台湾について近い将来の統一は言うに及ばず、武力併合の姿勢すら隠すことのない中国。そんな習近平政権は一月ほど前まで、とある基地に30万もの兵力を結集させ台湾侵攻の準備を整えていたものの、決行を断念したとの情報も伝えられています。なぜ中国政府は侵攻延期の判断を下したのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、さまざまな要素を勘案しその理由を推測。さらに中国サイドの「ウクライナより台湾のほうが落としやすい」という見方が正しいか否かを検証しています。

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ロシアのウクライナ侵攻と台湾進攻の関連性

前回、「ロシアのウクライナ侵攻がうまくいったら台湾進攻を行う」ということを決めていたという情報が入っていますということをかきました。

ある意味で「ウクライナ」よりも「台湾」の方が簡単であるというように北京の共産党政府は思っていました。

ウクライナの侵攻は、2008年のグルジア戦争から始まる内容であることは間違いがありません。

プーチン大統領の野望である「旧ソ連の最大版図の復活」ということにおいて、プーチン大統領は中国が考え出した超限戦を学び、その内容を徐々に試していたということになります。

その内容の結実が2014年のクリミア半島侵攻であったことは間違いがないのです。

【関連】プーチンが真似てクリミア併合に成功。中国考案の「超限戦」とは?

そして、2014年以降、ウクライナはクリミア半島だけではなく、ウクライナ全土を狙っていることを察知し、抵抗をしています。

その抵抗が「ユーロマイダン運動」であり、そしてロシアに近い住民とウクライナ政府との間で始まった「ドンバス戦争」ということになります。

こののちに、様々な意味で「ハイブリッド戦争」が行われています。

簡単に言えば武器工場の爆破や、反政府工作、アゾフ連隊などに対する「印象工作」がそれにあたります。

そして、それらの内容が全て結実したと思ったのか、あるいは、結実しないので、戦争以外にはないと考えたのか、いずれにせよ今年の2月24日に、戦争が始まったということになります。

このことについてはすでに書いている通りですし、また今後も書くことになるでしょう。

さて、ウクライナの戦争が現在で4カ月になっています。

なぜここまで戦争が続いているのでしょうか。

それは間違いなく、ウクライナの国民が抵抗しているからということになります。

今回のロシアのウクライナ侵攻は、ご存じのように、NATOもアメリカも支援をしていません。

つまり、いくらかの義勇兵はいるものの、基本的にはウクライナ国民がウクライナを守るためにロシア軍と戦っているということになります。

その軍隊が必死に抵抗をしていることから、ロシア軍が攻めきれないということ位なります。

またウクライナ人の民間人、つまり戦闘に参加していない人々は、そのまま国外に避難しています。

もちろんそのまま亡命してしまう人もいますし、ウクライナに戻って戦いに参加する人も少なくないと聞きます。

そしてウクライナの戦いに参加しないことは良くないことのような報道があり、そのことによって徐々にウクライナに帰国し戦争に参加する人が増えているということになります。

つまり「亡命(避難)」「援軍」「帰国」「支援」これらが全てウクライナ国外との間に成立していることが、ウクライナを強くしているということになるのです。

もしかしたら、NATO軍などが中に入って支援すれば、形勢が逆転するかもしれないということになるのです。

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さて、これに比べて台湾はどうでしょうか。

そもそも中国が台湾を併合しようとしていることはすでに見てきているように明らかです。

そのうえで、ロシアがヨーロッパ(ウクライナ)で世界の耳目を集めている間に、台湾を併合するというようなシナリオもありました。

実際には、今年の10月1日からの「国慶節」明けに、戦争を始めるということは十分にあり得る話であったのです。

いや、それどころか、3月初旬に閉幕したパラリンピックの後に、中国は台湾併合を行うことは可能であったと思います。

しかし、そのようにしなかったのです。

一つはウクライナの方が簡単であると思われたので、先にウクライナを手を受けたということになります。

ウクライナは、今でこそ人気の高いゼレンスキー大統領の国民支持率は20%前後まで下落し、ロシアの工作がかなりうまくいったというように考えられていたのです。

この事から、ロシアがウクライナに侵攻を始めれば、その工作が功を奏してウクライナ国民がこぞって親ロシア派になるのではないかと思っていたといわれています。

そうではないにせよ、ゼレンスキー大統領が国外に逃げて、亡命政府を作り、何らかのメッセージを発しても、ウクライナの国軍の士気は上がらず、そのことから、ウクライナはすぐに降伏すると思われたのです。

しかし、そうではなかったのです。

ゼレンスキー大統領はキエフにとどまり亡命政府のようなことはしませんでした。

そのことから、ウクライナの指揮は高まったのです。

しかし、同時に、ロシアが工作した内容は効果がなく、その効果が測定できないということになったのではないでしょうか。

当然に、中国は台湾の侵攻を止めざるをえません。

ロシアのウクライナ侵攻に関して、2月24日前後から3月待つくらいまでの間、中国人民解放軍は約30万の軍隊(情報によると陸海空合計)を海南島の三亜基地周辺におき、いつでも台湾侵攻ができるようにしていたといわれています。

また海軍は、ウラジオストクにあるロシア太平洋艦隊とオホーツク海で演習をしています。

現在、日本周辺における中国軍とロシア軍の動きはこの時に、人民解放軍が集結したことに由来しているといって過言ではありません。

しかし、中国人民解放軍は、そのようにしながらも、台湾の侵攻をしなかったのです。

つまり、自分たちの行っている工作がうまくいっていないということ、また、台湾に関してはアメリカ軍が支援する可能性があるということからです。

しかし、ウクライナに比べて台湾のほうが簡単であるという見方は間違っていません。

ウクライナの場合は陸続きの国家があるから、「亡命(避難)」ができます。

しかし、台湾の場合は周辺が海しかないので、亡命はできないということになるのです。

その時には船か飛行機しかないということになります。

しかし、それらは港がなければなりませんし、同時に「制空権」「制海権」が必要になるということになります。

戦争などは始まっていない現段階において、既に南シナ海(台湾海峡側)は中国が制圧しているといって過言ではありません。

習近平国家主席は、すでに「台湾海峡は国際海峡ではない」ということを言い、そこが中国の領海であるというような主張をしています。

そのような発言ができるようになるほど、既に制海権の支配は進んでいます。

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また南シナ海の環礁の埋め立てから、既に航空機が配備され、制空権も取られているということになるのではないでしょうか。

少なくとも台湾軍の単独では制空権を抑えることはできないと考えた方が良いと思います。

つまり、台湾で戦争が始まった場合、台湾における非戦闘員の亡命は少なくともウクライナの時よりも難しいということになります。

台湾の北側から日本の南西諸島に逃げるか、南側からフィリピンに逃げるか、あるいは太平洋側の制海権を握るしかないということになります。

しかし、太平洋側の制海権を握ることも、台湾単独では難しいということになるので、亡命や避難をすることもできないということになります。

この事は台湾が戦時になった場合、「他国と連絡を取ることができない」ということであり、海を越えるということの難しさがあるということになるのです。

当然、中国人民解放軍も海を越えなければならないという状況は同じです。

そのことは「ウクライナよりも攻めにくい」ということになります。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年6月27日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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