「貴公はヒットラーの尻尾だな」

 42年前の1980年1月5日は『機動戦士ガンダム』の第40話「エルメスのララァ」が放送された日です。第39話でかろうじてシャリア・ブルのブラウ・ブロを退けたアムロでしたが、すでにガンダムの性能ではアムロの反応速度に追いつけなくなっていました。

 整備だけで性能向上は見込めず苦悩するアムロとクルーたちでしたが、モスク・ハン博士により関節の可動摩擦面に磁力コーティングを施すマグネット・コーティング処置が行われ、ようやくガンダムはアムロが満足する性能を得ることとなりました。

 連邦は攻め落としたソロモンを拠点として集結し、サラミスやマゼランなどの艦船がジムやボールを満載して進発を開始します。

 対するジオンは、連邦軍が間近に迫りドズル・ザビを失った状況となっても、デギン・ザビ、ギレン・ザビ、キシリア・ザビの三者は一枚岩になれず、それぞれ独自の判断で行動していました。ジオンはギレンが指揮を執る宇宙要塞ア・バオア・クーと、キシリアの拠点である月面都市グラナダの両拠点を結ぶ線を最終防衛ラインとして設定していましたが、ギレンとキシリアの不仲は戦いに暗い影を落としていたのです。

 追い詰められたジオンは、第3号密閉型コロニー「マハル」の住民150万人をわずか4日で強制疎開させ、周辺のコロニーから集めた太陽電池を運び込み、新兵器「コロニーレーザー」の準備を急ピッチで進めていました。このマハルは後に『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するシーマ・ガラハウ中佐と部下たちの故郷として設定され、帰るべき場所を失ったことが彼女たちの運命を大きく変えたと明かされています。

 デギンの意志を無視し、強引にコロニーレーザー計画を進めるギレンに対し、デギンは独裁者ヒットラーの名前を出し、「貴公はそのヒットラーの尻尾だな」と辛らつな言葉を投げかけます。するとギレンはデギンに背を向けたまま「ヒットラーの尻尾の戦いぶり、ご覧ください」と言い放ちます。親子の間に決定的な亀裂が入った瞬間でした。

「大佐! 邪魔です!」

 後方の状況が深刻さを増していたころ、シャア・アズナブルの乗艦ザンジバルはマゼラン1隻、サラミス3隻で構成された連邦軍の小艦隊を発見、交戦に入ろうとしていました。シャアはララァのエルメスと2機のリック・ドムを先行させ、自身はザンジバルの「Jミサイル」でマゼランとサラミスを1隻ずつ撃沈、後に専用のゲルググで後を追います。

 ララァは首尾よくサラミスを1隻撃沈しますが、ニュータイプの戦闘力を見た護衛のリック・ドムは真面目に戦うのがばかばかしくなってしまい、エルメスの背後に隠れてしまいます。残るサラミスからの攻撃の的となり、集中力を乱したララァはビットのコントロールに不調をきたしましたが、増援に現れたシャアの姿に勇気づけられサラミスの撃沈に成功したのです。

 両陣営ともに最終決戦に向けての準備が着々と進むなか、連邦軍本隊がジオン軍の艦隊と遭遇、アムロはガンダムで出撃します。そこに聞こえてきた「ラ…ラ…」の声に呼ばれていると感じたアムロは、シャアともうひとつの存在(ララァ)に気づき、シャアを狙撃しますが、エルメスのビットにより阻まれます。

 激しい砲火を交わすアムロとシャア。しかしララァは、すでに両者の間に存在する大きな力の差を感じ取っていました。ララァは「大佐! どいてください! 邪魔です!」と叫び戦いに介入しますが、シャアはなおも攻撃を続け、逆に左腕を破壊されてしまいます。

 シャアにとどめを刺そうとするアムロ。シャアを守るために戦うララァ。ふたりのニュータイプは互いに感応しながらも戦う手を緩めようとはしません。ビットを撃墜し続けるアムロの脳裏に、「シャアをいじめる悪い人だ!」という女性の声が響きます。ここまでアムロを苦しめていたシャアが、すでにライバルどころか誰かに守られてかろうじて生きながらえるだけの存在だと明白となったのです。

 このとき、シャアはララァとともに辛うじて脱出に成功します。そして物語は、後戻りできない悲劇へと、突き進んでいくのです。