自然環境保全は地球のため?「人間とは何か」を考えさせられる名言

 人類を捕食対象とする「寄生生物」と、「寄生生物」が右手に寄生した(ミギー)高校生・泉新一の戦いが描かれたマンガ『寄生獣』。同作に登場する敵キャラたちは、数々の考えさせられる深い言葉を残しています。

●田宮良子「『地球にやさしい』なんて見当はずれなコピー」

 大学で利己的遺伝子についての講義を聞いた、寄生生物・田宮良子が新一に言った言葉です。「地球にやさしい」は、自然環境保全への取り組みを表すためのキャッチコピーによく使われています。

 そして、自然環境保全の目的は、人類が子孫を残していける環境を維持することです。しかし、人間が生きていくには、結局は他の生き物の犠牲が必要になります。田宮良子の言葉は、「『人間にやさしい』の間違いだろう」という皮肉が込められた深い名言です。連載当時よりも、さらに「地球にやさしい」ことが求められがちな現代でこそ響きます。

●浦上「まるで戦争じゃねえか。これでおれの出る幕なんてあんの?」

 寄生生物と人間を見分ける特殊能力を持つ連続猟奇殺人犯の浦上が、寄生生物を一網打尽にする作戦に動員された部隊を見て発した言葉です。特殊能力を必要とされて作戦現場に連れてこられた浦上が、なぜ「出る幕がない」と感じたのでしょうか。

 それは、浦上が寄生生物討伐の戦場にいる兵士たちを同類だと感じたからです。兵士の訓練は、「人間を効率的に殺すこと」や「殺人への抵抗感を減らすこと」を主目的として発展しました。兵士という殺人機械を作っているのに殺人犯を死刑にする国家への、浦上からの皮肉が感じられる深い言葉です。

●後藤「もっと工夫しろ…… 人間は地球上でもっとも賢い動物のはずだろ」

 五体の寄生生物が同居している後藤が、人間の兵士たちに向けて言った名言です。寄生生物を一網打尽にする作戦を実施した部隊は、ショットガンを使って寄生生物たちを追い詰めていきます。しかし、体全体を硬質化できるうえ、壁や天井を使って立体的な動きをする後藤に、ショットガンは通用しませんでした。

 しかし、兵士たちは通用しないと分かっても、命令に従ってショットガンによる攻撃を繰り返します。後藤には、何も考えず命令に従っている兵士たちが、虫や機械のように見えたのかもしれません。

広川剛志のタイトルを回収するセリフをはじめ、浦上、後藤の名言も飛び出した『寄生獣』第9巻(講談社)

衝撃的なタイトル回収や母性に目覚めた寄生生物の名言

●広川剛志「人間に寄生し生物全体のバランスを保つ役割を担う我々から比べれば、人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!! いや……寄生獣か!」

 人間でありながら、寄生生物に協力している政治家・広川剛志の言葉です。この言葉で、『寄生獣』というタイトルが、寄生生物ではなく人間を指していたことが分かります。

 広川は、人間の目線で行っている環境保全や動物愛護に対する憤りを語った演説で、この発言を残しました。利己的でありながら、絶対正義のようにふるまう人間への怒りが伝わってくる、衝撃的な名言です。

●田宮良子「我々はか弱い。それのみでは生きてゆけないただの細胞体だ。だからあまりいじめるな」

 田宮良子が、人間にとって危険な生物の目線から、彼らとの関わり方を示唆した名言です。寄生生物は、個としてはライオンよりも強いですが、子孫を残す能力はなく、人間に依存しているため、種としては不自然で弱い存在です。人間は、個としては弱く、種としては最強という、寄生生物とは真逆の存在です。

 現実世界に置き換えて考えてみると、熊などの危険な野生動物は、種と個で人間との強さ関係が逆転します。危険だからと言って駆除をやりすぎれば、強者から弱者への「いじめ」になるのかもしれません。

●田宮良子「この前人間のまねをして……鏡の前で大声で笑ってみた…… なかなか気分が良かったぞ……」

 あえて死を選んだ田宮良子が息絶える直前に新一に伝えた、人間への憧れを示す言葉です。生殖実験のために「A」と性交して子供を産み、子育てを通じて母性に目覚めた田宮良子は、人間である我が子のために、「人間の愛」を理解したかったのでしょう。この言葉とともに、赤ん坊を新一に託し満足げに逝った彼女からは、母親の深い愛情を感じました。

 さまざまな魅力的な悪役も登場した『寄生獣』は、現代版にアレンジされたアニメ『寄生獣 セイの格率』が2014年に放映されています。舞台が現代になっており馴染みやすく、なおかつ原作で扱っているテーマもしっかりと表現されています。興味がある方は、ぜひアニメもご視聴ください。