二刀流から声優一本にしぼって活躍

 1月11日は声優の小林清志(こばやし・きよし)さんのお誕生日です。2022年で89歳になるそうで、長年にわたって私たちファンを楽しませてくれました。その功績について振り返ってみましょう。

 小林さんは中学校時代から英語が得意で、大学を卒業してから翻訳の仕事をしていたそうです。同時に舞台役者としても活躍、役者と翻訳家の二刀流で活躍していました。そんな時、自分が翻訳した作品のアフレコを見ていて、「自分がやった方がマシ」と思い、洋画の吹き替え声優としても活動するようになったそうです。

 小林さんと言えば、低音で重く渋い声が特徴的。声優は天職だったのでしょう。やがて声優に専念することになって、始まったばかりのTVアニメの仕事も受けるようになりました。その活躍は日本TVアニメ黎明期から始まり、日本初の連続TVアニメ『鉄腕アトム』(1963〜1966年)にも出演しています。

 そして、小林さんのTVアニメ初主演作品となったのが、自身の代表作のひとつでもある『妖怪人間ベム』(1968年)のベムでした。実質的な主人公はベロでしたが、タイトルに名前があるベムは、その後ろに控える頼もしい存在だったと思います。2011年に実写化された作品ではナレーターを担当していました。

 この頃に小林さんが演じたキャラで、筆者が忘れられないのは『巨人の星』(1968〜1971年)のアームストロング・オズマです。アニメでは星飛雄馬と友情を結びながらも、悲劇的な最期を遂げる役柄でした。ちなみに小林さんは『新・巨人の星』(1977年)でマイケル・ブラウン、『新・巨人の星II』(1979年)では死神ゴスマンというアニメオリジナルの外国人ライバルも演じています。おそらく偶然でなく、小林さんの演技力を知るスタッフからの指名だったのかもしれません。

 とにかく、どんな作品に出演してもすぐに小林さんが演じていることが分かる存在感のある声でした。『荒野の少年イサム』(1973年)のビッグ・ストーン、『スペースコブラ』(1982年)のクリスタルボーイ、『クラッシャージョウ』(1983年)のタロス、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991〜1992年)のエギーユ・デラーズなど、骨太でいかにも男らしさがにじみ出てくるキャラを多く演じています。

 また、その重低音の声はキャラだけでなく、作品の語り部であるナレーターとしても印象的な作品を生み出していました。『流星人間ゾーン』(1973年)、『西部警察(シリーズ)』(1979〜1984年)、『仮面ライダーBLACK』(1987年)、『ナイトライダー』(1987〜1988年)、『勇者王ガオガイガー』(1997年)など、アニメだけでなく特撮やドラマといった幅広い作品群で活躍しています。ファンのなかにはオープニング曲のイントロが聴こえると同時に、小林さんの声が脳内再生される方もいることでしょう。

『ルパン三世 PART6』原作:モンキー・パンチ (C)TMS・NTV

一心同体ともいえる次元との出会いと別れ

 そして小林さんと言えば、『ルパン三世』の次元大介のことを語らないわけにはいきません。それほどまで小林さんと次元は一心同体、そういっても過言ではない存在だからです。

 小林さんが次元の声を演じることになったのは、原作者のモンキー・パンチさんからの指名でした。その理由は、次元のイメージが映画『荒野の七人』に出演したジェームズ・コバーンだったことです。そのコバーンの吹き替えを担当していたのが小林さんだったのです。

 こういった経緯から、小林さんは『ルパン三世』のパイロットフィルムから次元を演じ続け、キャストが総入れ替えされた『ルパン三世 風魔一族の陰謀』(1987年)以外の『ルパン三世』のアニメ作品すべてに出演していました。

 こうして50年近くも次元役を担当していた小林さん。第2期の声優3人が交代した時も、ただひとり続投しています。それだけ次元に対して強いこだわりがあったのでしょう。最初の頃は多くある役のひとつに過ぎないと思っていたそうですが、長年にわたって演じてきたことで愛着が出てきたとコメントしていたこともありました。それゆえ、一緒にやって来たスタッフを「戦友」と呼んでいたそうです。

 それゆえ、ほかの持ち役は後進と交代するなか、次元だけはこだわって演じてきました。死ぬまで次元を演じたいと考えていたそうですが、年々、歳をとるにつれて自分自身でも衰えを感じて葛藤していたそうです。やがて「首から上が無事なら大丈夫」「声が出なくなるまで次元をやる」と力強く答えていた言葉も、「もうちょっとだけやらせてほしい」と、自嘲気味なコメントに変わっていきました。

 そして、2021年9月6日。小林さんは自身の高齢を理由に次元役を勇退することを正式に発表します。そのメッセージには苦渋の決断だったことがわかる、くやしさや無念といったものを感じると同時に、やり切った男の潔さ、笑みを浮かべながら去っていくダンディズムを思わせるものでした。

 最後に締めくくられた言葉「ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ。」は、もはや次元であり小林さんのものだったと思います。

 こうして『ルパン三世 PART6』の初回放送である第0話「EPISODE 0 -時代-」で小林さんは最後の次元を演じました。この話数は本来のスタッフでなく前作からのスタッフが担当した箇所もあり、小林さんへの花道として製作された異色のエピソードです。各キャラのセリフも深読みすると、次元というより小林さんに対してと思わせるものがありました。

 しかし、勘違いしてはいけないのが小林さんは引退したわけではないということです。これからも得意のナレーションを聞く機会があるでしょう。可能な限り、これからも小林さんのダンディボイスを聞かせていただければと思います。あらためて小林さん、お誕生日おめでとうございます。