平成ウルトラマンの創造主はいかにして「ティガ」を生んだか?

 先日2022年9月9日にNHK・BSプレミアムで放送された『発表!全ウルトラマン大投票』で、1996年放送の『ウルトラマンティガ』の主役、ウルトラマンティガがウルトラセブン、ウルトラマンなどのレジェンドをおさえて堂々の1位を獲得しました。もともと大人気作品でしたから、この結果は快挙であっても奇跡ではないでしょう。

『ウルトラマンティガ』の人気理由は、これまでのウルトラシリーズを根本的に見直した世界観の再構築、CGを本格導入した迫力ある戦闘シーン、王道を外さず作り込まれたストーリー構成と、実にさまざまですが、ウルトラマンティガのデザインも大きいでしょう。

 テレビシリーズでいえば『ウルトラマン80』以来実に16年ぶりの「新ウルトラマン」の登場でしたが、これまでのウルトラマンが「かっこいい」デザインであったとすれば、ティガは紛れもなく「美しい」デザインでありました。いったい、どのようにしてこの美しいウルトラマンが誕生したのでしょうか。

「ティガ」をはじめ平成ウルトラマン、怪獣のデザインを担当されてきた丸山浩さんの画集『丸山浩デザイン画集 光の記憶 ウルトラマンティガ・ダイナ・ガイア編』が2022年7月に発売されたばかり。こちらを参考にしながら段階を追ってみていきましょう。

 丸山さんは1992年に円谷プロダクションに入社したデザイナー。着ぐるみ修繕の仕事を経験したのち『ウルトラマンネオス』よりヒーロー、怪獣デザインに深く携わりはじめます。

 そんな丸山さんのもとへ『ウルトラマンティガ』の前身プロジェクト「原始人ウルトラマン」が舞い込みます。この「原始人ウルトラマン」はその名の通り、原始的なイメージを持った荒々しいデザインで描かれています。平成以降のウルトラマンを特徴づける複数色の体色もこの頃には見られず、赤と銀のみで構成されています。

 この時のデザイン画が、かつて成田亨さんが「ウルトラマン」のデザインを構想していた時の途中経過部分のものと通じるところがあるのは見逃せません。

「ティガ」をデザインした丸山浩氏の著書、『丸山浩デザイン画集 光の記憶 ウルトラマンティガ・ダイナ・ガイア編』(ホビージャパン)

ティガの「えぐり」部分は単なるデザインではない?

「ティガ」デザインの美しさの肝となるのは「えぐり部分」です。基本的に「80」までのウルトラ戦士は、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」に別要素を加えて構成されていました。それだけに、頭部に大きく凹型の「えぐり」は真逆の彫刻的な、静かな美しさを生み出しています。この「えぐり」はどこからやってきたのでしょうか?

 資料を確認する限り、前身「原始人ウルトラマン」のラフデザインの時点ですでに「えぐり」の萌芽が現れています。新たなデザインを考える上で、まず丸山さんが採用したアイディアでもあったのです。

 なお丸山デザインにおいてこの「えぐり」はたびたび出現しています。例えば宇宙人ならキリエロイドやレギュラン星人などでも顕著に見て取れます。丸山さんの「美観」ポイントのひとつなのです。

 ではティガの「えぐり」は単なるデザインなのかといえば、違います。ウルトラマンは照明の関係でマスクが白飛びしてしまうことがあり、陰影をよりハッキリさせるために「えぐり」を採用したのです。意外にも「現場」の要請から導かれたものでした。つまりウルトラマンティガの美しさは「造形美」でもあり「機能美」でもあったのです。種を異にする「美」を両立させてしまったティガ……間違いなく芸術といえるでしょう。