自らは決して認めないものの、深刻な人権侵害が繰り返されていることは明白な中国。そんな隣国で、またも当局による「重大な蹂躙」が発覚しました。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、廃刊に追い込まれた香港の反中紙創業者とその家族に対する、人権を完全に無視した行いを紹介。さらにその事実を伝えない日本メディアに批判的な目を向けています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年9月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】ジミー・ライへの中国の残酷な人権侵害、中国批判で終身刑も

● 中國秘密信件曝光!騷擾各國外交官 要求抵制黎智英兒(中国の密書を暴露!ジミー・ライの息子の国連演説をボイコットするよう各国外交官に要求する嫌がらせ)

北京政府に批判的だった香港の『アップル・デイリー』(現在は廃刊)創刊者・黎智英(ジミー・ライ)氏は、2020年8月に香港国家安全維持法(国安法)に違反したとして逮捕され、それから約1,000日が経過しました。

【関連】香港の自由は死んだ。現地新聞『リンゴ日報』休刊が伝える中国共産党の横暴

ジミー・ライ氏の息子である黎崇恩氏は、父親の置かれた危機的状況や、言論の自由が奪われた香港の近況を発信し続けており、最近も国連のイベントに招待され、スピーチを行いました。

ロイター通信によると、国連人権理事会の会合期間、「香港におけるメディアの自由」というイベントが開催されましたが、その講演者のひとりが、黎崇恩氏だったそうです。ちなみにこのイベントは、アメリカ、フランス、ドイツなど22カ国以上が共催しているとのこと。

しかし中国が各国外交官に「いかなる形であれ、このイベントへの参加を控える」よう求める書簡を出していたことが明らかになりました。その書簡には「香港関連の問題は純粋に中国の内政問題であり、外部からの干渉を許さない」と書かれていたそうです。

ロイターの取材では、少なくとも4人の外交官がそうした書簡を受け取ったことを確認し、そのうち3人は、中国の外交官がいくつかの国に対し、このイベントに参加したり支援したりしないよう個別に連絡していたと証言していたそうです。

記事によれば、ジュネーブの中国外交部からは回答はなく、香港当局は一般声明を発表し、「メディアがジミー・ライ事件に関して誤解を招く中傷的な発言をしたことは政治的干渉に当たる」と非難しました。

一方、イギリス外務省は中英共同宣言を引用し、香港における権利と自由の侵食を引き続き懸念すると述べています。

中国政府は香港から表現の自由を奪うだけではなく、ジミー・ライ氏から、そしてその息子、国連からも自由な発言を奪おうとしているわけです。

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ジミー・ライ氏は「外国または域外勢力と結託し国家安全保障に危害を与えた」という国安法違反を含め、複数の罪に問われています。その裁判は昨年12月に行われる予定でしたが、香港政府はライ氏がイギリスの弁護士を雇うのを阻止するため、北京政府に介入を求めました。これにより裁判は何度も延期され、暫定的に今年の12月18日に開かれる予定となっていますが、有罪判決を受ければ、終身刑になる可能性も指摘されています。

● 拘束から1000日あまりのジミー・ライ氏、12月の裁判で終身刑のおそれ

75歳になるライ氏は、香港赤柱(スタンレー)にある刑務所の独房に収監されており、屋外での運動は1日50分しか許されていない状況で、最近の写真では、かなり痩せた様子だと報じられています。

中国共産党の支配を受けるというのは、まさにこういうことなのです。政権への批判は絶対に許されず、発言の自由を行使した者の人権は徹底的に踏みにじられます。

冒頭のニュースは台湾の「自由時報」が報じたものです。

日本のメディアがジャニーズによる人権侵害を詳細に報じ、人権侵害を理由にジャニーズとの関係を見直す日本企業が増えています。それもいいですが、しかし国際的人権侵害には非常に感度が低いと言わざるをえません。

以前のメルマガでも取り上げましたが、ジャニーズを問題視する一方で中国の人権侵害を無視し、それどころか、日本を代表する大企業がさらに中国にすり寄ろうとしていることは、これまでのジャニーズ問題を放置してきた体質そのままではないでしょうか。

【関連】ジャニーズ事務所を切り捨てても中国には“すり寄る”矛盾だらけの日本企業

とはいえ、これから中国にすり寄ろうと考える日本企業がある一方で、すでに中国に進出している日本企業は、「さすがに中国はやばい」と、実態を直視して撤退を考える増えてきています。

こちらも「自由時報」が9月27日に「日企大撤退 跟中國説拜拜(日本企業が大撤退 中国に「バイバイ」)という大きな特集記事を掲載しました。

● 日企大撤退 跟中國説拜拜

記事では帝国データバンクなどの数字を引用していますが、それによれば2020年から2022年の間に、中国に拠点を置く日本企業の数は13,600社から12,700社に減少し、10年ぶりの低水準となり、コロナ流行前と比較して約7%減少したとのこと。

前回調査(2020年2月)と比較すると、中国から撤退・所在不明企業は2,176社、倒産・操業停止企業は116社となっており、地域別では上海の272社が最も多く、次いで広東省の203社、山東省の152社となっているそうです。

もちろん、コロナによるサプライチェーンの見直しもありますが、尖閣諸島をめぐり中国がレア・アースの輸出を制限したり、最近の福島第一原発処理水放出をめぐる中国による水産物禁輸、さらにはスパイ容疑で日本人が逮捕される事件が頻発していることなど、中国と付き合うことのカントリー・リスクの大きさにようやく気づいたからでしょう。

日本の主権のみならず企業としての権利、自分たちの人権も危ういということが、現地で否応なく思い知らされているということもあるのだと思います。

メディアも企業も、ジミー・ライ氏の人権遵守を訴えることは民主国家の一員として当然のことであり、無関心でいることは人権意識の薄さを露呈することにほかなりません。

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