東部ハルキウ州では露軍を大敗北に至らしめるなど、反転攻勢の勢いを維持するウクライナ。押されるばかりのロシアですが、国内でもさまざまな声が上がり始めたようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ紛争の最新の戦局とロシアの強硬派らの主張を紹介。さらにもはや隠すことができなくなった、国際社会における「ロシアの影響力凋落の証拠」を記しています。

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ロシアの影響力がなくなる

ウクライナ戦争で、ロ軍がハルキウ州で総崩れの状態になり、アゼルバイジャンがアルメニア本国を攻撃、しかし、ロシアは集団安全保障締結国アルメニアの出動要請を拒否。今後を検討しよう。

ウ軍は、東部ハルキウ州のほぼ全体を奪還したが、クピャンスク市西側の奪還後、オスキル川を渡河して東側も奪還して、オスキル川東岸を攻撃しているようだ。

そのほか、ドボリジナでも渡河して、橋頭保を築き、東に向かって攻撃して、トロイツクに達したという。またオスキル市でも渡河して市内で戦闘中である。もう1つがボロバ付近でも渡河したようで、都合4ケ所で渡河に成功しているので、オスキル川を防衛線としたロ軍の防衛線を突破していることになる。

しかし、ロ軍も体制を立て直しつつある。逆に、ウ軍は広範な地域を短時間に奪還したことで、奪還地域でのロ軍の残党刈に多くの兵を投入中であり、攻撃に回せる部隊が少ない。

このハルキウ州の大反撃で鹵獲したロシア軍兵器は、以下の通り

歩兵戦闘車:79両
無人航空機:5機
戦車:45両
トラック等:41両
装甲戦闘車両:15両
自走砲:11両
装甲兵員輸送車:8両
指揮所:6両
MLRS:5両
対空ミサイルシステム:1両
多数の弾薬類

信憑性は不明ですが、事実だとしたらかなりの戦力増強になった。

そして、スラビアンスク東側の攻撃でウ軍の前進は緩やかである。リマンでの戦闘も数日も続き、ロ軍は援軍を送り守備力を上げている。また、クレミナでロ軍が退却したが、ウ軍が到着できずに、再度ロ軍が入ったようである。

ヤンピルでも数日前から戦闘が続き、イジュームから撤退したロ軍が投入されて、ウ軍は前進できなくなっている。

ルハンスク州防衛で、ロ軍が体制を立て直しつつあるようである。残念であるが、ウ軍は、ロ軍の防衛線構築を阻止することで戦果を拡大できると思ったが、それは実現できなかったようである。

しかし、このセベロドネツク方面への鉄道網は、クピャンスクから伸びているので、ここの補給はクピャンスクを失ったロ軍は補給路としては、ルハンスク市から山超えで車で運ぶことになる。

このため、補給路の道路を監視して、輸送のトラックをPzH2000自走榴弾砲とボルケーノ弾やバイラクタルTB2で狙うと、この地域への補給ができなくなる。

ということで、この地域の防衛は難しいようである。ウ軍もじっくり攻撃して、相手の消耗を待つようだ。

一方、ロ軍はウクライナへの新しい派兵は、当分停止するという。十分な訓練をしなかった兵が、先に逃亡して戦局を悪くしたことが認識されて、訓練を行う時間が必要だということである。

ロ軍もウ軍の実力を思い知らされて、慎重に戦争遂行を考え始めたようである。戦闘を広範囲に行うのではなく、兵力を集中して1ケ所で攻撃を行うようになってきた。その成果がバクムット方面のコデマを制圧したロ軍が攻撃を強化して複数方向に進撃している。

ロシア国内では、戦争宣言をして総動員を掛けろいう強硬派の声が大きくなってきた。もう1つが国防省の責任を追及する方向で、議会は動き、ショイグ国防相の下院議会への召喚を要求する声も出ている。ショイグ国防相の解任を議会は要求する可能性もある。

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一方、ウ軍は南部ヘルソン州での攻撃では、3軸で行っている。1軸は、ヘルソン市の北キセリフカからでロ軍が撤退したので、ウ軍が奪還した。ウ軍は前進して、チョルノバイフカ付近、ヘルソン空港あたりまで来ているようであり、ヘルソン周辺の要塞群の先端辺りにいる。また、西端のオレクサンドリフカをウ軍は奪還した。徐々にヘルソン市に近づいている。そして、ヘルソン市庁舎への砲撃もウ軍は開始した。

ドニエプル川の橋やフェリーは相変わらず攻撃しているので、ポンツン・フェリーで細々と補給をしている状況ではある。このため、食料や飲料水が思うように確保できず、戦場を離脱する部隊もあるようだ。

2軸は、ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃する軸であり、ベジメンネを奪還後、T2207号線脇を南下しているが、ロ軍はクリヴィー・リフ貯水地の堤防を破壊して洪水をおこし、橋頭保の船橋を押し流そうとしたが、失敗している。

3軸は、ヘルソン州北東部では、ビソコピリア奪還し南下しているが状況が見えない。ノヴォヴォスクレセンスキ奪還もしている。

そして、ウ軍はサポリージャ攻撃で大軍を集結していると、ロ軍は見てメルトポリからクリミアに軍民政府やロ軍の一部も移動させている。

次の大攻勢は、ザポリージャ州とロ軍は見ているようだ。ここのパルチザン活動は盛んであり、多くのウ軍特殊部隊が潜入しているとロ軍はみているようだ。

しかし、ウクライナは米議会や米国防総省に長距離ミサイルシステムや戦車を要望しているが、米国はウ軍が要望する長射程のATACMSを供与する考えはないという。ロシアもATACMSの供与はレッドゾーンだと再三宣言している。ということで、当面は地道にザポリージャ州を奪還して、アゾフ海の海岸線をめざすしかない。

また、黒海艦隊の母港をクリミア半島のセヴァストポリからノボロシスクに変更した。ザポリージャ州を奪還されると、セヴァストポリへの砲撃も可能になり、艦隊の安全がキープできないからでしょうね。

他方、ロシアの集団安全保障条約(CSTO)加盟国アルメニアが、国境付近で、アゼルバイジャン軍に攻撃されて、停戦監視をしていたロ軍は撤退し、軍の派遣をロシアに要請したが、ロシアもカザフスタンも要請を拒否した。

しかも、上海協力機構で、アゼルバイジャンとアルメニアのトップともプーチンは首脳会談をしたが、有効な調停をしていない。アルメニアへの支援を行わないようである。しかし、トルコとロシアが協議して、停戦には持ち込んだようである。

もう1つ、中央アジアのタジキタンとキルギス間の国境紛争も起こり、キルギスの飛び地のバトケンでは、住民らが政府に武器を配るよう要求している。

キルギスはクルグズ人の国家であり、キルギス政府は、タジクとの停戦発効後も「激しい戦闘」が続いているという。キルギスは、バイラクタルTB2で、侵攻してきたタジク軍のT-72戦車を攻撃しているようだ。

しかし、ここでもロシアが調停に乗り出さない。ロシアの影響力は行使できない。このため、中央アジアでの紛争を止められるのは、中国しかいないことになる。

もう1つ、シリアに展開していたロ軍もすべて撤収したという。ロシアの海外での影響力はなくなっていく。

一方、ウクライナが勝ち始めたので、欧州に逃れた800万人中500万人のウクライナ難民がすでに帰国したようだ。ロ軍のミサイルが防空システムで打ち落ちされれば、ウクライナに戻る人は増えるでしょうね。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年9月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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