人びとの想いを託されたMSたち
『ガンダム』シリーズには、バリエーションに富んだ多種多様なMS(モビルスーツ)が登場します。その多くは敵機や敵艦を撃退するために製造された「兵器」ではありますが、なかには敵機撃墜以外のかたちで戦闘を終結させた機体も存在しました。
●ハイスペックなMSが起こした奇跡?
最初に紹介するのは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した「ν(ニュー)ガンダム」です。同機の設計にも携わり、搭乗したのは、一年戦争でガンダムに搭乗したアムロ・レイでした。
劇中、「νガンダムは伊達じゃない!」というアムロの発言もありましたが、νガンダムはこれまでの「ガンダムタイプ」の集大成のような機体です。ニュータイプ専用機として高い性能を誇るだけでなく、攻防一体のオールレンジ攻撃用の武装「フィン・ファンネル」を装備し、新素材の「サイコフレーム」を導入しています。
そんなハイスペックなνガンダムですが、MS戦でシャアが搭乗するサザビーを圧倒しただけでなく、地球に向かって落下を開始していた小惑星「アクシズ」を謎の光を発するとともに押し返すという不可解な現象を起こします。結果的に戦闘を終結させるとともに、地球に暮らす多くの人びとの命が救われました。
これはνガンダムのサイコフレームに集積された人びとの感応波が物理的なパワーに転化され、サイコ・フィールドが発生したことで起こった奇跡などと言われています。
●4機のガンダムの力を結集させた不思議な力
次に紹介するのは最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場した「ガンダム・キャリバーン」です。パイロットを喰らう「怪物」として恐れられた旧世代型のMSで、搭乗者は主人公のスレッタ・マーキュリーです。物語の終盤に登場し、おもに最終決戦で活躍しました。
『水星の魔女』には「パーメットスコア」という要素があり、段階ごとにランクが分かれています。高いパーメットスコアに上がるほど機体性能は上がりますが、パイロットには多大な負荷がかかり、パーメットスコア4を超えるとデータの逆流によって搭乗者は死の危険にさらされます。
ガンダム・キャリバーンは、パイロットの生命を保護するフィルターを備えていないため、他の機体よりも高いパーメットスコアを発揮することが可能です。ようするに機体性能を追求するあまり、パイロットの生命保護を二の次にしたコンセプトの機体だったのです。
そのため作中でスレッタは、パーメットスコア8を超えるという無茶な選択をしました。このスレッタの決死の行動によって、無人のガンダムまで共鳴し、キャリバーンのもとに、エアリアル、シュバルゼッテ、ファラクトという4機のガンダムが集結します。
そしてスレッタの乗るキャリバーンを中心とする4機のガンダムは、極大のデータストーム空間を展開し、その力は、すでに発射シークエンスに入っていた惑星間レーザー送電衛星「ILTS」を強制停止させるという奇跡を起こしました。

驚くべき方法で戦争を終結?
●MSの力で地球外生命体と対話?
最後に紹介するのは、『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』に登場する「ダブルオークアンタ」です。科学者イオリア・シュヘンベルクの予見した地球外生命体の襲来に備えて、イアン・ヴァスティによって設計されたMSです。
純粋種のイノベイターとして覚醒した刹那・F・セイエイのために開発されたMSで、数々の武装のほかにイノベイターとしての能力に反応するモード「クアンタムバースト」が搭載されています。
それは設計者であるイアンにも想像がつかないほどの未知数な機能ですが、ダブルオーライザーで地球外生命体と意識共有を試みたときの失敗を糧に、改良が施されていました。
地球外生命体・ELSとの戦闘時、刹那は「クアンタムバースト」を用いて対話に成功、人類はELSとの共存の道を歩むことになりました。
これらはいずれも敵機と戦闘するために開発されたMSですが、最終的には戦闘以外の手段で戦争を終わらせ、結果的に平和をもたらしました。それゆえに多くの視聴者の心に残り、今もなお支持されているのかもしれません。
※本文の一部を修正しました。(2023年9月26日 16:02)