ウルトラシリーズ屈指のトラウマ回

 ウルトラマンと怪獣が戦ったら、そばにいる人間はどうなるのか。

 怪獣が街中で暴れたら、どれだけの被害が出るのか。

 ウルトラマンが怪獣をやっつける光景を純粋に楽しんでいたころ、そういった怪獣による損害はどれくらいになるのか、あまり気にしたことはありませんでした。むしろ大きなガスタンクを見かけると、「ベムスター、あれ食べにこないかなー」などと、のんきに考えていたことをよく覚えています。

 しかし少しずつ歳を重ね、画面のなかで展開されるドラマの意味が分かるようになると、ウルトラシリーズの中に潜む恐ろしさが徐々に分かるようになっていきました。

『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」で宇宙飛行士・ジャミラを襲った悲劇とその最期。『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」で描かれた人間の邪悪なエゴ。37話「ウルトラマン夕陽に死す」で新マンを動揺させるためだけに、ナックル星人に轢き殺された坂田兄妹。

『ウルトラマンレオ』の第3話「涙よさよなら…」でツルク星人が人びとを次々と虐殺していくシーン。40話「恐怖の円盤生物シリーズ!MAC全滅! 円盤は生物だった!」でシルバーブルーメの体内から引きずり出された、どろどろに溶けたマッキー2号と3号。『ウルトラマン80』第23話「SOS!! 宇宙アメーバの大侵略」でじわりと迫りくる宇宙アメーバの恐怖。

 ウルトラシリーズでトラウマになりそうなシーンを挙げていくと、キリがありません。ここに挙げた以外にも、今でも忘れられないシーンがある方は大勢いるでしょう。

 なかでも筆者にとって忘れられないトラウマとなっているのが、『ウルトラマンタロウ』の第38話「ウルトラのクリスマスツリー」です。もし目の前でウルトラマンと怪獣が戦い始めたら、巻き込まれた人はどうなってしまうのか。よく考えれば当然湧いてくる疑問に、ごく当たり前の残酷な真実を突きつけられてしまったのですから。

38話でテロリスト星人と戦うウルトラマンタロウ。画像は「S.H.フィギュアーツ ウルトラマンタロウ 約150mm PVC&ABS製 塗装済み可動フィギュア」(BANDAI SPIRITS)

「簡単に、人は死ぬ」という現実を突きつけて…

「ウルトラのクリスマスツリー」のメインキャラクターは、ウルトラマンタロウとキングトータス・クイントータスの戦いに巻き込まれ、両親を失った少女・ひとみです。防衛チーム「ZAT」の面々がクリスマスに浮かれるなか、犬を抱えたひとみは、ひとり寒さに凍えていました。手にした不思議なビー玉を除き込むと、そこには家族とともにクリスマスをすごすひとみ自身の姿が。しかし、現実のひとみの父親は戦いの衝撃で倒れた本棚の下敷きになり、崩れ落ちる建物と運命をともにしていたのです。

 ひとみとともに逃げ出した母親も瓦礫に押しつぶされて身動きが取れなくなり、通りすがりの男性にひとみを託し、炎の中に姿を消しました。ウルトラマンと怪獣の戦いに巻き込まれた人間は簡単に死んでしまうという現実を、観る者に突きつけるのです。

 ひとみを託されたおじさんは、実は地球を調査しに来ていたミラクル星人であり、さまざまな光景が見える不思議なビー玉をひとみにプレゼントし、地球を去りました。その後ミラクル星人は地球侵略を狙うテロリスト星人に殺されてしまうのですが、このあたりのネーミングセンスはもう一ひねり欲しいのが本音です。

 そしてクリスマスイブの日。テロリスト星人が地球に襲来します。星人と戦おうとするひとみをなんとか説き伏せタロウに変身した東光太郎ですが、危険物の多い工場地帯での戦いを余儀なくされ、思うように技を繰り出せず危機に陥ってしまうのです。

 絶体絶命となったタロウですが、ひとみが投げつけた不思議なビー玉がテロリスト星人を一撃で打ち倒し、難を逃れます。38話は、ミラクル星人が遺したビー玉を使ったとはいえ、地球人の少女が巨大な怪獣を撃破する珍しい結末を迎えた回なのです。

 ひとみに救われたタロウは、東京タワーをクリスマスツリーに装飾します。怪獣を倒すためとはいえ、ひとみの両親を死なせてしまったタロウにできる精いっぱいの罪滅ぼしだったのでしょう。

 コメディ寄りなストーリーが多いとされる『タロウ』のなかでも異彩を放つ「ウルトラのクリスマスツリー」。クリスマスに改めて見返してみてはいかがでしょうか。