戦艦の主砲はMSより巨大

 アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズには多くの宇宙艦艇が登場します。よく「戦艦」とまとめられますが、大型で砲撃力を重視した「戦艦」系と、中型で数を揃えた「巡洋艦」系、戦艦に近い大型艦ながら、モビルスーツ(MS)搭載能力が充実している「強襲揚陸艦」系の3系統が大半です。

 このいわゆる「戦艦」の設定で特に不思議に思うのが、「戦艦並み」と引き合いに出されることです。たとえばMS「ガンダム」が装備する「ビームライフル」は、プラモデル(MG 1/100)の説明書には「一年戦争当時の戦艦の主砲クラスの威力を誇り」と書かれています。

 これは不思議な設定と感じます。

 ビームライフルはガンダムの身長の半分くらいの大きさですから、長さ9m程度の兵器です。一方、一年戦争時の「戦艦」であるマゼラン級の主砲塔は、砲身だけでガンダムと同じくらいなので36m程度、グワジン級だと45mくらいあります。

「ビームライフルとマゼラン級戦艦の主砲が同等の威力」というのは、砲塔サイズが9mくらいの日本海軍九八式8cm高角砲(砲弾重量5.99kg)と、砲塔全長36mの九四式40cm砲(実際は46cm。砲弾重量1460kg)が同等の威力、というようなものです。両者の威力が変わらないのなら、戦艦にサイズを食う戦艦主砲塔を搭載する利点はないと思われます。

 であるなら、「戦艦に死角が生まれないよう、無数のビームライフルを搭載」した方が、遥かに強くなるはずです。プラモデルを見る限り、マゼラン級戦艦の砲塔を撤去して、各部にガンダムのビームライフルを載せれば、100丁くらいは搭載できるのではないでしょうか。とはいえ、実際にはそうなっていません。

 他方、全長90mのメガ・ビーム砲を装備する「ガンダム試作3号機 デンドロビウム」を立体化した「HG メカニクス 1/550 RX-78GP03 デンドロビウム」の説明書には、「当時の戦艦の最大出力と同等」とあります。劇中描写でも、かすっただけでムサイ級巡洋艦が溶解するなど、ビームライフルとは比較にならない大威力が描写されています。

 つまり「ガンダムのビームライフルは戦艦の主砲と同等の威力ではない」ということです。ではなぜ「戦艦の主砲と同等」といわれるのでしょうか。

 これは「メガ粒子砲」の設定と関わります。艦砲もビームライフルもメガ粒子砲であり、そしてメガ粒子は「状態維持が難しく、一定以上のエネルギーを消費すると、元のミノフスキー粒子に戻って雲散霧消」する性質を持つため、ビームの流れ弾によって、戦場から離れた地域への被害が拡大しない、という設定です(この設定がなく、敵味方が射程無限のビームを撃ちあえば、スペースコロニーや月面都市は流れ弾でいずれ壊滅するでしょう)。

 一方、メガ粒子の元になるミノフスキー粒子が、一定以上の濃度で充満した空間を「Iフィールド」と呼び、メガ粒子を偏向したり拡散したりする性質を持ち、ビームバリアとしても機能します。

 同様に連邦軍の「パブリク」突撃艇が展開する「ビーム攪乱幕」についても、その元となる物質については諸説あるものの、濃いミノフスキー粒子を散布してIフィールドを発生させ、その宙域を通過するメガ粒子砲のエネルギー消費を大きくし、雲散霧消させている、と解釈できるかもしれません。

『機動戦士ガンダム』で描かれる戦闘には、宇宙艦艇からミノフスキー粒子が散布される旨のくだりがあり、上述したIフィールドの仕組みから察するに、これにはレーダーの阻害だけでなく、長距離のメガ粒子砲が減衰、拡散しやすくなる効果もあると考えられます。

 やがて戦端が開かれると、まず戦艦や巡洋艦が砲撃を開始し、その援護を受けてMSが発進するというプロセスが踏まれていました。つまり「超高出力のメガ粒子砲」である戦艦主砲は、(MSのビームライフルに比べ)長距離でも雲散霧消しにくいため、後方からMSを援護できるということでしょう。

 そして白兵戦用兵器であるMSは、目標に近寄ってからビーム兵器を発砲するので、長距離を飛んできた艦砲に比べ、目標までのエネルギーの減衰は低いと見るのが妥当です。こうしたことから、「長距離でエネルギーを消費した戦艦の主砲」と「目標のすぐ近くで発砲したガンダムのビームライフル」は同等の威力になる、ということなのでしょう。

 よって「戦艦にビームライフルを100丁搭載」するようなことはしない、というわけです。そんなことをしたら、長距離で有効なビーム砲がなくなってしまいます。

 類似設定である「ZZガンダムのハイメガキャノンはコロニーレーザーの1/5の威力」「機動戦艦ネェル・アーガマに搭載されたハイパー・メガ粒子砲は、コロニーレーザーと同等の威力」についても、それぞれの平均的な戦闘距離(標的までの距離)を加味した上での表現と思われます。劇中描写を見る限り、コロニーレーザーは、MSはもちろん艦艇搭載兵器よりもはるかに長射程、高威力の兵器ですから。

「ハイメガキャノン」は額に装備されたメガ粒子砲。「HG 1/144 MSZ-010 ダブルゼータガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

戦艦の装甲がずいぶんと弱い理由もこのあたりに…?

 これにより、もうひとつの疑問点が説明できるように感じます。『ガンダム』における宇宙艦艇は打たれ弱い存在、という点です。

 マゼラン級戦艦を沈めたMS「ジオング」のビーム砲がガンダムに命中した際には、「ガンダムシールドと左腕」を吹き飛ばすにとどまりました。つまりマゼラン級戦艦の装甲は、ガンダムシールドと同等かそれ以下の防御しかできていない、ということになります。これほどの「弱装甲」には、なにかしら合理的理由があるはずです。

 繰り返しますが、ジオングはマゼラン級戦艦を撃沈していますから、マゼラン級戦艦はガンダムシールドより防御力がないことになるわけです。これは「MSで攻撃されることを想定していなかった」からでしょう。遠距離砲撃戦であれば、メガ粒子砲の威力は減衰し、ミノフスキー粒子散布やビーム攪乱幕の展開で減衰を加速することもできます。砲撃戦で不利になればそのように対処すればいい、と割り切った設計なのではないでしょうか。

 考えてみれば、マゼラン級などの地球連邦軍宇宙艦艇は、ジオン公国の軍拡に対応すべく、宇宙世紀0070年代に急きょ整備されたものです。当然、コストダウンは求められたでしょうし、それまで戦争は一度もなかったわけですから、実戦経験もありません。結果として「張り子のトラ」のような艦艇が大量建造された、ということでしょう。

 逆に「ホワイトベース」は打たれ強さを発揮しています。これはMS搭載艦としてある程度、近距離から攻撃を受けることも想定し、コストをかけて重防御にしていたのでしょう。

 ちなみに『機動戦士Zガンダム』以降は、ビーム兵器でも「シールドで受けて、軽度のダメージ」という描写が増えます。宇宙艦艇も耐ビームコーティングがされていて、『機動戦士ガンダム』の時ほどは沈まないのでしょう。

『Z』の最終決戦で、戦艦「ラーディッシュ」が意図して前進しMS「ガンダムMk-II」をかばったことで撃沈されていますが、逆に距離を保っていればMSのビームライフル程度の火力は減衰するので、それほど脅威ではないということだと思います。だから弾幕やMSの配置で「近づかせない」防御戦術が重要になっているのだと考える次第です。