「全く、しょーがないなあ」と思いつつも粋な対応?
関係者にとっては「ついこの間」と想うことでも、何かの折に「いまはこうなのか!」と驚かされることがあります。
1980年代にアニメ系雑誌の付録になった『機動戦士ガンダム』に登場する人気キャラクター「セイラ・マス」の「ヌードイラストピンナップ」について、最近ちまたで騒がれています。当時の関係者はどう考えていたのでしょうか? というような質問をいただきました。
私個人は正直なところ、すっかり忘れていて「ああ、そういえばそんなものがあったような気も……」という程度の認識なので、このお問い合わせには正直ちょっと驚きました。
そこで、僅かな記憶をたどりつつ、当時のサンライズ(現:バンダイナムコフィルムワークス)社内を知る古参のスタッフとも話してみました(名前は伏せさせて頂きます)。
当時のサンライズの制作現場では、私も含め、さして気にもとめておらず「全く、しょーがないなあ(苦笑)」くらいのものでしたし、特段の嫌悪感なども表してはいなかったように記憶します。
強いて言うなら、作っていた側にとっては思ってもいなかった広がりが出てしまい、「キャラクター表現にも新たな気遣いが必要になっていくのかもな」のような感覚が生まれたかもしれません。
が、会社側の広報や責任ある立場のスタッフは、さすがに出版側に一応の注意喚起はしたそうです。
ただ、そこでも案外「粋」だったのは、絵そのものが「作品とは無関係の人が描いたものであり、クオリティーも納得の行くものではない」という方向の一過言が含まれていたとかいないとか。
つまりサンライズ側としては「喜ばしくはないが、あの出版物に限り一応許可」という形になったそうです。
SNSを筆頭として、誰でも自分の意見や作品などを広く発表できる現代は、私のような昭和世代からすると、随分自由な世の中になったなと感じますが、「性描写」に限っていえば、コンプライアンス(法令厳守)が当時よりかなり厳しくなっている感はあります。
もちろん、作品ジャンルにもよるので一概には言えませんが、かつてのTVアニメーションで、男児をターゲットにしていた作品などでは「パンチラ」と呼ぶ、ヒロインキャラクターのスカートの隙間から白い下着がチラリと覗くシーンを入れると人気が出る、などと言われていたこともありました。
いまだったら親御さんからクレームが出ても不思議がない話ですが、当時は「いやねぇ」で済ましてくれた時代でもあったのです。
しかし『ガンダム』のヒットほか、ハイティーン以上のアニメファンが世を騒がすような時代になると、OVAなど、公共電波を通さないで視聴できる映像商品が手軽に手に入るようにもなっていきます。
すると「ロリコン」「アダルト」など、現在なら「R指定」に属する世界がアニメーションでも制作、販売されるようになりました。
こうした背景のなかで、くだんのセイラのピンナップのようなものが生まれて行くのは、ある意味、必然だったかもしれません。
しかし、他方、凶悪な性的犯罪を起こした犯人が、こうした映像ソースを「保持していた」ということから、犯罪原因のひとつでは? と、いささか偏見に感じられる風潮も起こります。
この風潮をどう捉えるかは個々の判断ですが、古今東西、一般大衆というのは、悪くいえば「下世話」な話題に集まりやすいものです。
あのピンナップに、純粋に美意識や憧れを抱き、いまも大切に想うファンの方々がいらっしゃることは、決して「不届き」なことではないと私個人は思います。
ただ「下世話人気」ゆえに、よからぬことを考えたり、他者版権物を勝手気ままに利用して儲けよう、などは「不届き千万」の行為です。
そんな「不届き千万」な輩に、あなたが大切に想うキャラクターたちが悪用されぬよう、考えての発言をいただければありがたいと想うばかりです。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。


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