かつては残虐超人として恐れられていた
2023年にアニメ新シリーズの制作が決定した『キン肉マン』は、魅力的なキャラクターたちによるバトルが人気の長寿マンガです。なかでも中国出身のラーメンマンは、多彩な技と人格が揃った人気者で、1983年発表の第2回キャラクター人気投票では1位を獲得しています。
ただ、ラーメンマンは最初は正義超人ではなく、ブロッケンマンやカレクックとともに「世界三大残虐超人」のひとりとして登場しました。「第20回超人オリンピック」1回戦ではドイツ代表・ブロッケンマンと対戦し、ファンから今でも「トラウマもの」との声が上がる残虐ファイトを繰り広げます。
口に足を突っ込むなどのエグイ攻撃の後は、「キャメルクラッチ」で相手を真っぷたつにしました。さらにアニメではキャメルクラッチの後は、ブロッケンマンを平たく伸ばして「麺」にして食べてしまったのです。忘れがたい衝撃シーンでした。
その後、キン肉マンと準決勝の「氷上デスマッチ」で対戦したラーメンマンは、敗北を喫したものの「全力を尽くした戦い」に、これまで感じたことのない充実感を得ます。ただ、キン肉マンが決勝進出で浮かれ過ぎていたため、怒りを覚えたラーメンマンは、3位決定戦にてすでに負傷していたテリーマンを、ボコボコにしました。
そして、雨のなかで血の涙を流し、浮かれているキン肉マンはこのままでは決勝でロビンマスクに負ける、準決勝での戦いを誇りたい、運に頼らないで欲しいと訴えるのです。これを見たキン肉マンは心を入れ替えて練習を始めます。友情に目覚めたラーメンマンの姿は、上記のトラウマ級の描写も記憶に新しい当時の読者にも、「いい奴じゃん」と思わせました。
そんなラーメンマンのベストバウトとも言われているのが、「第21回超人オリンピック」準決勝でのウォーズマン戦です。有数の実力者として注目されていたラーメンマンでしたが、ウォーズマンに全ての技を予測されてしまい、彼の脳裏には「敗北」がよぎります。それでもラーメンマンは、後に続くキン肉マンのために、少しでもウォーズマンの技を出させようとしました。
そして、最後はウォーズマンの必殺技である「スクリュードライバー」を受けて、ラーメンマンは植物状態になってしまいます。しかし、その後ウォーズマンと戦うキン肉マンを、「心の声」で激励しました。
その後、「終点山」の特殊なガスを出す「霊命木」を加工した、「モンゴルマンマスク」を被ってモンゴルマンとして活動していたラーメンマンですが、「キン肉星王位争奪編」でラーメンマンとしての「復帰戦」を迎えます。試合時間わずか37秒で、相手のモーターマンを再びのキャメルクラッチで真っぷたつにしたラーメンマンは、キン肉マンゼブラから「悪魔の強さ」と称されました。
モーターマンの攻撃で流血した際の「こ…これだ、この血だ… うおお…久びさにリングへもどってきたという感じがしてきたぜ」というセリフも少し不穏でしたが、もちろん残虐超人に戻ったわけではありません。その後、バイクマンとの金網デスマッチでは、ズタボロにされながらも、なんとかキン肉マンに王位を継いでほしい一心で、新技「九龍城落地(ガウロンセンドロップ)」で撃破しました。
数々の名バトルでスピンオフ『闘将!!拉麺男』も作られるほどの人気キャラだったラーメンマンですが、『キン肉マン』の原作担当・ゆでたまごの嶋田先生は「ラーメンマンは捨てキャラだった」と告白しています。2015年06月30日に『キン肉マン』51巻の発刊を記念して開催された、トークイベント「ゆでたまご・嶋田隆司×ケンドーコバヤシ対談 『キン肉マンが●●って、正気ですか!?』」での発言でした。
嶋田先生は当初、同じ「第20回超人オリンピック編」から登場したカナディアンマンが推しでしたが、ラーメンマンが子供たちに受けたことで方向転換したそうです。ケンドーコバヤシさんも同イベントで言及していましたが、ラーメンマンは人気が出るにつれ特徴的だった頬骨もなくなり、どんどん「イケメン化」していきました。
ちなみに、2006年の「All About」でのインタビューでは、嶋田先生は「子供でも落書きしやすいから」という理由で、ラーメンマンを一番気に入っているキャラとして挙げています。また、『キン肉マン』の実写版を作ろうとする人びとを描いたフェイクドキュメンタリーのドラマ『キン肉マン THE LOSTLEGEND』では、作画の中井先生も、「描きやすいからラーメンマンが好き」と語っていました。
描きやすさという点でも人気のラーメンマンは、2011年以降の新シリーズが始まってからの「キン肉マン超人総選挙」では以前ほど上位でのランクインはしなくなりましたが、活躍を続けています。アニメ新シリーズではどのエピソードを描くのかまだ発表されていませんが、新しくアニメで動くラーメンマンの活躍に期待が高まります。