世界的俳優トム・クルーズも認めた実力の持ち主

 1月26日は声優の森川智之(もりかわ・としゆき)さんのお誕生日です。一部のファンから「帝王」や「社長」というあだ名で呼ばれることもある森川さんの魅力について振り返ってみましょう。

 子供の頃、虚弱体質だった森川さんでしたが、やがて体を鍛えることにハマり、将来は体育教師になることを夢見るほどの身体を手に入れたそうです。しかし、高校時代に首の骨を折って後遺症が残ってしまい、夢を断念せざる得なくなりました。それでも運動にかかわる仕事をしたいと思っていた森川さんは、友人から「声が大きくておしゃべり」という長所を指摘され、実況アナウンサーを夢見るようになります。

 しかし、いざパンフレットを見てみるとアナウンサー科より声優科の方に魅力を感じ、声優学校に入りました。この時の同期が高木渉さん、三石琴乃さん、横山智佐さん、根谷美智子さんほか、そうそうたるメンバーだったそうです。

 卒業後、アニメ作品で最初に名前のある役をもらったのが『ダッシュ!四駆郎』(1989年)で、チームUの加藤隼というキャラでした。ちなみにチームメイトの神崎操は、三木眞一郎さんのデビュー作です。

 初のレギュラー入りをした作品が『RPG伝説ヘポイ』(1990年)。この作品で森川さんはセミレギュラーであるガンガンジーのほか、勇者へポリス、ダークキャッスル、ゴーストキャッスル、ヒョウザンキャッスル、バンザイン、バトルキャッスルといったキャラにも声を当て、この頃からどんなキャラでも演じる器用さを見せています。

 そして、初めての主演作品となったのが『宇宙の騎士テッカマンブレード』(1992年)。主人公のDボゥイ/テッカマンブレードこと相羽タカヤを演じました。この作品で森川さんの名前を知った人も多いことでしょう。筆者もこの作品で森川さんの名前と声をおぼえました。

 業界屈指の声帯と腹筋の強さを持つと言われている森川さんは、この『ブレード』で必殺技「ボルテッカ」の名前を叫んでマイクを2本も壊したと言われています。声の波長でマイクを壊す人はいるようですが、純粋な音圧で壊す人はめったにおらず、ファンから「マイククラッシャー」ともあだ名されていました。

 その後の森川さんは、知る人も多い有名なキャラを次々と演じています。『幽☆遊☆白書』(1992〜1995年)の死々若丸、『SLAM DUNK』(1993〜1996年)の水戸洋平、清田信長など、『GS美神(ゴーストスイーパーみかみ)』(1993年)のピエトロ・ド・ブラドー(ピート)、『蒼き伝説シュート!』(1993年)の神谷篤司、『とっても!ラッキーマン』(1994年)の勝利マン、『ヤマトタケル』(1994年)のミカヅチ、『勇者警察ジェイデッカー』(1994年)の騎士刑事デューク/デュークファイヤーなど、この数年で筆者の見ていた番組の主要キャラを何人も演じていました。

 もちろん、その活躍はアニメに限らず、洋画の吹き替えでも実力を発揮しています。しかも、その活躍を認めるのはファンだけではありません。トム・クルーズの声と言えば森川さんが定番ですが、トム本人から「(森川さんの吹き替えは)世界で一番美しい」と絶賛されていました。このほかにもユアン・マクレガー、キアヌ・リーブスなどの吹き替えでも有名です。

『恋する天使アンジェリーク』聖獣の鋼の守護聖エルンスト役 画像は「アンジェリーク Twinコレクション(3)〜ゼフェル&エルンスト〜」(コーエーテクモゲームス)

日本中の女の子をお世話する美声の持ち主

 森川さんと言うと、みなさんはどんなタイプのキャラを思い浮かべますか? 一般的には艶のある二枚目の声を思い浮かべる人が多いと思いますが、大きく分けて良い二枚目と悪い二枚目があります。

 主人公サイドにいる二枚目ですと、『金田一少年の事件簿』(1997〜2016年)の明智健悟、『ガラスの仮面』(2005年)の速水真澄、『戦国BASARA』(2009〜2014年)の片倉小十郎、名探偵コナン(1997年〜)の羽田秀吉、『鬼滅の刃』(2019年〜)の産屋敷耀哉など、物静かだけどクセのあるキャラが多いかもしれません。

 一方、二枚目の敵役ですと、『機動新世紀ガンダムX』(1996年)のシャギア・フロスト、『犬夜叉』(2001〜2010年)の奈落、『創聖のアクエリオン』(2005年)聖天翅・頭翅(トーマ)、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』(2016年)の吉良吉影、『蜘蛛ですが、なにか?』(2021年)のポティマス・ハァイフェナスなど、ラスボス級の悪役ばかりです。

 もちろん三枚目役はもちろん、ひとつのキャラのなかで振り幅の広い『黄金勇者ゴルドラン』(1995年)のワルター・ワルザックと変装したイーター・イーザックや、『デジモンアドベンチャー02』(2000年)ではマミーモン、及川悠紀夫、ベリアルヴァンデモンという近しい存在の三役を演じ、『ふたりはプリキュア Splash Star』(2006年)のゴーヤーンでは道化師と見せかけて実はラスボスという見事な変身ぶりを演じていました。

 本当に森川さんはこの文章のなかでは挙げきれないほどのキャラを演じ、どんな役でもはまり役としてしまうたぐいまれなる才能の持ち主ではないでしょうか。

 そんな森川さんが2017年に放送されたテレビ番組『人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙!3時間SP』で第12位に選ばれた時のことです。「日本中の女の子がお世話になっている」というゲストのコメントに対し、「日本中の女性をお世話しています(笑)」と答えたことがありました。このコメントは本人も気に入ったらしく、森川さんのTwitterの自己紹介文に使われています。

 この発言の意味はさまざま考えられますが、森川さんがBL(ボーイズラブ)作品に多く出演していることからでしょう。森川さんは自他ともに「BL界の帝王」と認められ、ファンの間には広く知れわたっているあだ名のひとつでした。

 ちなみに「社長」というあだ名は2011年に独立して立ち上げた会社「アクセルワン」の代表だからだそうで、その後に多くの有名声優が所属したことからも、森川さんの人望がうかがい知れます。冠番組の『森川さんのはっぴーぼーらっきー』(2014年〜)を見ていると、森川さんがほかの声優たちにとても慕われている雰囲気が分かりました。

 まだまだご紹介したいお話はありますが、文字の都合もありますからここまでと致しましょう。森川さんには今後もさまざまなキャラを演じていただき、女性だけでなく日本中の男性のお世話もしていただければ幸いです。あらためて森川さん、本日はお誕生日おめでとうございます!