「大人の事情」VS「子供らの夢」 ハードル超えて実現した最高の対戦カード

『シン・ウルトラマン』公開に伴い、にわかに円谷作品、ひいては特撮業界全体が大いに注目を集めています。『シン・ウルトラマン』予告編では直接的な明言はされずとも、『シン・ゴジラ』世界とのリンクをわずかに匂わせる演出が組み込まれ、ゴジラVSウルトラマンという特撮ファンなら誰しも一度は夢想した展開の実現を期待する声も聞こえてきます。そこで、今回、長い日本の特撮の歴史において、大人の事情を乗り越え、実現した「特撮のドリームマッチ」を振り返ります。

●日本特撮ヒーローの二大巨頭が夢のコラボ!「ウルトラマンVS仮面ライダー」

 タイトルからして心踊るのは1993年に発売された特撮オリジナルビデオ『スーパーバトル ウルトラマンVS仮面ライダー』です。ウルトラマンと仮面ライダー1号――日本を代表する特撮ヒーローの共演は、長年特撮ファンならびに子供らの夢でしたが、両者の間にはなかなかに込み入った「大人の事情」が横たわっていました。

 そんななか、東映、円谷の間をバンダイビジュアルがつなぐ形で実現したのがこちらのドリームマッチ。仮面ライダーとウルトラマンが実際に共演するのは約10分のドラマ部分のみとなっていますが、仮面ライダーが巨大化する形で両者の身長差を埋めるというダイナミックな演出がなされ、怪獣にスペシウム光線とライダーキックが炸裂する、まさに夢の展開が待ち受けています。なお「ウルトラマンVS仮面ライダー」とありますが、直接対決があるわけではありません。

●ゴジラvsハリウッドゴジラ(ジラ) 『ゴジラ FINAL WARS』

 日本が誇る世界のスター「ゴジラ」はこれまで複数回、海をわたりハリウッドで映画が製作されています。2014年公開のギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA ゴジラ』、通称ギャレス版に端を発する「モンスター・ヴァース」シリーズはおおむね成功を収めていますが、「ハリウッド版ゴジラ」と聞いて特撮ファンが今だに少し身構えてしまうのは1998年に公開されたローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』(通称、エメリッヒ版)が頭によぎるからでしょう。

 内容に関して割愛いたしますが、どうやらゴジラファンのみならず、エメリッヒ監督自身も「The Hollywood Reporter」のインタビューで「もともと『ゴジラ』はやりたくなかった」という旨の発言をしています。そのため断る口実を作るためゴジラのデザインを大胆に変更したのですが、これが通ってしまい……気づけばエメリッヒ版ゴジラが誕生してしまったというわけなのです。そういう意味では最も悲しいゴジラといえるでしょう。

 また2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』では明らかにエメリッヒ版ゴジラがモデルの「ジラ」が登場。本家ゴジラに一瞬で倒されてしまいます。エメリッヒ版ゴジラを快く思っていなかったファンからすればどこか溜飲の下がる展開ではありました。実際、ギャレス版の続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)を手がけたマイケル・ドハティ監督もエメリッヒ版ゴジラには厳しく、『ゴジラ FINAL WARS』で「ジラ」が倒される瞬間を高く評価しています。誰からも望まれなかった怪獣……その背景を知ると少しだけ悲しい、そんなドリームマッチでした。

●果たして実現はあるのか? ない方がいいのか ゴジラvsガメラ

 未だに公式での実現がなされておらず、ある意味もっとも「ドリーム」感の強い対戦カードは「ゴジラvsガメラ」でしょう。

 二大怪獣が相対する瞬間は半世紀以上にわたって待ち望まれている一方で、今日まで直接対決がないのであれば半永久的に封じてしまった方が双方ファンの幸せなのでは、とまさに夢は夢のままでという声も少なくありません。国内における「シン・〇〇」シリーズ、そしてハリウッドの「モンスター・ヴァース」とクロスオーバー機運が高まるなか、直接対決とまではいかないまでも、何らかの接触が期待されています。

 ちなみにこの夢の対決も、例えば『ウルトラマンマックス』の第11話「バラージの予言」(監督:金子修介)の冒頭で子供らがゴジラとガメラの人形を格闘させるシーンが挿入される程度が現時点では限界のようです(DVD版はカット)。

 特撮のドリームマッチ。これが格闘技などであれば本人たちの意志次第、というところもあるかもしれませんが、「ヒーロー」や「怪獣」ともなるとそうはいきません。だからこそ実現されたときの興奮もまたひとしおと言えるでしょう。皆さんも今後期待する「ドリームマッチ」はありますか。