もはや習近平国家主席が隠すことすらなくなった、台湾統一のための軍事力行使の可能性。勃発してしまえば日本も間違いなく甚大な被害を受ける軍事衝突は、避けることはできないのでしょうか。そんな台湾有事について、問題は「起きるか否か」ではなく「いつ起きるか」とするのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、相次いでいる中台双方の過激な言動の危険性を指摘するとともに、台湾有事への「長いカウントダウン」は既に始まっているとの見解を記しています。

台湾有事「起きるか、起きないか」は愚問。一番の問題は「いつ起きるか」だ

台湾の邱国正国防部長は10月5日、台湾が領空と主張している空域を中国軍機が侵犯した場合、それを最初の攻撃とみなして反撃する立場を示した。台湾はこれまで中国による第一攻撃をミサイルなどによる攻撃と定義し、それがないうちは台湾側からの攻撃は控える立場だったが、5日の邱国正国防部長の答弁はより踏み込んだ台湾側の意思となった。台湾国防部(国防省)は4日にも、今後中国が中国軍機による中台中間線越えや台湾離島へのドローン飛来、台湾を包囲するような軍事演習など、これまで以上に強硬な軍事的威嚇を今後常態化させてくると懸念を表明した。

最近の中台関係は明らかに以前より緊張の度合いが増している。そのトリガーになったのが8月のペロシ米下院議長の台湾訪問だ。中国は欧米各国の政治指導部関係者が訪台するごとに何かしらの牽制球を投げてきたが、ペロシ米下院議長の訪問を巡っても再三にわたって忠告してきた。中国外務省は、「訪問が実現すれば強い対抗措置を取る」と警告し、習近平国家主席も7月下旬にバイデン大統領と電話会談した際、「火遊びをすれば必ず火傷する」と釘を刺していた。だが、必要以上に緊張を高めたくないバイデン政権の本音とは裏腹に、ペロシ米下院議長は台湾を訪問し、「世界は今民主主義と専制主義の競争となっているが、台湾の民主主義を守るためのアメリカの決意は揺らぐことはない」と台湾と連携を強化する意志を示した。

しかし、これが却って中国に2つのプレゼントを提供することになってしまった。1つは、米国のナンバー3ともいわれるペロシ米下院議長と協力を確認した台湾に対する“懲罰的措置”で、もう1つがそれを“常態化させる口実”である。ペロシ訪問を待っていたかのように、中国軍は台湾を四方八方囲むような軍事演習を行って台湾を威嚇するだけでなく、中国軍機による中台中間線超え、そして台湾離島へのドローンの飛来が激増するなど、中国はペロシ訪問をきっかにこれまでにない軍事的威嚇を取るようになっている。これはペロシ訪問を許した台湾への懲罰的措置の一環である。

だが、中国にとってそれは単に懲罰的措置に終わらない。中国側の狙いは、今回のペロシ訪問を懲罰的措置だけでなく、それを利用して同威嚇を常態化させることにある。冒頭の台湾国防部の発言の背景にもそれがあろう。台湾を四方八方囲むような軍事演習、中国軍機による中台中間線超えや台湾離島へのドローンの飛来の激増など、中国はそういった行動をルーティーン化し、今後ペロシ訪問の際に生じたレベルの緊張でなくても、同様の行動を取ってくることだろう。

既に始まっている台湾有事への“長いカウントダウン”

そして、中国による“これまで以上の過激な軍事行動の日常化”は、誰もが恐れる偶発的衝突の可能性を高めることになる。冒頭で邱国正国防部長が第一攻撃の定義を“中国からの攻撃”から“中国軍機の領空侵犯”に変更する意思も明らかにしたように、今日双方の間で過激な言動・行動の応酬、連鎖が相次いでいる。しかもそれに歯止めが掛からない状態で、過激な言動・行動がこのまま続けば、それによって軍事的な偶発的衝突が発生するリスクが高まることは想像に難くない。

台湾有事でより大きな影響を受けるのは台湾自身だ。台湾は民主主義“国家”であり、有事という国家緊急事態になったとしても、政府は台湾国民や台湾に滞在する外国人の命と安全を守ることを重視するであろう。一方、中国はゼロコロナ政策にも見られるように、国家緊急事態になった場合は政府の権限はいっそう強くなり、国民はそれに従うことを余儀なくされる。中国は全体主義国家であり、国家緊急事態の場合には民主主義国家ほど国民の命や安全は重視されない。こういった性格を持つ中国であれば、台湾有事の際にはたしてどこまで人道面をケアしてくるか全く不透明だ。周知のとおり、中国は台湾を香港やウイグルと同じように絶対に渡すことのできない核心的利益に位置づけており、台湾独立に対する動きには武力で対応してくるだろう。

今年秋には習国家主席の3期目が確定するが、習国家主席の最大の夢の1つが台湾統一だ。習氏がこれを諦めることは絶対にない。中国はロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにしており、台湾侵攻を躊躇しているとの分析もある。確かに、中国も最近ロシアと距離を置く姿勢を示しており、ウクライナ侵攻を台湾侵攻に捉え、そのメリットデメリットを模索していることだろう。それもそれで正しい見解だ。しかし、ウクライナと台湾で決定的に異なるのは、プーチン大統領はウクライナとロシアは民族が変わらないとしながらも国家として別との認識であるが、習氏にとって台湾は国内であり、そもそも国際法上でいう国家と国家の“戦争”という概念がないことだ。我々はこれを熟知する必要がある。台湾有事を巡っては、既に“長いカウントダウン”が始まっているのだ。

image by: 中華民國空軍  − Home | Facebook

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