雨が楽しくなるような名作

 2022年も梅雨の時期がやってきました。ジメジメして、休日でも出かけるのが億劫になりがち……そんな時、梅雨の時期だからこそ観てほしい、雨の描写が美しいアニメを厳選しました。まずは『君の名は。』などで知られる、新海誠監督の作品から2作品ご紹介します。

●しっとりとした梅雨の雨『言の葉の庭』

 梅雨入りした東京。雨の日の午前中だけ、公園で出会う靴職人になりたいという夢を持つ少年と、味覚障害を患ってしまった女性の物語です。穏やかな時間を公園の東屋で過ごすふたりの、非常に穏やかで少し陰鬱な雰囲気をまとっています。

 雨の日特有の緑が鮮やかで、どこか明るい画像に引き込まれていきます。全体的に大人っぽく穏やかな作品で、それを象徴するかのような、優しくしとしとと降る雨が印象的です。激しい雨ではなく、優しい雨が主人公の優しさを象徴しているかのようで、ピアノの音色と梅雨の緑、それに古典が絡み合う趣深さがあります。

 終盤で降る強い雨は、これまでの鬱憤や恋しさをまとめて流すような激流で、今まで雨のカーテンで東屋に閉じ込めていたふたりの秘密の関係を終焉に導きます。お互いを救い合うふたりを繋ぐ雨を、思わず切望してしまうような作品です。

●重い現実に押しつぶされながらも必死に生きる少年少女『天気の子』

 雨が続くという異常気象に見舞われている東京が舞台の大ヒット作。まず繊細な雨の描写は特に美しく、映像美だけでも見る価値のある映画です。公開時に見た人も多いと思いますが、梅雨に見返すと実際の雨の東京の描写がリアルすぎて、驚かされます。

 天気と繋がっているヒロイン・陽菜の祈りに応えて雨天のなかに時折のぞく晴れ間が鮮やかで、これから何かが起こりそうな時にこそ降り出す雨が物語により不穏さを与えています。雨の降り方もその時々で変化し、心情とリンクするかのような鉄砲雨から静かにしんみりと降る雨までさまざま。未成年である少年と少女の不安定な感情を表すかのように移り変わる空模様は、特に丁寧に描写されており、見ていて自然と入り込める作品です。

『おおかみこどもの雨と雪』ビジュアル (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

主人公の心情を反映する雨

●ファンタジーながら現実味のある母とこどもの物語『おおかみこどもの雨と雪』

 こちらは『サマーウォーズ』で知られる細田守監督作品です。おおかみ男と結ばれ、普通とは違うふたりの子どもをもうけた主人公の花。誰にも頼れないなか、都会の喧騒を離れ、山奥の自然豊かな田舎町でおおかみこどもの雨と雪を育てていきます。幸せな時間は温かなひだまりのなかの映像が多いですが、辛く悲しいシーンには必ず降る雨が主人公を濡らし、重い現実を突きつけてくるのです。

 特に終盤あたりで訪れる台風のシーンは、主人公の心にも重い雨を降らせます。ラストに降る大雨は家族にとっての重要な選択を迫るクライマックスでもあり、壁とぶち当たってでも自分の世界を見つける雨と雪の心の内を表しているかのようです。大雨で生まれかわる世界と、ひとつの家族が自分の居場所を見つける、心温まるストーリーでした。

●その歌声は雨雲を呼び、恵みの雨を大地に注ぐ『それでも世界は美しい』

「花とゆめ」で連載されていた大人気マンガのアニメ化です。美しい歌声で雨を呼ぶ、「アメフラシ」の能力をもつ「雨の公国」の第四公女・ニケ。彼女は国のため「晴れの大国」の太陽王・リヴィウス一世に嫁ぐこととなります。しかし、リヴィウスはまだ若い少年でした。晴れの大国には雨が降らず、リヴィウスは雨を見たことがないので暇つぶしに降らせてみよ、というのです。術者であるニケが世界の美しさを実感しなければ雨は降らないので、リヴィウスは「世界の美しさ」を探していくことになります。

 歌で雨乞いを行い、そこから雲を呼び雨を降らせる描写が美しく、雨を求める人間の心に呼応して落ちる雫は、雨が天の恵みであったことを思い出させてくれます。必要なのは想いと実感。雨の使い方、雨とのつき合い方を教えてくれるような作品です。