けっして色あせることのない「母の思い出」

 2021年9月25日にTV初放送された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が平均世帯視聴率20%を超え(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、10月10日(日)からは、「無限列車編」が新エピソードを加えた全7話としてTV放送されることが発表されました。炎柱・煉獄杏寿郎の人気はますます上がりそうですね。

 ファンからは、尊敬と愛情を込めて「煉獄さん」と呼ばれる杏寿郎を最期まで支え、励ましたのは亡き母の言葉であり、母の思い出でした。母と杏寿郎少年のとても印象的なシーンであり、「風鈴の音だけで涙が……」なんて言うファンもいるほどです。

 この記事では、煉獄杏寿郎を含め、『鬼滅の刃』で活躍する鬼殺隊の隊士たち4人の心に残る「母の思い出」をご紹介します。

※この記事には、「無限列車編」及び、まだアニメ化されていないシーンについての記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。

●煉獄杏寿郎の母・瑠火

 煉獄杏寿郎の母、瑠火(るか)は、強い心を持つ、凛とした美しい人でした。杏寿郎が幼い頃に亡くなりましたが、彼の生きる道しるべとなる大切な言葉を残しています。

「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」

 このシーンを「母との思い出」として見る時、もうひとつ、注目していただきたい言葉があります。病床の母の傍らにしゃんと背筋を伸ばして正座する杏寿郎少年は、受け答えもきびきびしており、とてもおりこうさんですが、そんな彼がふっと表情をゆるませる瞬間があるのです。それは、母の胸に抱きしめられ、「強く優しい子の母になれて幸せでした」という言葉を聞いた時でした。なんとも言えないうれしいような、悲しいような、寂しいような……。涙をこらえているようにも見えます……。

 杏寿郎は賢い子です。代々、炎柱を輩出してきた名家の跡取りとして母の言葉を胸に刻むと同時に、自分を抱きしめた母の深い愛情や悲しみを感じ取ったのでしょう。そして、上弦の参・猗窩座(あかざ)との死闘のさなか、母のこの言葉に答えます。「母上 俺の方こそ 貴方のような人に生んでもらえて光栄だった」と。

 常に前向きで心折れることなく、「弱き人を助ける」という「責務」を全うした杏寿郎。そのブレない強さと優しさは、母が教えてくれたものでした。

●竈門炭治郎の母・葵枝

 炭治郎の母、葵枝(かまど・きえ)は、町でも評判の美人だったという禰豆子とそっくりで、とても美しく、夫の炭十郎(たんじゅうろう)が亡くなった後、6人の子供たちを育てるたくましさも兼ね備えていました。無限列車で下弦の壱・魘夢(えんむ)が炭治郎に見せた夢の中に出てくる母の姿からは家族思いで優しく、料理上手なことも分かります。

 亡くなった後も、葵枝は炭治郎や禰豆子のピンチを救っています。雪山で炭治郎に禰豆子を託し、那田蜘蛛山では禰豆子を覚醒させ、そして「遊郭編」でも母の思い出がとても重要な役割を果たすのです。

 音柱・宇髄天元から「派手に鬼化が進んでやがる」と言われるほど様変わりしてしまった禰豆子。荒れ狂う彼女を鎮めたのは、母と過ごした幸せな日々を思い出させる、あるものでした。それは炭治郎と禰豆子に家族の絆を思い出させました。

●嘴平伊之助の母・琴葉

 嘴平伊之助は、荒れ山でイノシシに育てられました。とはいっても、当然、生みの母はいるわけです。その存在は那田蜘蛛山の戦いで父親役の鬼に頸椎を握りつぶされる直前の一瞬に見た走馬灯の中に見ることができました。しかし、伊之助本人は、それが誰であるか分かりません……。

 しかし無限城の戦いで対峙した上弦の弐・童磨が伊之助によく似た美しい女性、琴葉(ことは)を思い出したと伊之助に語って聞かせるのです。その話を聞くうちに伊之助の脳裏には琴葉の記憶がよみがえり……。母を覚えていないと言いきった伊之助でしたが、琴葉の笑顔とぬくもりは、心の奥の奥にずっとあったのです。

●不死川実弥と玄弥の母・志津

 風柱・不死川実弥と玄弥の母、志津(しづ)の死は、実弥と玄弥の関係とそれぞれの心に深い傷を残しました。

 不死川兄弟の母は小柄でしたが、よく働く人でした。そして体格の良い父が子供たちに乱暴しようとすると、ひるむことなく体を張って子供たちを守ったのです。そんな母の姿を見てきた実弥と玄弥は、父親が亡くなった後、ふたりで力を合わせて母とほかの兄弟たちを守ろうと誓い合いました。その後続く苦悩の日々の前の、幸せな思い出です……。

 しかしその後、予想もしなかった悲劇が彼らを襲ったのです……。

* * *

 日々、危険な戦いに身を投じている鬼殺隊の隊士たち。母との思い出は、彼らの心を支え、つかの間の安らぎを与えてくれることでしょう。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記