敗色濃厚な気配が漂う

 2022年11月3日よりスタートした『艦隊これくしょん』の新作アニメ『「艦これ」いつかあの海で』(以下、いつ海)の第1話は、英題に含まれる「1944」の文字から極めて厳しい内容になるものと考えられていましたが、冒頭から予想が的中する結果となりました。

 黒煙を上げながら三々五々、集結する艦娘たち。深海棲艦との戦いは極めて厳しい状況にあることがうかがえます。はっきりと全員の姿を確認できるわけではありませんが、金剛型戦艦が1隻と、瑞鶴・羽黒と思われる艦娘を確認できました。さらに駆逐艦・雪風が敬礼しながら2本の魚雷を発射していますが、これは史実を元に考えると、油槽船の清洋丸を雷撃処分するために放たれたと思われます。なお、清洋丸は6月15日未明に駆逐艦「白露」と衝突事故を起こしており、白露が沈没の憂き目を見ています。『いつ海』の主人公である時雨にとっては姉艦に当たる白露が、戦闘を前に離脱を余儀なくされたのは相当の痛手だったのではないでしょうか。

 これらの状況を考えると、史実において1944年6月19日から20日にかけて行われたマリアナ沖海戦がモチーフとなった戦いが行われたと考えるのが自然です。史実においては空母大鳳、翔鶴、飛鷹を喪った惨憺(さんたん)たる大敗北で、すでに赤城、加賀、飛龍、蒼龍の四空母を喪失していた日本軍にとっては致命的な打撃であり、太平洋戦争の趨勢(すうせい)がほぼ決まった戦いでもありました。

 そして時雨は軽空母・龍鳳の護衛任務に就き、不意に現れた敵機との交戦に入りました。このとき龍鳳はすでにダメージを追っており、機関不調のため第一戦速しか出せない状況です。なお第一船速とは18ノット、時速に直すと約33キロであり、龍鳳自身の計画段階最大速力である26.5ノット(約50キロ)と比較するとかなりの低速移動を余儀なくされています。

 この戦闘で龍鳳は艦載機を出せませんでしたが、低速による揚力不足、もしくはこれまでの戦いで艦載機を全て失った可能性が高い状況です。おそらくは後者でしょう。明確な描写はありませんが時雨の奮闘により龍鳳は危機を脱することに成功したと思われます。龍鳳は史実では数少ない、終戦まで生き残った艦の1隻なのです。

史実と『いつ海』の異なるポイント

 ここでオープニングが流れますが、アーティストは龍玄としさん。そう、「X JAPAN」のToshlです。これには驚かされました。

 そして無事に帰還した時雨は負傷除隊する白露を見送ります。このとき白露がカバンに付けている国際信号旗はUとW。この組み合わせは「貴艦のご安航を祈る」を意味しており、時雨へのエールとなっています。史実では事故で沈没したはずの白露ですが、『いつ海』では負傷したとはいえ生き残りました。これはのちのち大きな意味を持つ描写かもしれません。

 なお、このとき時雨は第27駆逐隊に所属しているのですが、すでに時雨を残し全滅したことが明かされます。しかし史実ではマリアナ戦後、しばらくは駆逐艦・五月雨も27駆として生き残っていました。五月雨は白露型の6番艦であり白露の見送りに来ないのは少々不自然なので、おそらくいないのだと思われます。これも史実と『いつ海』の異なるポイントと言えるでしょう。

 僚艦を喪った時雨が新たに配属されたのは、第一遊撃部隊第三部隊。艦隊符号は1YB3H、主力部隊のおとりとなる艦隊でした。

 主力となるのは戦艦の扶桑と山城、さらに航空巡洋艦の最上、駆逐艦の満潮・朝雲・山雲、そして時雨を加えたこのメンバーは、史実では西村艦隊と呼ばれる編成でした。スリガオ海峡で米軍相手に戦って戦って戦い抜いて、そして時雨を残し全滅したことでも知られています。

 絶望が待っていることを知りながら、1YB3Hの面々は、出撃までの時間を大切に過ごし、そして出撃の時を迎えました。

 おそらく2話は凄惨なストーリーが待っていることでしょう、わずかな希望は、四航戦の日向たちが最上に託した特別な瑞雲と水上戦闘機・強風改の存在です。史実の最上が装備していなかった強力な航空機が、僅かでも助けになることを願ってやみません。