プロ野球選手との、男同士の約束

 秋本治さん原作の国民的作品『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。2016年に連載は惜しまれつつも終了してしまいましたが、2021年には新刊コミックス第201巻が発売されたことで再び注目を集めました。

 通称『こち亀』の愛称で知られている同作には、涙なしでは見られない感動回が数多く存在します。この記事では「両さん」こと両津勘吉(りょうつ・かんきち)の少年時代が描かれた感動的な「神回」をアニメ版から3つピックアップ。感動的なシーンとあわせて紹介します。

●「光の球場」

 まずはアニメ第171話「光の球場」。昭和37年から47年までの10年間、荒川区南千住にあった野球場「東京スタジアム」を舞台にしたエピソードです。アメリカ・メジャーリーグのキャンドルスティックという照明は、ビルなどの少ない下町のなかで非常に明るく、まさに「光の球場」でした。

 現代で両さんは車にひかれて骨折。実は、近所のこども達の親らが出場するPTA対抗の草野球大会に両さんも出るはずでしたが、骨折したことで困難に。それでも「男が一度約束したことだ」と出場しようとします。「わしはクソ生意気なガキとの約束を守るため、全身骨折でホームランを打った男を知っている!」と少年時代の思い出を話しだします。

 少年時代の両さんは、東京スタジアムを本拠地としている大毎オリオンズのファン。試合があるたびに球場を訪れ、先頭に立って応援の音頭をとっていました。そして、球場に通っていた理由はもうひとつ。美人ウグイス嬢の栗原やよいさんに会うためでした。

 ところが、やよいさんは大毎の主力・日向選手と結婚するため、今シーズン限りでウグイス嬢を辞めることに。ショックを受けた両さんは球場に行かなくなってしまいました。すると両さんのもとへ日向選手が突如来訪。また球場へ来て、やよいさんに元気な姿を見せて欲しいと伝えるのです。「2週間後、今シーズン最後の試合が行われる。その試合でホームランを打ってみせる」と約束をしました。

 しかし、日向選手はトラックに跳ねられて全身打撲。全治2か月の重傷を負ってしまいます。それでも病院を抜け出して今シーズン最後の試合が行われる東京スタジアムへ。両さんも球場へ駆けつけて日向を応援。見事ホームランを打つのです。推定飛距離200メートル超えの特大ホームランは伝説に。両さんは、命がけで約束を守った日向選手とやよいさんの結婚を祝福するのでした。

 大人になった両さんが、どんな小さな約束でも守ろうとするのは日向選手の影響があるようです。

弟のことを誰よりも心配して応援する、両さんの姿に感動!

●「親愛なる兄貴へ」

 続いては、アニメ第200話「親愛なる兄貴へ」。普段はダメ人間な両さんですが、両さんのような兄が欲しいと思ってしまう感動エピソードです。

 両さんの弟・金次郎の妻が出産間近になり、金次郎は「僕に幸せを呼んでくれたお守りなんだ」と合格祈願のお守りを渡すシーンから物語は始まります。というのも、金次郎が小学生の頃、弁護士になる夢を叶えるために国立の難関中学を受験しようとします。しかし、勉強の邪魔をする両さんと金次郎は受験前日までケンカばかりしていました。

 そして受験当日、都電に乗って会場の学校へ向かうのですが、軌道内での事故によって立ち往生。途方に暮れる金次郎でしたが、そこに両さんが通りかかります。実は、朝早く起きて湯島天神へ合格祈願のお守りを買いに行っていた両さん。その帰り道で遭遇したのです。

 自転車の後ろに金次郎を乗せて受験会場へ急いでいたところ、橋の上から金次郎が受験票を落としてしまいます。両さんはすぐさま川へ飛び込んで受験票を見つけ出し、湯島天神で購入した合格祈願とともに金次郎へ。無事に会場へ送り届け、中学にも合格することができました。

 いつもケンカばかりしていた兄弟ですが、両さんは心のなかでは金次郎の受験を誰よりも応援していたのです。両さんのカッコよすぎる兄貴肌な一面が見えたエピソードでした。

●「おばけ煙突が消えた日」

 最後は「神回」とも評判高いアニメ第75話「おばけ煙突が消えた日」。かつて足立区千住に存在した、日本最大の火力発電所の煙突「おばけ煙突」を舞台したエピソードです。

 両さんの少年時代、下町には高い建物がなかったため、どこからでも見えたほど高い煙突でした。4本の高い煙突は、見る方角によって数が変わって見えるため「おばけ煙突」と呼ばれていたのです。

 おばけ煙突がまだ存在していた、両さんが小学4年生の時、担任の先生が入院してしまったことで、大学から赴任してきた佐伯羊子(さえき・ようこ)先生が臨時で担任を務めることになりました。そんな時、校長室にあった優勝カップが壊されていたことで、悪ガキとして知られていた両さんが疑われていました。それでも羊子先生だけは両さんを信じ続け、真犯人が見つかり、両さんの無実が証明されました。

 それからというもの、両さんは羊子先生を大好きになっていきます。しかし、担任の先生のケガが治り、学校に戻ることが決まったため、羊子先生は大学に戻ることに。いよいよお別れ当日、両さんはおばけ煙突に登り「ようこ先生ありがとう」とカーテンに書いて作った垂れ幕を広げるのです。羊子先生は乗っていた電車の中からそのメッセージを見て感動するのでした。

 その後、おばけ煙突は昭和39年に取り壊されてしまうのですが、羊子先生との淡い思い出は消えることはなかったようです。

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 以上、両さんの少年時代にまつわる感動回をアニメ版から3作ピックアップしました。アニメ第53話「浅草初恋物語」など、まだまだ紹介したいエピソードはたくさん存在します。皆さんの心に残っている、両さんの少年時代の感動回は何ですか?