デビュー直後からヒロイン役を演じた実力派

 11月12日は声優の久川綾(ひさかわ・あや)さんのお誕生日です。おめでとうございます! 久川さんは多くの人気キャラとともに日本のアニメ史を作ってきたレジェンド声優のひとり。その軌跡を少しだけ振り返ってみましょう。

 久川さんが声優を目指すきっかけとなった作品が、アニメ史の転換期を生んだ劇場版『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』(1978年)でした。それゆえリメイク作品となった『宇宙戦艦ヤマト2199』(2013年)の新見薫役に選ばれた時は、監督の出渕裕さんに感謝メールを送ったほど喜んでいたそうです。ちなみに「自分の声で波動砲を撃ってみたい」というほど筋金入りのヤマトファンとのこと。

 高校卒業後、久川さんは上京して養成所入りし、声優への道を歩むことになります。デビュー作は海外ドラマ『ストーリーテラー』の第2話に登場したリディア役の吹き替えでした。それからアニメにも出演するようになり、『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマーV』(1989年)では、準レギュラーのマイクロトランスフォーマーのボーダーと、人間の女の子のジョイスを演じます。

 そして、『新ビックリマン』(1989〜1990年)のプッチー・オリン役で初めてのレギュラー、ヒロイン役に抜てきされました。しかも「ワッPズ」名義でオープニング主題歌を歌っています。この「ワッPズ」は作品のメインレギュラーのチームで、ベテランの藤田淑子さん、当時は中堅だった塩沢兼人さん、千葉繁さんがメンバーでした。

 このプッチーというキャラは、当初「プープー」「プッチー」「ワッピー」などとしかしゃべらないキャラで、デビューして間もない頃の久川さんも演技には相当苦労したことと思います。ちなみに途中で登場したゲストキャラのパソンの声も担当。こちらでは元気で快活な少女の役を演じていました。

 こうして徐々に活躍を見せ始めた久川さんは、リメイク版の『魔法使いサリー』(1989年)ではレギュラーキャラの春日野すみれ、劇場作品では『CAROL』(1990年)のキャロル・ミュー・ダグラス、『魔物ハンター妖子』(1990年)の真野妖子といった女性主人公役を演じています。このほかにも最近リメイクされた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(1991年)では、主要キャラのレオナを演じていました。

 この頃の久川さんの演じたキャラで筆者が思い出深いのは、『RPG伝説ヘポイ』(1990年)ミーヤ・ミーヤです。劇中での生き生きとした演技も最高でしたが、エンディングテーマの「ダイナマイトCAT」での歌声はもちろん、新人なのに作詞まで担当していたことを印象深く覚えています。

『ハートキャッチプリキュア!』 (C)ABC・東映アニメーション

セーラーマーキュリーがきっかけで一躍スターダムに!

 久川さんと言えば、多くの方は『美少女戦士セーラームーン』(1992〜1997年)の水野亜美/セーラーマーキュリーで記憶していることでしょう。当時はセーラー戦士のなかでも特に人気が高いと言われ、アニメ雑誌でもクローズアップされることが多いキャラでした。『スペシャルプレゼント 亜美ちゃんの初恋 美少女戦士セーラームーンSuperS 外伝』という異例のスピンオフ主演劇場版が制作されたことからも、当時の亜美人気が分かります。

 余談ですが、後に久川さんは『ハートキャッチプリキュア!』(2010年)で月影ゆり/キュアムーンライトを演じていることで、数少ないセーラー戦士とプリキュアを担当した声優と言われていました。しかし、『聖闘士星矢Ω』(2012〜2014年)で演じたソニアが蠍座の黄金聖衣をまとっていたことから、セーラー戦士、プリキュア、黄金聖闘士の三大東映アニメーション戦士を演じた唯一の声優と、一部のファンからは言われているそうです。

 この他にも『ああっ女神さまっ』(1993年)のスクルド、『ママレード・ボーイ』(1994〜1995年)の鈴木亜梨実、『魔法騎士レイアース』(1994年)のタータなどが同時期に演じていた代表的なキャラでしょうか。

 久川さんの代表的なキャラをご紹介していくと、どうしても美麗な女性キャラが多くなっていきますが、声優ですから凛々しい男の子役も演じることがありました。『少女革命ウテナ』(1997年)の薫幹、『爆転シュート ベイブレード』(2001〜2003年)の金李、『フルーツバスケット』(2001年)の草摩由希、『冒険王ビィト』(2004〜2006年)のキッスなどが筆者には印象的です。

 また、大阪出身ということで関西弁を使うキャラも担当していました。代表的なキャラは、やはり『カードキャプターさくら』(1998〜2000年)などに登場したケルベロス。他にも『バトルアスリーテス大運動会』(1997年)の柳田一乃、『AIR』(2005年)の神尾晴子なども演じていました。

 他にもラジオのパーソナリティーとしての活躍もファンには有名です。今では一般的にもよく使われるようになった「大きなお友達」という言い回しも、久川さんが発信元というのは意外と知られていないかもしれません。

 近年はお母さん役を演じる機会も増えましたが、変わらず生き生きとした声の持ち主である久川さんには、元気のいいヒロイン役をもっと演じてほしいところです。