転覆を煽るような発言をした場合には処罰の対象となるとされています。そのため、日本人が日本国内で香港独立などを主張すれば、中国政府の処罰の対象になる可能性があるわけです。

過去のSNSで中国批判をしたことのある人が、うっかりそのことを忘れて中国を訪れたところ、通報・密告によって過去の発言が掘り起こされ摘発されてしまった、といったことすら起こりかねないのです。

● 香港の外でも外国人でも処罰 「国安法」に不安広がる

人治主義の国で横行する通報や密告は、非常に恐ろしいものです。恣意的に密告され、適当な罪をでっち上げられる可能性があるからです。今回の法律は、人民の通報・密告を促すためのものであり、その矛先が容易に外国人に向かいかねないことは、重々、警戒しなくてはなりません。

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