上の空になってる場合じゃなかった!?

『名探偵コナン』の連載が開始してから約28年――。これまでコナンたちはさまざまな事件に遭遇してきましたが、そのなかには犯人の勘違いから起きてしまった虚しき事件も少なくありません。今回は、特に印象的な「勘違い殺人」に注目しました。

●工藤新一が解いた殺人事件を「推理ミス」と勘違い

 まずご紹介するのは、単行本62巻に収録されているエピソード「殺人犯、工藤新一/新一の正体に蘭の涙」。この事件の犯人・屋田誠人(おくだまこと)は「1年前の村長夫婦殺害事件の結末に納得がいかない」との理由から、推理した工藤新一のことを酷く恨んでおり、新一を社会的に抹殺するために大胆過ぎる復讐を決行しました。

 自身の顔を「憎き名探偵気取りのバカな高校生の顔」にまで変えて復讐に及んだわけですが、実際は新一の推理に何の落ち度もなかったことが明らかになります。確かに公表した推理と事件の真相はやや異なっていたものの、内容が内容だけに新一はあえて真実を伏せていたのでした。

 では、ちゃんと真実を伝えなかった新一が一番悪いのかというと、そうでもありません。じつは誠人だけには城山巡査を通して、ちゃんと真実を伝えていました。にもかかわらず本人が知らなかったのは、「尊敬していた村長が妻を道連れに無理心中した」という事実に衝撃を受け過ぎて上の空だったため。ちゃんと話さえ聞いていれば人生を棒に振らずに済んだのに……と思うと、何ともやるせない事件ですね。

●妹が元カレに言い寄ったと勘違い

 なんでもかんでも自分の真似をしてくる妹。とうとう5年も付き合った元カレにまで手を出され、挙げ句の果てに彼と結婚することになったら……。そりゃあ誰だって、妹に殺意を覚えてしまうかもしれません。

 単行本20巻に収録されている「バスルーム密室事件」の犯人・青島全代はそのことが原因で、妹を殺害してしまいます。しかし、のちに言い寄って結婚を迫ったのは元カレの方だったことが発覚。「自分からしつこく言い寄った」と全代に伝えていたのは、彼女のプライドを守るための妹なりの気遣いだったのです。

 とはいえプロポーズをOKする妹も妹と思いつつ、一番の戦犯はやはり妹に言い寄った元カレでしょう。ネット上でも「お前が悪い」「はい、最低」「ゲス野郎じゃないか」といった声が相次いでおり、『名探偵コナン』屈指のクズ男の称号を手にしていました。

●じつは両想いだったのに勘違いで……

 最後にご紹介するのは、キムタツこと木村達也が殺害される「カラオケボックス殺人事件」。事件の被害者である達也は人気ロックバンド・レックスのボーカルで、彼を殺害した犯人は元メンバーで現マネージャーの寺原麻理でした。

 じつはふたりは相思相愛だったのですが、彼にふさわしい女になろうと麻理が顔を整形したことで達也の態度が豹変します。会う度に彼から「ブス、ブス」とけなされ、バカにされる毎日……。とうとう我慢の限界に達した麻理は達也を手に掛けてしまうも、本当は「どうして他人の目を気にするんだ」「どうしてオレのためなんかで顔を変えたんだ」というのが彼の本心だったのです。

 素直になれなかった青年と素顔を隠した女性のすれ違いから生まれた悲しい結末。生前「オレはその女が戻って来るのをずーっと待ってんだよ」と語った、達也の言葉が虚しく心に残ります。

 真相を知っていれば殺す必要がなかっただけに、なんとも後味の悪さを感じてしまいますが、それはきっとコナンたちも同じなのでしょう……。