原作での登場はいずれも30巻以降?

 マンガキャラのなかには、主人公と同等かそれ以上に世間から認知されていたり、「原作は読んでないけどかっこいいと思う」「スピンオフだけ読んでみた」といった形で、人気を集めるサブキャラクターも見られます。スピンオフ作品や、アニメ、実写版など多岐にわたる活躍から「原作も読んでみよう!」と気軽に手に取るも、意外と「お目当てのキャラの登場までが長い」ケースも少なくありません。

●実写作品も大ヒット!『ジョジョの奇妙な冒険』岸辺露伴

 1987年から「週刊少年ジャンプ」および「ウルトラジャンプ」で連載されているマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)には、歴代主人公に匹敵するほど知名度のあるキャラクター・岸辺露伴が登場します。

 もとから人気のキャラでしたが、露伴が主役のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』を原作とする実写ドラマが、2020年から定期的に放送されたことで、さらに認知度を上げました。露伴を演じた俳優・高橋一生さんのビジュアルや周囲のキャラクターの作り込み、設定を変えながらも大きく逸脱しない脚本は、原作を知らない視聴者からも高く評価されており、5月26日からは映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』も公開予定です。

 しかし、ドラマから原作に触れた人のなかには、露伴がなかなか登場しないことに驚く声も少なくありません。『ジョジョ』が部ごとに主人公が変わる作品であることは有名ですが、露伴の初登場は第4部(原作コミックス・第34巻)までかかり、第1部から読み進めようとすると、なかなかの時間がかかります。

 露伴はジャンプに連載作品を持つ売れっ子作家である一方、作品のネタを求めて自ら危険なことにも飛び込んでいく変人キャラです。特に初登場時、自宅を訪れた広瀬康一の前で蜘蛛をペンで解剖し、「味もみておこう」と蜘蛛を舐める……という強烈なシーンは、読者に衝撃を与えました。

  口が悪いながらも、心根は優しく「ツンデレキャラ」な一面を持つほか、「金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァーッ!!」「ぼくは『読んでもらうため』にマンガを描いている!」などの名言を残すなど、究極の芸術家気質である点もまた、人気の理由なのかもしれません。

●麦わらの一味に匹敵する人気ぶり!『ONE PIECE』トラファルガー・ロー

『ONE PIECE』(ワンピース)には数多くの人気キャラが登場しますが、特に「ハートの海賊団」を率いる「最悪の世代」の海賊トラファルガー・ローは圧倒的な支持を受けています。実際に2021年に開催された「第1回ONE PIECEキャラクター世界人気投票」では、上位5位のなかで唯一麦わら海賊団のメンバー以外からランクインする結果となりました。

 そんなローは、原作コミックス第51巻において初登場します。ローは麦わらの一味と同時期にシャボンディ諸島に到着した、懸賞金が億を超えるルーキーたちのひとりとして登場しています。初登場時は「死の外科医」という異名を持ち、目の隈が印象的な細身の海賊として異様な雰囲気を放っていましたが、ストーリーが進むにつれてその性格や、壮絶な過去が明らかになっていきました。

「パンクハザード編」から「ワノ国編」まで麦わら海賊団と同盟を組んだローは、自由奔放なルフィに振り回されてツッコミを入れたり、『ONE PIECE』の世界で人気の絵物語「海の戦士ソラ」のファンだったりと、感情豊かでちょっと子供っぽい一面を見せています。クールなイメージからのギャップも、女性ファンにウケているのでしょう。

●ファンも急増した100億の男!『名探偵コナン』安室透

 2018年に公開された劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』におけるキーパーソン・安室透は、映画のヒットにより世間にその名を轟かせました。映画館、TV、ネット、さまざまな媒体で予告編、広告が出たので、当時かなりの人が彼の顔と名前を覚えたのではないでしょうか。

 もともと、安室透の初登場は原作マンガ75巻で比較的新しいキャラクターであり、原作からしばらく離れていた読者からの知名度は高くありませんでした。安室は毛利小五郎に弟子入りする私立探偵かと思いきや、次第に「黒の組織」の一員「バーボン」、公安捜査官「降谷零(本名)」と3つの顔を持つ、ミステリアスな一面が明らかになっていきます。さらに高い推理力だけでなく、料理や車の運転、高い戦闘力、ボクシングやテニスの才能まで持つなど、「エリートすぎる」点も女性を「沼落ち」させる要因となりました。

 劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』が上映されていた際は、ファンが「作品を劇場で鑑賞して安室さんを(興行収入)100億の男にしよう」といった呼びかけを行い、「降谷」の印鑑が多数売れ、「安室の女」という言葉が生まれるなどの現象も発生しています。その後も安室は原作、スピンオフ、アニメ、劇場版で大きな活躍を見せ、マンガ・アニメとは関係のない雑誌でも表紙に登場するなど、圧倒的な人気を獲得しました。