それぞれの国のコロナの対応が違うことによって悪化していく中韓関係。今回のメルマガ『黄文葦の日中楽話』では、2000年に来日し現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さんが、それぞれの政策について詳しく解説しています。

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  中韓関係、コロナ政策の影響でまたもや悪化

1月、韓国が中国人観光客の短期滞在を制限、また停止すると、中国は直ちに韓国人への短期ビザ発給を停止するという相互措置をとった。当然、両国の世論もすぐに介入し、報道され、嵐となった。

現在の韓国と中国の外交問題は、コロナへの対応が発端となっており、韓国政府は、コロナ感染に対しては国民の健康を守ることが優先されると主張している。しかし、韓国外相はこれを中国に説明する一方で、「価値観」などセンシティブな話題を付け加えたため、中国政府は韓国の行動に疑念を抱くようになった。

1月9日、韓国のユン・ソンニョル大統領は、「感染症に対処する際、外交、経済、政治的要因ではなく、国民の健康と安全だけを考えるべきだ」「国民の安全を守るために高強度のシステムを構築しなければならない」と述べた。

この発言は、最近、韓国の防疫当局が中国人入国者に対する検疫措置を強化したことを受け、韓中関係への悪影響が懸念される中、ユン・ソンニョル大統領が否定したものと解釈されている。つまり、国民の健康と安全が第一であり、それ以外はどうでもいいということだ。

韓国の中央防疫対策本部は1月11日、1月2日から7日までに中国から入国した人の着陸検査で、陽性者の割合は19.6%だったと発表した。

中国からのデータが不足しているため、各国が中国からの入国者に対して検疫措置をとるのは理解できる。

しかし、韓国のパク・チン外相は1月8日のインタビューで、韓国の対米中外交政策について、「韓国は米国と中国に関わる問題に対して、自然にどちらかに有利になることはなく、的を射た戦略をとることもない」と答えている。しかし、朴氏は、中国と韓国の間には多くの違いがあり、普遍的な価値を重視する米国と比較すると、二国間協力は「限定的」であると述べた。

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パク・チン外相は、韓国が中国と協力することは嫌いではないが、中国が「国際ルールを守り」、韓国の価値観と一致する形で「責任ある役割」を果たさない限り、より緊密になることはできないと公言した。

昨年12月28日から31日にかけて、韓国のチョン・ウテク国会副議長が台湾訪問団を率いた。中国にとって、今回の韓国の行動をパク・チン外相の「価値観」発言と結びつけるのは当然のことである。

さらに、多くの中国人の目には、韓国は完全な独立主権国家とは映らない。韓国は軍の指揮権を米国に譲っている。14億人の人口を抱える中国にとって、国防の面で自立していない国と、価値観を一致させるわけがないようだ。

パク・チン外相が中国に韓国と価値観を合わせるよう求めた翌日、中国と韓国の外相が会談し、また翌日、中国は訪中する韓国人への短期ビザの発給を停止すると発表した。

中国人観光客のビザ問題に対する韓国の行動は、中国にとって全く予想外のことであり、他の国よりも、日本よりもはるかに過激であった。今回の韓国の振る舞いは、中国に今後の中韓関係を考え直すことになるのは間違いない。中国は、韓国がコロナの問題を戦略的な外交・政治レベルにまで高めたと考えている。

中韓関係は、コロナ政策の影響でまたもや悪化した。中国、日本、韓国という異なる価値観を持つ東アジアの3カ国は、対立を避け、対話と協力を維持することを望んでいる。

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